多細胞生物が発生して細胞と細胞がコミュニケートする必要が生じました。いや,順序が逆かもしれません。細胞間コミュニケーションが可能になったので多細胞生物が発生したとも考えられるからです。じっさいは,おそらく同時進行だったのでしょう。一つの細胞からの情報を他の細胞に運ぶ物質が伝達物質(正確には情報伝達物質)です。
ある組織の細胞から遠く離れた組織の細胞へ情報を伝えるのがホルモンだとすれば,ここでいう伝達物質(主に神経伝達物質)はごく近くの細胞間の情報伝達に関するものです。伝達物質の不必要な拡散を防ぐために生体はシナプスという精密装置を創出しました。これによって近距離間の化学伝達と遠距離間の電気伝達という高速情報伝達システムが完成しました。
雑誌目次
生体の科学60巻5号
2009年10月発行
雑誌目次
特集 伝達物質と受容体
序にかえて フリーアクセス
著者: 伊藤正男 , 野々村禎昭 , 藤田道也
ページ範囲:P.344 - P.344
1.アミノ酸 興奮性
興奮性アミノ酸の働き
著者: 柚﨑通介
ページ範囲:P.346 - P.347
哺乳類の中枢神経系における速い興奮性神経伝達は,イオンチャネル型グルタミン酸受容体により担われている(図)。同受容体は薬理学的にAMPA受容体,カイニン酸受容体,NMDA受容体の三つのファミリーに大別され,それぞれのファミリー内で異種サブユニットから成る4量体を形成する。速い神経伝達は主にAMPA受容体によって担われ,他の受容体はその調節に関与すると考えられている。いずれの受容体も三つの膜貫通部位と,チャネルポアを形成するPループから構成される。Pループは進化的にK+チャネルに由来し,イオン選択性を決定する。NMDA受容体は高いCa2+透過性を持つが,AMPA受容体やカイニン酸受容体は同部位にアルギニン残基を持つサブユニット(GluA2やGluK2など)を含まない時にのみ中等度のCa2+透過性を持つ(図)。N末端の細胞外領域は進化的に細菌のアミノ酸結合タンパク質LIVBP(leucine/isoleucine/valine-binding protein)とLAOBP(lysine/arginine/ornithine-binding protein)に由来する領域とに分かれている。LAOBP領域はリガンドが結合すると蝿取り草(venus flytrap)のように閉じ,その立体構造変化によってチャネルのゲートを開く。NMDA受容体はGluN1が2個とGluN2が2個から構成され,GluN1にグリシンや
代謝型グルタミン酸受容体は,GABAB受容体,Ca2+受容体,味覚受容体,フェロモン受容体などと共にGタンパク質共役型受容体ファミリー3に属している。主にGqタンパク質と共役し,興奮性に働くグループⅠと,Gi/oタンパク質と共役して抑制性に働くグループⅡ,Ⅲに分類されている。面白いことに代謝型受容体ではN末端のLIVBP領域が2量体形成に関与するのみでなく,リガンドが結合して構造変化を細胞内に伝達する。代謝型受容体は主にホモ2量体として存在するが,Ca2+受容体ともヘテロ2量体を形成する。
大脳基底核における興奮性および抑制性アミノ酸による神経伝達
著者: 南部篤
ページ範囲:P.348 - P.349
大脳基底核は線条体,淡蒼球,視床下核,黒質から成り立ち,運動制御や運動学習に関わっている。機能不全に陥ると,パーキンソン病やジストニアに見られるように運動障害を来したり,強迫性障害(OCD)などのように精神症状を示したりする。よく研究されている線条体について述べる。
AMPA受容体に対するスーパーオキサイドの選択的増強作用
著者: 竹内啓太 , 吉井清哲
ページ範囲:P.350 - P.351
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
スーパーオキサイド/AMPA受容体,KA受容体,NMDA受容体,GABAA受容体,5HT3受容体
スーパーオキサイド(SO)は酸化力の強い,生体膜不透過性の陰イオンである。生体ではNADPHなどが生成し,特異的分解酵素,スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)が分解する。SOは強力な酸化作用をもつ他の活性酸素種とともに,生体防御に利用される。また,細胞内および細胞間情報伝達物質としての利用,発ガンをはじめ多様な疾患や老化への関与が示唆されている。活性酸素種は電位依存性K+チャネル電流を抑制1)することが知られている。しかし,これまでSOの神経伝達物質受容体チャネルに対する作用は知られていなかった。本稿では,グルタミン酸受容体サブタイプ,AMPA受容体チャネル電流に対するSOの修飾作用2)を紹介する。
最初に,AMPA受容体チャネルに対するSOの作用を発見するに至った経過を簡単に説明する。生体膜不透過性の蛍光色素ルシファーイエローCH(LY)は,電気生理学的に測定した細胞を同定するため昔から利用されてきた。われわれもLYを含む電極内液を用い,ホールセルクランプ法で味蕾細胞の電気生理学的性質と形態の関連を調べた。このとき,露光されたLYが電位依存性Na+チャネルの不活性化を不可逆的に阻害することを発見した3)。不活性化の阻害作用はLY濃度,露光強度および露光時間に依存した。ジチオスレイトール(DTT,還元剤)がこの阻害作用を打ち消すこと,単一Na+チャネルの開口時間が増大したことから,何らかのラジカル種がNa+チャネルを修飾すると考えた。その後,SOD存在下では不活性化の阻害が起きないこと,加熱により不活性化したSODには阻害作用がないことなどから,阻害活性がSOであることを明らかにした4)。また,Na+チャネルに加え,SOは遅延整流性K+チャネルおよび内向き整流性K+チャネル電流を多少増大させたが,外向き整流性陰イオンチャネル電流およびHVA-Ca2+チャネル電流を変化させないことも明らかにした。
グリシン部位のコ・アゴニストとしてのD-セリン
著者: 井上蘭 , 森寿
ページ範囲:P.352 - P.353
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
D-セリン,NMDA/NMDA受容体(グリシン部位)
生体を構成するタンパク質は,L体アミノ酸のみから形成されており,哺乳類にD体アミノ酸は存在しないと長い間考えられてきた。ところが,ラット脳にD-セリンが豊富に存在していることが橋本らにより1993年に報告され,脳内D-セリンの役割が注目された1)。
大脳皮質のノルアドレナリン分泌ニューロンのオレキシン刺激とNMDA受容体
著者: 廣田和美 , 櫛方哲也
ページ範囲:P.354 - P.355
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
オレキシン,ケタミン,MK-801/OX1受容体,NMDA受容体
ノルアドレナリン(NA)は中枢神経系での主要神経伝達物質の一つであり,意識の制御に重要な役割を果たしている。脳内NA分泌ニューロンの50%以上は青斑核からの投射であり,青斑核からの軸索は背側被蓋NA神経束を形成し,海馬,扁桃体などに軸索側枝を出しながら大脳皮質の全域に投射する。さらに,別の経路を通って小脳および脊髄へも投射する。興味深いことに,大脳皮質へのNA分泌ニューロンの投射はほぼ全て青斑核からである。青斑核の神経活動およびNA放出は,覚醒からノンレム睡眠,レム睡眠へと移行するにつれ減少していき,レム睡眠中は停止する。
