icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学60巻3号

2009年06月発行

文献概要

特集 脳と糖脂質

三量体Gタンパク質と脂質ラフト

著者: 湯山耕平1 鈴木直子2 笠原浩二3

所属機関: 1長寿医療センター研究所アルツハイマー病研究部 2理化学研究所オミックス基盤研究領域LSA要素技術開発グループ 3東京都臨床医学総合研究所細胞膜情報伝達プロジェクト2

ページ範囲:P.181 - P.186

文献購入ページに移動
 脂質ラフトはスフィンゴ糖脂質とコレステロールに富む細胞膜のミクロドメインである。GPIアンカー型タンパク質,srcファミリーチロシンキナーゼ,三量体Gタンパク質など様々なシグナル伝達分子を結合させることにより膜を介するシグナル伝達の中継点として働き,多くの生命現象を調節していると考えられている1,2)。ショ糖密度勾配遠心分離法によって,低密度でTriton X-100不溶性でスフィンゴ糖脂質,スフィンゴミエリン,コレステロールに富む膜画分が細胞から分離することができ,この膜画分が脂質ラフト画分と考えられてきた。しかし,生きた細胞で脂質ラフトを解析する方法は一分子追跡法や蛍光共鳴エネルギー移動法など限られ,本誌2008年10月号「現代医学・生物学の仮説学説2008」の脂質ラフトの項で詳しく述べられているが,脂質ラフトの実体について一致した見解が得られていない3)。形質膜がフラスコ型に窪みマーカータンパク質カベオリンを持っているカベオラは,ラフトを同じような方法で分離することができ,類似した構成成分を含んでいることから脂質ラフトの一部であると考えられている。

 三量体Gタンパク質はα,β,γのサブユニットから成り,細胞表面のGタンパク質共役受容体から細胞内の効果器にシグナルを伝える分子スイッチとして働いている。刺激のない状態においては,αサブユニットはGDPと結合しており,三量体Gタンパク質は活性を持たない。活性化した受容体から刺激を受けると,αサブユニットに結合しているGDPが離れてそこにGTPが結合する。この交換によって三量体はαサブユニットとβγ複合体の二つの成分に解離する。Gタンパク質共役受容体は多様な三量体Gタンパク質と共役することができるが,多くのGタンパク質共役受容体は特定の三量体Gタンパク質と優先的に共役する。この相互作用はまず第一にGタンパク質共役受容体と三量体Gタンパク質同士が本来持っている親和性によっている。しかし,あるGタンパク質共役受容体は一つ以上の三量体Gタンパク質と共役することができる。最近,Gタンパク質共役受容体と三量体Gタンパク質との共役パターンの重要な決定因子は脂質ラフトであることがわかってきた4)

参考文献

387:569-572, 1997
2)笠原浩二,佐内豊:蛋白質核酸酵素 43(16):2522-2530, 1998
3)藤本豊士,藤田秋一:生体の科学 59(5):334-335, 2008
44:655-667, 2003
12:685-698, 2001
25:67-78, 2006
277:32409-32412, 2002
272:17858-17866, 1997
282:26392-26400, 2007
276:20813-20816, 2001
40:15290-15299, 2001
274:3910-3917, 1999
30:1238-1245, 2005
68:1466-1474, 2005
28:3042-3050, 2008
275:41447-41457, 2000
273:21708-21713, 1998
579:6343-6349, 2005
164:759-768, 2004
66:2167-2180, 2004
91:11728-11732, 1994
278:31593-31602, 2003
317:1295-1306, 2006
280:7135-7146, 2005
325:915-921, 2004
16:362-364, 2004
343:415-419, 2006
76:653-661, 2004
276:19503-19511, 2001
101:14949-14954, 2004
493:19-28, 2004
32:459-466, 1998
61:546-553, 2002
111(Pt 7):917-928, 1998
25:5752-5762, 2005
105:40-48, 2005
275:32363-32370, 2000
147:1789-1795, 2006
100:10219-10224, 2003
279:45175-45184, 2004
275:4417-4421, 2000
144:4725-4728, 2003
103:11069-11074, 2006
276:42063-42069, 2001
29:435-447, 2009
277:31740-31752, 2002
274:31014-31019, 1999
267:7-19, 1994
276:35883-35890, 2001
269:31915-31922, 1994
277:2534-2546, 2002
281:15780-15789, 2006
279:3280-3291, 2004
72:502-513, 2007
74:788-797, 2005
12:349-356, 1993
324:109-116, 1997
271:20811-20819, 1996
278:41541-41551, 2003
105:9421-9426, 2008
61)湯山耕平,鈴木直子,笠原浩二:蛋白質核酸酵素 53:1558-1563, 2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?