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文献詳細

雑誌文献

生体の科学6巻2号

1954年10月発行

文献概要

報告

精子のアセチルコリンエステラーゼ—Ⅱ.細胞粒子分劃における酵素分布

著者: 関根隆光1 近藤千枝子2 齋藤守3

所属機関: 1順天堂大学医学部生化学教室 2東京大学医学部生化学教室 3東京大学医学部病理学教室

ページ範囲:P.89 - P.94

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 静止電位や,興奮時の瞬間的なその乱れが,膜の選択的透過性による細胞内外のイオンの不均衡分布および興奮時の瞬間的な透過性の変化によるイオンの移動で説明されているように,興奮伝導の現象が興奮組織の細胞の膜で行われていることは,まず確実らしく思われる。したがつてアセチルコリン(ACh)の代謝が,興奮あるいは興奮伝導のメカニズムの中の主要な一過程であるならば,この代謝の行われる場は当然膜でなければならない。Nachmansohnは神経線維で──特にその表面でAChの代謝が行われていることに注目して,AChが神経筋結合やシナプスの興奮伝達(transmission)だけでなく,軸伝導(axonal conduction)にも重要な役割を果していることを主張している1)2)。しかし神経線維の表面にだけAChの代謝が局在していることを証明することはなかなか難しく,アセチルコリンエステラーゼ(AChE)がヤリイカの巨大線維の被膜だけにあつて内容物(axonal Plasma)にないこと3),神経線維の膜はAChを透過しないのに外から与えたAChが分解されるなどの論拠を挙げている。
 精子の線毛運動について,もしなんらかの意味でACh代謝が関与するならば4)5),AChEの所在の問題が大きな意味をもつてくるし,したがつて精子細胞の細胞化学的構造の究明が必要となつてくる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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