意識消失は,中枢神経が低体温,鎮静剤などにより抑制されて生じる一方で,過興奮でも生じる。例えば,ロックコンサートなどで熱狂的なファンは興奮のあまり失神することがあるし,てんかん発作でも意識は消失する。よって,意識に関与する脳内NA分泌ニューロンの活動も,生理的範囲内でのみ意識は保たれ,活動が範囲外(低下または過興奮)では意識は消失するという仮説のもとに研究を行ってきた。全身麻酔では,GABAA受容体作動型(GABA型)麻酔薬のプロポフォール,ミダゾラム,ペントバルビタールによる麻酔では,マイクロダイアリーシス法で大脳皮質NA放出を測定すると,NA放出が基礎値の約25-30%減少した。これとは対照的に,NMDA受容体抑制型(NMDA型)麻酔薬のケタミン,亜酸化窒素,キセノンによる麻酔では,NA放出は基礎値の約5倍まで増加した。このように,GABA型麻酔薬ではNA分泌神経ニューロンは抑制され,NMDA型麻酔薬では過興奮となる。覚醒系モノアミンであるNA放出の増加の生理的範囲を調べるため,α2拮抗薬ヨヒンビンや抗コリンエステラーゼ阻害薬フィゾスチグミンなどで検討した結果,NA放出量が基礎値の2-2.5倍までであれば覚醒は増加し,4-5倍を超すと逆に覚醒減少に転じることがわかった。
NMDA受容体アンタゴニストとしての亜鉛と海馬LTP
著者: 武田厚司 , 奥直人
ページ範囲:P.356 - P.357
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
亜鉛/NMDA受容体
記憶形成を司る海馬の亜鉛濃度は約300μMであり,他の領域と比べて高い。また,Timm's染色(亜鉛イオンが染まる)では苔状線維が存在する透明層が最も強く染色され,シャーファー側枝が存在するCA1放線層,貫通線維が存在する歯状回分子層も染色される。大脳皮質からの情報は貫通線維シナプス,苔状線維シナプス,シャーファー側枝シナプスの三つのシナプスで処理され,記憶される(図)。これらのシナプスはグルタミン酸作動性であり,グルタミン酸とともに亜鉛が放出される。特に,苔状線維ではすべての終末から亜鉛が放出される(シャーファー側枝では約45%の終末から)。細胞外に放出された亜鉛はグルタミン酸受容体などに作用し,グルタミン酸作動性シナプスの活動を調節する。
NMDA受容体のポリアミン部位と神経突起の伸長
著者: 宝田剛志 , 米田幸雄
ページ範囲:P.358 - P.359
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
MK-801,イフェンプロジル/NMDA受容体
●NMDA受容体
L-Glutamic acid(Glu)は哺乳動物中枢神経系においても,アミノ酸代謝やエネルギー産生,あるいはタンパク質生合成など細胞の普遍的現象に関与するだけではなく,興奮性ニューロトランスミッターおよび内因性エキサイトトキシンとしての特異的機能も有する1)。この興奮性アミノ酸受容体は特定イオンの細胞膜透過性を調節するイオノトロピック型受容体(iGluR),および細胞内の特定リン脂質加水分解や細胞内環状ヌクレオチド代謝を制御するGTP蛋白共役型メタボトロピック型受容体(mGluR)に大別される。iGluRはさらに外因性アゴニストに対する感受性の相違などにより,N-methyl-D-aspartic acid(NMDA)感受性受容体とNMDA非感受性(non-NMDA)受容体に分類される。
NMDA受容体にはサブユニットとしてNR1サブユニットとNR2A-DおよびNR3A-Bサブユニットが見出されており,機能的なNMDA受容体チャネルの発現にはNR1サブユニットが必須である。NR1サブユニットはNR2A-D,NR3A-B中の1種あるいは数種のサブユニットとヘテロメリックな複合体を形成して,Ca2+透過性の高いイオンチャネル機能を示す。
NMDA受容体の調節領域(R-domain)へ結合するポリアミンとイフェンプロジル
著者: 五十嵐一衛
ページ範囲:P.360 - P.361
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
スペルミン,イフェンプロジル/NMDA受容体
ポリアミン[プトレスシン(PUT,NH2(CH2)4NH2),スペルミジン(SPD,NH2(CH2)3NH(CH2)4NH2),スペルミン(SPM,NH2(CH2)3NH(CH2)4NH(CH2)3NH2)]はウイルスからヒトに至るまで生物界に広く存在する生理活性アミンであり,主として核酸,特にRNAと相互作用することにより蛋白質・核酸合成を促進し,細胞増殖因子として機能する1)。また,NMDA受容体やヘパリンなどのグリコサミノグリカンとの相互作用を通し,生体機能のモジュレーションにも関与している。
脳は細胞増殖が活発でないにもかかわらずポリアミン含量が比較的多く,脳におけるポリアミンの役割が注目されていた。1990年代に入ると,長期増強に基づく記憶形成およびCa2+のニューロンへの流入による脳虚血時の症状悪化に強く関わっているNMDA受容体のcDNAのクローニングが成功し,その活性測定がアフリカツメガエルの卵母細胞にNMDA受容体mRNAを注入することにより可能になり,ポリアミン,特にSPMがNMDA受容体を脱分極(興奮)時に活性化し,過分極(静止)時に阻害することが明らかとなった。
NR2Bサブユニット含有NMDA受容体のアンタゴニストによるL-LTPの誘発
著者: 大西新 , 佐治真理 , 鈴木信之
ページ範囲:P.362 - P.363
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
NMDA,Ro25-6981/NMDA受容体
●背 景
海馬におけるシナプス可塑性は記憶・学習の神経基盤と考えられている。特にシナプス伝達効率の長期増強(Long-term potentiation:LTP)はげっ歯類の実験によって空間記憶の成立に深く関与していることが示されている。LTPは二つのフェーズがあり,シナプス伝達効率の増強が1時間前後継続維持する初期LTP(early phase LTP:E-LTP)と3時間以上継続維持する後期LTP(late phase LTP:L-LTP)に分けられる。L-LTPは蛋白合成阻害剤によってブロックされることから,L-LTPの成立の際に転写因子であるサイクリックAMP応答因子結合蛋白質(cAMP-responsive element binding protein:CREB)のリン酸化を伴う蛋白質の合成が起こっていると考えられる。ラット海馬CA1領域において高頻度電気刺激によって誘発されるLTPの成立には,グルタミン酸受容体サブタイプであるNMDA受容体の活性化が必須であることが明かになっている。
しかし,海馬スライス標本でNMDA(NMDA受容体のフルアゴニスト)によってNMDA受容体を刺激してもLTPは成立しないことが報告されている。NMDA受容体はヘテロ4量体で二つのNR1サブユニットと二つのNR2サブユニットにより構成され,成熟ラット海馬ではNR1とNR2A,NR2Bサブユニットから主に構成される。近年,海馬においてグルタミン酸によってグルタミン酸受容体を刺激するとCREBのリン酸化が阻害されるが,NR2Bサブユニット含有NMDA受容体を遮断することによってその阻害が起こらないことが報告された。このことから,われわれは,NR2Bサブユニット含有NMDA受容体を遮断した状態でNMDA受容体を刺激すればL-LTPが誘導できるのではないか,と仮説を立て実証実験を行った。
NMDA受容体の刺激による脳へのマンガン取り込みの増強
著者: 伊藤康一
ページ範囲:P.364 - P.365
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
マンガン/NMDA受容体
最近,脳関門(血液脳関門:BBB,血液脳脊髄液関門:BCSFB)の機能調節機構と精神・神経疾患との関係が,アストロサイトおよび脳血流調節機構研究の進歩により注目されている。これら神経-血管系単位での神経活動依存的影響,特にグルタミン酸(Glu)神経系について興味が持たれている。
脳関門の研究方法は分子生物学的手法の進歩により急速に発展してきたが,まだ限界があり,停滞させている一因となっている。最近,同一個体で経時的に脳内の状態を非侵襲的に観察できる磁気共鳴画像法(MRI)が用いられ,さらに造影剤を用いることにより,脳関門の状態(部位,物質の透過状態など)を観察することができる。最近,世界中の多くの研究者が小動物の脳研究にMRI手法を用いるようになってきた。
