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音色で感じる聴覚の世界
著者: 難波精一郎12
所属機関: 1日本学士院 2大阪大学
ページ範囲:P.323 - P.329
文献購入ページに移動親しい知人であれば電話の声を聴いた瞬間に誰からの電話であるかわかる。環境の中には多くの音源が存在するが,それが何の音かの識別の手がかりとなるのが音色である。外界にどのような音源が存在し,それがどのような動きをしているか知ることは適応上重要である。現実の環境に混在しているいろいろな音源を分離し,それぞれの音源が空間のどの位置を占めているか明確にすることは決してやさしい仕事ではないはずだが,耳はそれをいとも簡単にやってのける。
もちろんコンピュータを用いて複合音の周波数分析をすることは容易にできる。しかし,スペクトル構造を見ただけでそこにどのような音源からの音が含まれているのか識別することは困難である。音源識別の手がかりは周波数成分だけでなく音の時間的変化のパターンや,さらに物理量以外の多くの要因が音源の識別に貢献しているからである。各音源が持つ固有の音色,あるいは音源間の音色の相違が音源の識別の最大の手がかりといえる。
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