icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学6巻2号

1954年10月発行

文献概要

論述

光受容器にみられる興奮と制止

著者: 富田恒男1

所属機関: 1東京女子医科大学生理学教室

ページ範囲:P.71 - P.79

文献購入ページに移動
 Ⅰ.緒言
 網膜に光照射を与えてから視神経に放電が現われる迄の機制に関しては,従来の幾多の研究にも拘わらず未だその大部分が不明であるといつてよい。吾々が現在知つていることは,光受容細胞中に光化学物質があつて,それが光によつて分解することが網膜活動の第一過程であるらしいことゝ,光照射後に或潜伏期を経て発現する網膜活動電圧(ERG)が視神経活動の誘発に関係しているらしいこと位のものである。このERGにしても脊椎動物の網膜から誘導されるものはその波形が複雑で,恐らく網膜内に於ける発生部位,従つて又その網膜活動時に演ずる役割を異にすると思われる所の幾つかの要素の組合せから成つているものと考えられる。Granit1)が之をPⅠ,PⅡ,及びPⅢの3要素に分析し,PⅡが興奮過程に,そしてPⅢが制止過程に密接な関係があるとしているのは周知の如くであるが,他方に於て最近の Ottoson及びSvaetichin2)の報告によると,ERGは悉く光受容細胞自体に発生するもので,両極細胞より上位の網膜層の活動は殆んど之に寄与する所がないと主張している。これに対しては私共の既に報告した所3)4),及び現在試みつゝある実験からみても直ちに同意しかねる点が多々あるが,今回はこの問題には触れないことにする。
 網膜活動を研究するに当り,興奮過程に劣らない重要性をもつものとして制止過程を除外することは出来ない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?