L-プロリン,D-プロリンの催眠作用とNMDA受容体,グリシン受容体
著者: 濱洲紘介 , 古瀬充宏
ページ範囲:P.366 - P.367
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
L-プロリン,D-プロリン,ストリキニーネ,MK-801/NMDA受容体
現代社会は,「ストレス社会」という言葉で置き換えられるほど,精神的な重圧を被るようになってきた。ヒトを取り巻く環境の負荷は多種・多様であり,うつ病を含む精神的な疾患により,自殺者数は毎年3万を超えるという社会現象が起こっている。また,ストレスは社会生活の質の低下にも結び付き,ストレス軽減に対する要望は強いものである。ストレス問題に対して投薬治療は確かに有効な手段であるが,ストレス社会に移行するにあたり平行して起こった食生活の劇的な変化を見逃すことはできない。また,脳の栄養素代謝がストレスにより変動するかの検証もあまりなされていないのが現状である。
代謝調節型グルタミン酸受容体のサブタイプ
著者: 宝田剛志 , 米田幸雄
ページ範囲:P.368 - P.369
●グルタミン酸受容体
グルタミン酸は哺乳動物の中枢神経系において重要な興奮性伝達物質であり,記憶,学習などの中枢神経系の高次機能の維持において重要な役割を果たすことは周知の事実である。グルタミン酸は中枢神経系に限らず殆ど全ての細胞に高濃度に存在するが,神経伝達物質としてのグルタミン酸は神経細胞終末部においてグルタミンより生成されると理解される。この神経伝達物質プール内のグルタミン酸は,神経刺激によりシナプス間隙に開口放出されたのち,前または後シナプス細胞膜上の受容体へと結合して神経情報を伝達する。その後は興奮性アミノ酸トランスポーターにより周辺細胞内へと取り込まれ,シナプス間隙中から速やかに除去される。
グルタミン酸受容体は,イオンチャネル内蔵型のイオノトロピック型グルタミン酸受容体(Ionotropic glutamate receptor:iGluR)と,Gタンパク質共役型である代謝調節型グルタミン酸受容体(Metabotropic glutamate receptor:mGluR)の二つに大別される1)。
小脳プルキンエ細胞の1型代謝型グルタミン酸受容体
著者: 田端俊英 , 狩野方伸
ページ範囲:P.370 - P.371
●小脳プルキンエ細胞におけるmGluR1の発現
1型代謝型グルタミン酸受容体(type-1 metabotropic glutamate receptor:mGluR1)は興奮性伝達物質アミノ酸を受容する八つのGタンパク質共役型受容体のうちの一つである。小脳長期抑圧の誘導にキスカル酸選択的受容体が必要であることから,(RS)-α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic acid選択的受容体(AMPAR)とは別種のグルタミン酸受容体が小脳プルキンエ細胞に存在することが示唆された1)。この受容体がクローニングされ,mGluR1と命名された。
抑制性
メタンフェタミンによる認知障害とGABA受容体
著者: 溝口博之 , 山田清文
ページ範囲:P.372 - P.373
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
メタンフェタミン/GABA受容体
覚せい剤であるアンフェタミンやメタンフェタミンは代表的な依存性薬物であり,日本のみならず世界中でその乱用および依存症が社会的な問題となっている。覚せい剤乱用の初期には,病的爽快,注意力の増強,疲労軽減,無食欲症といった症状が観察されるが,長期間の使用により幻覚・幻聴や妄想症状などが出現する(覚せい剤精神病)。覚せい剤を慢性的に乱用すると次第に脳障害が形成されることから,覚せい剤精神病は器質性精神病と規定されている。覚せい剤精神病は,一旦発症すると薬を止めても回復しない場合が多く,再発脆弱性や症状の慢性化においても妄想型の統合失調症と酷似している。さらに,メタンフェタミンの長期使用により認知障害が惹起され,依存症に加えて認知障害の重症度が社会転帰と深く関わっている。これらのことから,覚せい剤依存者における認知障害の発症機序の解明およびその治療法の確立が重要な課題である。実際,メタンフェタミン依存者は言語記憶や運動機能の実行性が低下していることや,記憶の想起テストが非常に悪いこと,メタンフェタミン乱用者では健常人に比べ情報処理機能試験の成績が著しく悪いことなどが報告されている1)。磁気共鳴機能的画像検査法(fMRI)を用いた研究では,注意力や作業機能を評価するtwo-choice prediction taskにおけるメタンフェタミン依存者の試験成績の低下と,眼窩前頭皮質および背外側前頭前野における脳賦活の低下とが相関すると報告されている。
覚せい剤精神病や依存症のメカニズムに関しては,脳内報酬系に関係するドパミン作動性神経系を中心に研究が重ねられ,その他の神経伝達に関する報告ではドパミンとの相互作用が論じられることが多い。代表的な抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid:GABA)はドパミン神経の発火を抑制することから,GABA作動性神経系の役割について注目されてきた。例えば,遺伝子多型の研究により,GABAA受容体γ2サブユニット遺伝子の多型がメタンフェタミン依存症の脆弱性に関係することが明らかになっている。また,GABAB受容体アゴニストはドパミン神経の発火を安定化することにより,コカイン,ニコチン,ヘロインなどの依存性薬物によるドパミン遊離の増大を抑制し,その報酬効果を減弱するという報告がある。最近の研究では,GABAB受容体アゴニストbaclofenがメタンフェタミン依存患者の依存症の治療に有用であるとの臨床試験もある2)。また,エタノールによる記憶障害をbaclofenが抑制することも示されている。以上より,GABA受容体が覚せい剤による認知障害に関与する可能性が考えられるが,直接的な因果関係について述べた臨床報告や基礎研究は十分ではない。本稿では,メタンフェタミン認知障害モデル動物におけるGABA受容体アゴニストの効果について紹介する。
GABAA受容体のモジュレーション
著者: 佐久間康夫
ページ範囲:P.374 - P.375
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
アロプレグナノロン,THDOC/GABAA受容体
生殖内分泌調節の最終共通路であるゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormone:GnRH)産生ニューロンの調節にはGABAが重要な役割を果たしており,ステロイドホルモンやメラトニンによるGABAA電流のモジュレーションが排卵時のGnRHの大量放出や性特異性調節に関わっている。本稿ではEGFPの発現より可視化したラットGnRHニューロン1)における最近の研究の結果を紹介する。
生殖内分泌調節では脳からの調節に加え,性腺の分泌する性ホルモン,特にエストロゲンによるフィードバック調節が大きな役割を果たしているが,GnRHニューロンはフィードバック調節に不可欠のエストロゲン受容体(ER)αを欠いており,ERα陽性のGABA作動性ニューロンが,GnRHニューロンに対するエストロゲン作用を仲介する可能性が示されている。GnRHニューロンに対するエストロゲン作用には目立った性差があり,雌に限ってポジティブフィードバックによる分泌亢進が見られる。GnRHニューロンの単離初代培養系では,メラトニンによるGABAA電流の修飾2)を例外に,これまで限定的な性差しか検出できていないことも,上位ニューロンによる調節に性差があることを示唆する。ただし,少なくとも細胞体に限れば,GnRHニューロンに対するシナプス入力は数が限られており,ヘミシナプスなどによる体積性伝達が関わる可能性が大きい。
GABAA受容体と蝸牛の興奮性毒性の予防
著者: 田渕経司 , 原晃
ページ範囲:P.376 - P.377
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
カイニン酸,ビククリン/GABAA受容体
グルタミン酸は蝸牛内有毛細胞と求心性神経間の神経伝達物質と考えられている。過剰なグルタミン酸は蝸牛求心性神経の神経興奮性毒性を惹起し,聴覚障害をきたす。本稿では蝸牛求心性神経の興奮毒性とγ-aminobutyric acid(GABA)受容体作動によるその抑制について概説する。
前脳GABAA受容体とバゾプレッシン分泌
著者: 山口賢一 , 山田貴穂 , 長谷川功
ページ範囲:P.378 - P.379
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ビククリン/GABAA受容体
GABA(γ-アミノ酪酸)は無脊椎,脊椎動物に広く分布する抑制性神経伝達物質である。哺乳類では,専ら中枢神経系に存在する。GABAは興奮性神経伝達物質グルタミン酸(Glu)から,Glu脱炭酸酵素(GAD)の働きで作られる。Gluの源はTCA回路のα-ケトグルタル酸であるが,GABAがトランスアミナーゼにより代謝され,最終的にコハク酸になる系からも作られる。産生を巡るこのような両者の関係は,GABAによる抑制性調節機構とGluによる興奮性調節機構が系統発生上連関しつつ発達したことを示唆する。
GABAの分泌も回収も神経,グリアの双方が行うが,その過程で様々な輸送体が働く。分泌がシナプス内外で起こるように,受容体もその内外に存在する。それゆえ,GABAは神経伝達物質にも修飾物質にもなり得る。哺乳動物の中枢神経系は二種類のGABA受容体(-R)をもつ。GABAA-Rは膜を貫く5個のサブユニットから成り,主にCl-を通す負のイオンチャネルとして,シナプス後膜やシナプス外に存在する。サブユニットと組合せの違いから,約30のGABAA-Rサブタイプがある。GABAA-Rの性質,作用,細胞内分布はサブユニット構成と相関する。他方,ヘテロ二量体であるGABAB-Rはシナプス前膜や後膜に存在し,G-タンパク質依存性にcAMP産生低下,Ca2+チャネル抑制(シナプス前的),K+チャネル開口(シナプス後的)を惹起し,神経活動や伝達物質の放出を変化させる。
小脳核のGABAA受容体
著者: 坂本敏郎 , 遠藤昌吾
ページ範囲:P.380 - P.381
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ムシモール,ピクロトキシン/GABAA受容体
●小脳核のGABAA受容体
感覚情報や大脳で処理された情報は,脳幹を経由して小脳皮質と小脳核にそれぞれ入力する。脳幹から小脳への全ての入力は興奮性であるが,小脳皮質のプルキンエ細胞から小脳核への入力は抑制性であり,GABA(γ-aminobutyric acid)がその伝達を担っている。それゆえ,小脳皮質からの入力を受けとる小脳核のGABAA受容体の生理的機能は,個体における小脳の機能を理解する上で極めて重要である。小脳核にはCl--透過型のGABAA受容体が存在している。
GABAA受容体は5個のサブユニットから構成されている。サブユニットは数種類存在し,さらに,それぞれのサブユニットにアイソフォームが存在する。これらのサブユニットの組み合わせによりGABAA受容体の特性が決定される。GABAA-ρ受容体(GABAC受容体)を構成するρサブユニットを含め多くのGABAAサブユニットが小脳に存在し,小脳核では主要サブユニットであるα,β,γの存在が明らかにされている。
ロードーシス制御におけるGABAAとGABAB受容体
著者: 山内兄人 , 掛山正心
ページ範囲:P.382 - P.383
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
THIP,ムシモール/GABAA受容体
バクロフェン/GABAB受容体
●ロードーシス制御機構
発情している雌ラットは,雄ラットがマウント(背部からの交尾行動)をすると反射的に腰部と頭部をあげ脊柱を湾曲させる雌特有のロードーシス行動を示す(図)。マウント時の雄前肢による皮膚刺激が中脳中心灰白質(MCG)のロードーシス統御機構につたわり,MCGの働きでロードーシスが生じる。ロードーシス行動にはエストロゲンが不可欠で,エストロゲンは視床下部腹内側核(VMN)のロードーシス促進機構を機能させ,外側中隔(LS)の抑制機構の抑制力を解除することで発情状態を誘起する。
ロードーシス制御にはいろいろな神経伝達物質をもつ神経が関係しており,GABA神経系はその一つである。発情雌の視床下部GABA量は非発情雌より多い。GABAをラットVMNに直接注入すると15分でロードーシスが低下し,拮抗剤であるピクロトキシンを注入すると促進される。したがって,総体的にGABAはロードーシスを抑制する働きをもつ。多くのGABA神経はショートアクソンをもち核内回路の一部として働いており,イオンチャネル型のGABAAと代謝型のGABABの二つのサブタイプの受容体を介して作用している。
未分化神経細胞における繊毛性神経栄養因子(CNTF)受容体のGABAA受容体による発現増
著者: 宝田剛志 , 米田幸雄
ページ範囲:P.384 - P.385
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ムシモール/GABAA受容体
●神経幹細胞
神経幹細胞は自己複製能とともに,神経細胞,アストロサイトおよびオリゴデンドロサイトへの多分化能を併せ持つ原始細胞である。従来,脳の神経細胞新生は生後まもなくに停止して,以降に障害を受けた場合は神経細胞自体に分裂能がないために脳機能再生は不可能であると信じられ続けてきた。しかしながら,近年この神経幹細胞は胎児期脳において神経細胞やグリア細胞を供給するのみならず,成体脳においても特定の脳内部位では神経細胞が新生することが発見され1),この新生神経細胞は記憶や学習など成体脳の可塑性形成メカニズムに重要な役割を演じると考えられている2)。さらに,脳梗塞をはじめとする組織障害ストレスシグナルに応答して,脳室周囲の神経幹細胞は障害部位に移動し,その部位で新規に神経細胞を産生する可能性も報告されている。このような事実から,現在では的確な治療法の見当たらない神経変性疾患の治療戦略の一つとして,神経幹細胞の移植および内在性神経幹細胞を利用する治療法に期待が寄せられている。
網膜神経節細胞死とGABAA受容体β1サブユニット
著者: 金本尚志
ページ範囲:P.386 - P.387
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ムシモール,ビククリン/GABAA受容体
ヒト網膜は視覚情報を受容して中枢(大脳)に伝達する役割をもつ,眼球の後眼部内面に存在する膜様の神経組織である。視覚情報はまず網膜外層の視細胞が受容・認識した後,網膜内の神経伝達細胞を介して,網膜内層の網膜神経節細胞に伝達される。網膜神経節細胞から発した求心性の神経線維は束となって視神経となり,大脳内部まで到達している。その結果,最終的に視覚情報が認識される視路が形成されている。
網膜内の神経伝達物質には,ドーパミン,グリシンなどのほかに,脳内の抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酸(GABA:gamma aminobutyric acid)も存在する。GABAの受容体にはGABAA受容体・GABAB受容体・GABAC受容体があり,それらはα1-α6,β1-β4,γ1-γ4,δ,εなどの多くのサブユニットによって構成されている。特に,GABAA受容体は網膜内に豊富に存在し,神経伝達に重要な役割を果たしている。
視床下部視索前野のGABAA受容体と体温調節
著者: 大坂寿雅
ページ範囲:P.388 - P.389
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ムシモール,ビククリン/GABAA受容体
視床下部視索前野には皮膚や体のいろいろな部位からの温度情報が収束すると同時に,この脳の部位自体の温度を検出する温度感受性ニューロンが存在し,また発熱に関与する免疫系からのサイトカインなどのシグナルも直接,あるいは神経系を介してこの部位に届いてくる。視索前野はこれらの情報を統合して様々な自律性や行動性の調節反応を引き起こす体温中枢である。
GABA受容体モジュレーター部位としてのベンゾジアゼピン受容体
著者: 相良英憲 , 荒木博陽
ページ範囲:P.390 - P.391
ベンゾジアゼピン(BZ)受容体とは薬理学的な概念としての用語であり,一つの蛋白分子として細胞膜上に独立して存在するわけではない。すなわち,BZ受容体はGABAA受容体に存在するBZ結合部位である。この部位にBZあるいはBZ誘導体が作用するとGABAA受容体の活性が変化し,GABAA受容体にGABAが結合した時に起こるCl-イオンチャネルの開口によるGABA誘発電流を増大させ,神経細胞でのGABAによる抑制性作用が増強される。従って,GABAA受容体に対してBZはアロステリック調節作用のみを持ち,BZ単独では細胞応答に影響を与えるわけではない。BZ受容体のサブタイプ分類は複雑で,その機能分類も十分に解明されていないが,近年GABAA受容体サブタイプについての詳細な検討が進み,それに伴いBZ受容体の機能も次第に明らかになってきた。
GABAA受容体アンタゴニストによるLTP様作用の誘発
著者: 松山正剛 , 角山圭一 , 谷口泰造
ページ範囲:P.392 - P.393
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ビククリン/GABAA受容体
中枢におけるGABA(ガンマーアミノ酪酸)は抑制性神経伝達物質として作用し,学習記憶機能とも深く関わっている。学習記憶の中心的役割を担っている海馬に,GABA神経は内側中隔野,対角帯から投射され,海馬神経の約10%をGABA神経が占めている。中枢のGABA受容体サブタイプには,GABAA受容体とGABAB受容体が存在する。
学習記憶の基礎過程であるシナプス可塑性を反映する長期増強現象(long-term potentiation:LTP)に関しては,海馬スライスを用いた多くの電気生理学的研究がなされてきた。GABA受容体サブタイプ別のLTPへの作用について,GABAB受容体の阻害に関しては,海馬の部位,テタヌス刺激の種類などによって様々である。一方,GABAA受容体の阻害に関しては,GABAA受容体阻害薬を海馬スライスの還流液中に投与しておくことでGABA神経の抑制機構の抑制によって,興奮性神経系シナプスでのLTPの増強を含めた明確な反応が得られやすくなることはよく知られている。近年,CA1領域における興奮性シナプスのLTPには抑制性シナプスの長期抑制現象が併発し,GABAA受容体を介する神経活動の抑制機構が重要な役割を果たしていること1),また,GABAA受容体欠損マウスでのLTPの増強傾向2),さらに,
ショウジョウバエ脳のGABAニューロンの局在と役割
著者: 岡田龍一 , 伊藤啓
ページ範囲:P.394 - P.395
●昆虫の神経伝達物質としてのGABA
ガンマアミノ酪酸(GABA)はヒスタミンとともに昆虫神経系における代表的な抑制性神経伝達物質で,ショウジョウバエ脳ではヒスタミンよりGABAニューロンの方がはるかに多い。他の動物種と同様に,GABAはグルタミン酸脱炭酸酵素(ショウジョウバエでは
加齢による記憶減退とGABAA受容体の関与
著者: 吉池裕二 , 高島明彦
ページ範囲:P.396 - P.397
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ビククリン/GABAA受容体
●加齢による脳機能変化
脳機能は発達に伴って成熟し,加齢にともなって言語機能は保たれるものの短期記憶,長期記憶共に低下することが知られている。加齢した脳では嗅内野に神経原線維変化が見られる。神経原線維変化は微小管結合タンパク質タウが過剰にリン酸化され線維化したものであり,この神経原線維変化が辺縁系,新皮質へ拡がると認知症となる。一方,前頭前野白質層の萎縮が加齢に伴って増大することがMRIによって観察されている。さらに,機能的MRIを用いた研究では記憶課題において海馬傍回の活性低下と基底核,前頭前野部位の活性化が観察されている。この加齢による活性変化は,脳機能の補償機構により低下した海馬傍回機能を前頭前野が機能代償を行っていると考えられている。このように,脳のシステムレベルにおいて機能恒常性を保つ機構が発動し,脳機能を正常範囲に保とうとする。
同様のことはシナプスそして神経ネットワークレベルにおいても起きている。恒常的可塑性(Homeostatic plasticity)は神経回路中の活性を一定に保つため抑制性,または興奮性シナプスを調節する仕組みである。この機構の中でGABAA受容体が作用することで神経回路の過剰な興奮を抑制している。このように,通常脳は回路機能の補償,さらに脳システムとしての機能補償を行うことで正常な脳機能を保っている。例えば,Wilkinsonらは若齢ラットと老齢ラットを用いて海馬CA3における場所神経の活動を調べている。若齢ラットは環境に応じて場所神経が形成されるのに対して,老齢ラットでは環境を変えても同じ場所神経が同一の場所で活性化することを見出している。これは,加齢にともなって脳内での環境認知様式が変化していくことを示している。
2.アセチルコリン
アセチルコリン受容体のイオン作動性・代謝作動性の働き
著者: 赤池昭紀
ページ範囲:P.400 - P.401
アセチルコリン(ACh)は生体内の多くの器官で重要な生理機能を担っており,その受容体はアゴニスト作動性陽イオンチャネルであるニコチン受容体と,代謝型受容体であるムスカリン受容体に大別される。ニコチン受容体は4回膜貫通型(4TM)サブユニットが5量体を形成し,AChを含むアゴニストが結合するαサブユニット(α1~α10)により受容体サブタイプの分類がなされている。骨格筋に発現する受容体サブタイプはα1,自律神経節に発現する主要なサブタイプはα3,中枢神経系に高発現するのはα4およびα7受容体サブタイプである。ニコチン受容体イオンチャネル複合体の多くはNa+とK+に対して比較的高い透過性を示すが,α7受容体はCa2+に対して高い透過性を示す。一方,ムスカリン受容体は典型的な7回膜貫通型(7TM)受容体であり,M1~M5の五つのサブタイプに分類される。M1,M3,M5はG蛋白のうちGq/11と連関しており,M2,M4はGi/oと連関する。M1,M4,M5は主として神経系に発現し,M2は心臓,M3は心臓以外の副交感神経効果器に発現する。AChが血管内皮細胞のM3受容体を介して一酸化窒素合成酵素を活性化し,内皮で産生されたNOが血管平滑筋弛緩作用を発現するというメカニズムは,ガス状生理活性物質としてのNOの発見の端緒となったことで知られる。
ニコチン受容体はAChの神経興奮作用,神経伝達物質遊離作用に関わっており,イオンチャネル型受容体という性質上,AChの比較的短時間の作用を伝えると考えられてきた。しかし,長期間のニコチン受容体刺激が神経保護作用を発現するなどの単純な脱分極作用だけでは説明できない現象が発見され,種々の細胞内シグナル伝達系を駆動することを示唆する知見が集積されてきた。さらに,アミロイドβ蛋白がα7受容体に結合することなどアルツハイマー病への関与も示唆されている。
マイネルト基底核の刺激で誘発される同側性大脳皮質におけるNGF分泌とニコチン受容体
著者: 堀田晴美
ページ範囲:P.402 - P.403
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
メカミラミン/アセチルコリン(ニコチン)受容体
アトロピン/アセチルコリン(ムスカリン)受容体
神経栄養因子は,動物の一生を通して特定のニューロンの生存と機能を支える重要な役割を果たす。神経成長因子(nerve growth factor:NGF)は,前脳基底部のコリン作動性ニューロンの生存と機能にとって不可欠な神経栄養因子であることが示されている。コリン作動性ニューロン自体はNGFをほとんど産生せず,大脳皮質や海馬のような標的部位でNGF産生ニューロンから分泌されるNGFに依存する。NGFの生物学的作用に関する知識の豊富さと比較すると,NGF分泌調節メカニズムに関する知識はごく限られている。コリン作動性軸索の標的部位における,局所のNGF分泌の生理的調節メカニズムを明らかにすることは,NGFの生理的役割を知る上で重要である。
われわれは最近,
脊髄内痛覚伝達系のムスカリン受容体
著者: 本多健治 , 高野行夫
ページ範囲:P.404 - P.405
痛みは刺激による危険から身を守る防御の一つであり,器質的疾患による異常を知らせる警告でもある。しかし,多くの疾患で痛みは有益なものではなく,不快感,機能障害をもたらしQOL(生活の質)の低下や治療に悪影響をおよぼす。
今日,多くの難治性疼痛の治療には主に麻薬性のモルヒネが鎮痛薬として用いられているが,癌性疼痛や神経因性疼痛のような疼痛に無効な場合もある。また,モルヒネは耐性や依存を生じやすく,モルヒネに変わる新しい鎮痛薬の開発が望まれている。そのためにも疼痛伝達の仕組みを詳細に解明することが求められている。
認知機能とアセチルコリン神経
著者: 岩崎克典 , 藤原道弘
ページ範囲:P.406 - P.407
認知症とは,一旦獲得していた知的機能が脳の器質的変化により後天的に低下する病態をいう。認知症を伴う高齢疾患の代表格は脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症である。前者は,脳血流の一時停止により閉塞した血管の支配領域の神経細胞が細胞死に陥った結果発症する。記憶に深く関わる海馬の血流を養う血管が閉塞する場合に顕著である。アルツハイマー型認知症は,現在のところ確たる病因は不明であるが,老人斑の形成やマイネルト基底核から大脳皮質に投射する神経や中隔野から海馬に投射する神経に変性がみられることがその原因に挙げられる。
ガランタミンによるムスカリン性アセチルコリン受容体活性化の機構
著者: 吾郷由希夫 , 松田敏夫
ページ範囲:P.408 - P.409
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ガランタミン/アセチルコリン(ムスカリン)受容体
近年,統合失調症患者の海馬や大脳皮質,線条体において,ニコチン性アセチルコリン(ACh)受容体やムスカリン性ACh受容体の発現量が低下していること,また頭頂葉において,ACh合成酵素であるコリンアセチルトランスフェラーゼの活性が低下していることが報告され,統合失調症の認知機能障害にACh神経系の機能低下が関与する可能性が示されてきた。このような中で,ガランタミンが臨床において統合失調症の陰性症状や認知機能障害を改善することが報告されている。ガランタミンはドネペジルと同様にアルツハイマー病治療薬として開発されたAChエステラーゼ阻害薬であるが,その
3.アミン ドーパミン
中枢神経系におけるドーパミン受容体の働き
著者: 三浦正巳 , 増田正雄 , 青崎敏彦
ページ範囲:P.412 - P.413
ドーパミンは中枢神経系におけるカテコールアミン系の神経伝達物質である。脳では線条体(尾状核,被殻),側坐核に約80%のドーパミンが集中している。ドーパミンはノルアドレナリンなどと同様にチロシンからドーパ(L-ジヒドロキシフェニルアラニン:L-DOPA)を経て生合成される。歴史的にはノルアドレナリンの前駆物質と見なされた時期もあったが,1950年代にカールソン(Carlsson, A.)によって神経伝達物質であることが明らかにされた。これらの業績により,グリーンガード(Greengard, P.),カンデル(Kandel, E.)とともに2000年のノーベル医学生理学賞を受賞したことは記憶に新しい。
ドーパミン作動性ニューロンは中脳と視床下部に存在し,線条体,前頭葉,大脳辺縁系,視床下部の正中隆起に投射する。中脳から大脳皮質,辺縁系へ投射する経路は報酬や意欲,動機,学習などに関わる。中脳線条体系では,運動制御に加えて行動の強化学習に必須である。こうした経路では,ドーパミンはシナプス前終末や一部は樹状突起から(dendritic release)放出され,神経伝達物質として働いている。一方,弓状核のドーパミン作動性神経は正中隆起に投射し(隆起漏斗ドーパミン系),黄体形成ホルモン放出ホルモンの放出を抑制する。ここではドーパミンはホルモンとして働く。
ドパミン受容体の新しいアンタゴニスト
著者: 中村史雄 , 五嶋良郎
ページ範囲:P.414 - P.415
すべての抗精神病薬はドパミンD2受容体の拮抗活性を持つ。第1世代(定型)抗精神病薬は大きくフェノチアジン系,ブチロフェノン系化合物に分類される。いずれも統合失調症の陽性症状である幻覚(幻聴),妄想には抑制作用を示すが,陰性症状である意欲低下や感情鈍麻などを改善する効果は乏しかった。また,錐体外路症状(アカシジア,ジストニア,パーキンソン病様運動障害),高プロラクチン血症,悪性症候群などの副作用が比較的多く,服薬コンプライアンスの低下などを招く問題があった。
一方,70年代より非定型抗精神病薬の原型となるクロザピンに陰性症状の改善効果があることが知られていた。クロザピンはドパミンD2受容体以外にもドパミンD4,セロトニン5HT2A,5HT2C,5HT6,アドレナリンα1,ムスカリンm1,ヒスタミンH1など多くの受容体の神経伝達に拮抗する。ここから複数受容体の拮抗作用(Multi-Acting Receptor Targeted Agent:MARTA)という概念が生まれてきた。しかし,クロザピンは無顆粒球症という重篤な副作用のため本邦での使用は認可されなかった。
音系列の弁別学習と聴覚野のドーパミンD2受容体
著者: 工藤雅治
ページ範囲:P.416 - P.417
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
クロルプロマジン,SCH23390,ハロペリドール,6-OHDA,192IgG-saporin/ドーパミン(D1)受容体,ドーパミン(D2)受容体
音の時系列(音系列)は言語や音楽を成り立たせる重要な聴覚情報である。音系列の学習は大脳聴覚野を破壊すると阻害されることから,聴覚野が重要な役割を果たしていると考えられる1)。音系列の弁別学習に聴覚野のムスカリン受容体が働いていることをわれわれは明らかにした2,3)。この学習では報酬を用いているので,ドーパミン系の役割を調べた結果,聴覚野のドーパミンD2受容体が音系列の弁別学習に関与することがわかった1)。
扁桃体-海馬系におけるLTPの誘発とドーパミンD2受容体の役割
著者: 阿部和穂
ページ範囲:P.418 - P.419
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
SCH23390/ドーパミン(D1)受容体
キンピロール,クロルプロマジン,ハロペリドール/ドーパミン(D2)受容体
プロプラノロール/βアドレナリン受容体
スコポラミン/アセチルコリン(ムスカリン)受容体
ピクロトキシン/GABAA受容体
私たちは,とくに嬉しかったことや怖かった体験などをよく覚えている。つまり,感情は記憶を増強する。この事実は古くから知られているにもかかわらず,メカニズムは不明であった。脳の中で海馬は記憶の形成に関与し,扁桃体は感情を司っている。したがって,海馬と扁桃体の相互作用が「情動によって記憶が増強される仕組み」に深く関係していると考えられる。私の研究グループでは,情動記憶が形成される神経メカニズムを解明するために,麻酔ラットを用いて扁桃体から海馬に至る神経系でのシナプス伝達可塑性を研究してきた。本稿ではその成果の一部を紹介したい。
アドレナリン・ノルアドレナリン
側坐核のドーパミン放出とGABAA受容体アゴニスト,アンタゴニスト
著者: 三枝禎 , 青野悠里 , 越川憲明
ページ範囲:P.420 - P.421
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ムシモール,ビククリン/GABAA受容体
側坐核は中脳腹側被蓋野を起始核とする中脳-辺縁系ドーパミン(DA)神経の投射領域の一つで,GABAA受容体が分布している。側坐核のGABAA受容体は同部位のDA神経活動を抑制的に制御することが行動学的研究から示唆されてきたが,このことは
本稿では,側坐核の基礎的なDA放出の制御,およびμ受容体刺激で誘発されるDA放出亢進に関与するこの領域のGABAA受容体の役割について,GABAA受容体系薬物を用いた
心臓交感神経のシナプス前α2-アドレナリン受容体の役割
著者: 宮本忠吉
ページ範囲:P.422 - P.423
●シナプス前α2-アドレナリン受容体について
交感神経のシナプス前α2-アドレナリン受容体は,主にノルアドレナリン神経系のシナプス前膜に存在する。リガンドによってその受容体が刺激されると,抑制性Gタンパク質が活性化されアデニル酸シクラーゼが不活化されることでATPからのcAMPの生成が抑制される。このようなシナプス前抑制の機構は,神経末端においてノルエピネフリンがある濃度以上に達したとき負のフィードバックを行い,ノルエピネフリンの放出抑制,交感神経自身の心拍数や血圧調節の減弱作用をもたらすなど,自律神経性循環調節において重要な役割を担っている。
神経伝達物質の放出がシナプス前の自己受容体によって調節されるという概念は1970年代に提案された。Langer1)は,交感神経刺激に対する心拍反応の大きさがαアドレナリン受容体アンタゴニスト,フェントラミンの投与によって増すことを証明し,はじめてその生理学的意義を明らかにした。
脂肪細胞のβアドレナリン受容体の多型性と肥満
著者: 南畝晋平 , 東純一
ページ範囲:P.424 - P.425
交感神経系はエネルギー消費,熱産生において重要な役割を示す。脂肪細胞にはβ1,β2,β3アドレナリン受容体(adrenergic receptor:AR)が発現しており,脂肪分解に関与することが知られている。1995年にβ3AR Trp64Arg遺伝子多型と肥満との関連がNew England Journal of Medicine誌に報告されてから,βAR遺伝子多型と肥満とに関する様々な報告がされてきた。しかし,首尾一貫した結果が得られていないのが現状である。さらには,肥満という状態が様々な遺伝要因,さらには環境要因に影響を受けていることは周知の事実である。本稿では,近年報告されたメタアナリシスの結果を中心に,βAR遺伝子多型と肥満との関連を概説する。
骨格筋と心筋におけるβ1とβ2-アドレナリン受容体の遺伝子発現とその調節
著者: 佐藤章悟 , 谷端淳 , 今泉和彦
ページ範囲:P.426 - P.427
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
クレンブテロール,デキサメタゾン/β-アドレナリン受容体
骨格筋のβ-アドレナリン受容体(AR)を介した情報伝達は筋タンパク質合成と分解,グリコーゲン代謝,脂質代謝など様々な生理機能に関与する。骨格筋に分布するβ-ARサブタイプはβ2-ARが80-95%,β1-ARが5-10%を占め,β3-ARは殆んどない。また,β2-ARの密度は収縮速度の低い筋(slow-twitch muscle:ST筋)(ヒラメ筋)では収縮速度の高い筋(fast-twitch muscle:FT筋)(長指伸筋・足底筋)より2-3倍高い。一方,心筋のβ-ARを介した情報伝達は心収縮力や心拍数などの生理機能に関与する。心筋に分布するβ-ARサブタイプはβ1-ARが60-70%,β2-ARが20-30%を占め,β3-ARは殆んどない。特に左心室筋(left ventricle muscle:LV筋)ではβ1とβ2-ARの密度が高い。このような骨格筋と心筋のβ1とβ2-AR発現は,カテコールアミンやグルココルチコイドなどの生体内情報伝達物質によって影響を受ける。また,各種作動薬によっても骨格筋と心筋のβ1とβ2-AR発現は変動するが,遺伝子発現に着目した研究は比較的少ない。
セロトニン
5-HT受容体の種類とその役割
著者: 有田秀穂
ページ範囲:P.428 - P.429
セロトニン(5-HT)は血管平滑筋を収縮させる物質として約60年前に発見され,それは今日,片頭痛の治療薬として臨床応用されている。一方,5-HTは脳内にも同定され,広汎な脳脊髄領域に5-HT受容体が分布し,さまざまな調節機能に関与する。それらは覚醒,気分,記憶,概日リズム,鎮痛,姿勢筋促通,自律神経調節などに及ぶ。脳,血管以外では,消化管や皮膚においても5-HT作用は知られている。本稿では,神経伝達物質としての5-HTに焦点を当てて概説する。
5-HT神経は脳幹の縫線核群に数万個の細胞群として存在する。中脳・背側縫線核の5-HT神経は上行性に投射し,前頭前野,側坐核,扁桃体,視床,小脳などに影響を与える。正中縫線核5-HT神経は海馬,中隔,視床下部などに投射する。下部脳幹の5-HT神経は下行性に投射して,その神経終末は延髄,脊髄に分布して,それぞれ異なる受容体を介して作用する。
中隔核における5-HT1B受容体の役割
著者: 蓮尾博 , 赤須崇
ページ範囲:P.430 - P.431
セロトニンは情動,認知,攻撃性,食欲,睡眠,呼吸その他の様々な生理学的,行動学的機能に関与している。さらにうつ病,強迫性障害,不安障害などの神経精神疾患の治療薬はセロトニン神経系を介して作用していると考えられるものも多い。中隔核は大脳辺縁系に属し,海馬や扁桃体と密接な関係にあり,視床下部や脳幹とも神経連絡があることなどから,自律神経の上位中枢として働いていると考えられている。ここには脳幹の縫線核からセロトニン作動性ニューロンの入力があり,自律神経機能や情動の形成に深く関わっていると思われる。背外側中隔核(dorsolateral septal nucleus:DLSN)ニューロンにおけるこれまでの研究で,セロトニンは種々の5-HT受容体サブタイプを活性化させてシナプス伝達の修飾をしていることが明らかとなった。本稿では,DLSNにおける5-HT1受容体(5-HT1A,5-HT1B),特に抑制性シナプス伝達の5-HT1B受容体を介する修飾作用について概説する。
5-HT1B受容体に共役したG蛋白質の活性化アッセイ
著者: 小田垣雄二 , 豊嶋良一
ページ範囲:P.432 - P.433
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
5-HT,L694247,GR46611,CP93129,CGS12066A,(±)-8-OH-DPAT,(±)-DOI/5-HT1B受容体
5-HT受容体ファミリーは各種神経伝達物質受容体のなかでも最も多様性に富んでおり,さまざまな生体機能と関連を有していることが知られている。その亜型分類は当初はもっぱら薬理学的特徴に基づいて行われていたが,近年の分子生物学的研究手法の発展にともなってアミノ酸配列の詳細が明らかとなり,現在では5-HT1-7の7種の亜型ファミリーに分類されている。それぞれの亜型ファミリーの多くはさらに複数のサブタイプからなるため,現在まで少なくとも14種の5-HT受容体亜型の存在が知られている1)。
各5-HT受容体サブタイプの特徴や生理機能との関連については前出の概説に述べられているが,本稿ではこのうち,特に5-HT1B受容体に焦点を当て,この受容体サブタイプを介した三量体G蛋白の活性化反応について述べる。5-HT1B受容体は,もともとはラット脳における[3H]5-HT結合部位についての薬理学的検討のなかで,5-HT1A受容体とは性質を異にする受容体として命名されたが,ヒトやウシなどの脳で薬理学的に同定された5-HT1D受容体との異同については,一時分類上の混乱が見られた。しかし,その後,各動物種における各受容体亜型についてのクローニングが進む中で再整理が行われ,現在では5-HT1D受容体とは別個の受容体亜型として存在することが知られている。その薬理学的性質は動物種によって異なるため,r5-HT1B(ラット)あるいはh5-HT1B(ヒト)などと動物種を指示して表示することがある。また,薬理学的には両者を必ずしも十分に分離できないことも多く,そのような場合には5-HT1B/1Dまたは5-HT1B/Dと総称されることもある。
末梢の急性炎症に対する5-HTの作用機構
著者: 小幡英章 , 斎藤繁
ページ範囲:P.434 - P.435
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
塩酸サルポグレラート,ケタンセリン,RS102221,SB242084/セロトニン(5-HT)受容体
セロトニン(5-Hydroxytryptamine,以下5-HTと略す)は,生体内に広く存在する生理活性アミンで,ヒトではその90%が小腸のエンテロクロマフィン細胞に含まれ,8%が血小板に,1-2%が中枢神経系に存在する。多様な生理的機能を担っているが,痛みに関しても重要な役割を果たしており,5-HTが偏頭痛を誘発することはよく知られている。体性痛に関しても5-HTは深く関与しており,末梢では痛みを増強する因子として,中枢神経系では下行性抑制系の一翼を担う神経伝達物質として知られている。近年,動物の様々な疼痛モデルが開発され,末梢での炎症性疼痛に関与する5-HTの役割が明らかになりつつある。
統合失調症の認知機能障害における5-HT受容体の役割
著者: 住吉太幹
ページ範囲:P.436 - P.437
●統合失調症における認知機能障害
統合失調症は発症率が約1%のcommon diseaseであり,陽性症状(幻覚,妄想など),陰性症状(感情の平板化,社会的引きこもりなど)などの精神病症状により特徴づけられる代表的な精神科疾患である。早期に適切な治療を開始することで症状の持続や再燃を抑えることが求められている。統合失調症患者では,学習記憶,ワーキングメモリー,遂行機能,注意,語流暢性,情報処理速度などの認知機能領域を反映する神経心理学的検査成績が,健常者と比べ1-2 SD程度低下していることが知られている。この認知機能障害は発症前の段階(前駆期)においてすでに存在するとされ,就労など患者の社会機能や予後に対し,精神病症状よりも大きな影響を及ぼす因子として注目されている。このような背景から認知機能障害の体系的な評価法の整備が求められており,NIHを中心に開発された包括的なテストバッテリーであるMATRICS-CCBなどの本邦への導入の動きもある。
これら認知機能障害の生物学的基盤として,脳機能・形態の疾患特異的な変化が注目されている。例えば,神経活動を簡便に測定できる電気生理学的指標である事象関連電位(P300, mismatch negativity)やprepulse inhibitionの異常などが見出されている。
ヒスタミン
ヒスタミン受容体の種類と情報伝達機構
著者: 福井裕行
ページ範囲:P.438 - P.439
ヒスタミンは免疫・アレルギー,胃酸分泌のメディエーターおよび中枢神経伝達物質として機能する。ヒスタミン受容体サブタイプにはH1受容体,H2受容体,H3受容体,H4受容体がある。H1受容体,H2受容体に比べて,H3受容体,H4受容体に対するヒスタミンの親和性が約1,000倍高い。胎児組織の細胞,治癒過程の細胞,がん細胞など増殖の盛んな細胞にヒスタミン含量の高いことが知られているが,機能および仲介する受容体は不明である。
H1受容体アンタゴニストによる記憶欠損
著者: 亀井千晃
ページ範囲:P.440 - P.441
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
クロルフェニラミン,ジフェンヒドラミン,プロメタジン,ピリラミン,アゼラスチン,ケトチフェン,オキサトミド,アステミゾール,2-メチルヒスタミン,4-メチルヒスタミン/ヒスタミン(H1)受容体
第一世代のH1受容体アンタゴニスト(クロルフェニラミン,ジフェンヒドラミン,プロメタジンン)は,従来より眠気,倦怠感などの中枢抑制作用を示すことがよく知られている。しかし,ヒスタミンやH1受容体アンタゴニストにより,記憶・学習機能が影響されるという報告はあまり知られていなかった。1986年de AlmeidaとIzquierdoによって,ヒスタミン作動性神経が学習・記憶に関与することがマウスのstep-through型受動的回避反応を用いてはじめて報告された。この論文は,受動的回避反応の獲得試行直後にヒスタミンをマウスの側脳室内に投与すると受動的回避反応が促進されること,そしてこの作用はH1受容体アンタゴニストにより拮抗されることを示したものである。受動的回避反応は非常に簡便で,薬物作用の検定を行うには便利であるが,1回の訓練だけでの学習は真の学習といえるか否かに疑問を抱いた。従って,step-through型能動的回避反応および8方向放射状迷路テストを用いて,ヒスタミン作動性神経,H1受容体アンタゴニストと記憶・学習との関連について検討した。
ヒスタミンH1,H2受容体遺伝子欠損マウスの作製と意義
著者: 谷内一彦 , 赤池紀生
ページ範囲:P.442 - P.443
ヒスタミン(HA)が1910年に発見されて以来,数多くの報告がある。1991年にHAのH1受容体がクローニングされた後H2,H3,H4受容体遺伝子もクローン化された。欠損マウスの開発以前はHA機能は一般薬理学的手法で行われてきたが,渡辺武らによりH1,H2受容体遺伝子欠損マウスが初めて作製されると,HA研究に新たな展開が生じた1,2)。現在,H1,H2,H3,H4受容体とHA合成酵素であるHDCの遺伝子改変マウスが作製されており,報告されているHA関連遺伝子欠損マウスには,1)H1,H2,H3やH4受容体欠損マウス,2)H1/H2受容体ダブル欠損マウス,3)H1/H3受容体ダブル欠損マウス,4)H1/H2/H3受容体トリプル欠損マウス,5)ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)欠損マウスがあり,これらを用いた機能研究が活発に行われている。よってHA受容体欠損マウスの意義について述べる。
4.ペプチド オピオイド
オピオイド受容体の多様性と役割分担
著者: 中川貴之 , 佐藤公道
ページ範囲:P.446 - P.447
●オピオイド受容体の分類と構造,情報伝達
オピオイド受容体は主にμ,δおよびκの3タイプに分類され,1990年代前半にはそれぞれをコードする遺伝子がクローニングされた。1996年に,国際薬理学会受容体命名委員会(NC-IUPHAR)により,同定順にそれぞれOP3(μ),OP1(δ),OP2(κ)と改名されたが,多くの研究者に受け入れられず,現在では従来からのμ(あるいはMOP),δ(DOP),κ(KOP)が通常使用されている。また,オピオイド受容体との相同性から,既知のオピオイドには親和性を示さないノシセプチン/オルファニンFQ受容体(NOP)も同定されている。これらのオピオイド受容体はいずれもG蛋白質と共役する7回膜貫通型受容体(GPCR)で,基本的にはGi/o蛋白質と連関して,主にアデニル酸シクラーゼ活性の抑制,K+チャネルの開口促進,Ca2+チャネルの開口抑制といった細胞内応答を引き起こす。これらの作用により細胞膜は過分極し,神経伝達物質の遊離や神経の興奮性が低下し,多くの薬理作用が生じる。
近年,μオピオイド受容体の活性化がβγサブユニットを介したイノシトールリン脂質代謝回転の活性化を引き起こし,神経を直接活性化させることも報告されている。なお,当初,薬理学的にオピオイド受容体と推測されていたσ受容体は,オピオイド受容体拮抗薬で反応が抑制されず,さらにGPCRではなかったことから,現在ではオピオイド受容体ファミリーとは認められていない。また,β-エンドルフィン感受性のε受容体は未だ同定されておらず,[Met5]-エンケファリンに高親和性を持つζ受容体もGPCRではなく,他のオピオイド受容体との相同性は極めて低い。
Endomorphin-2の鎮痛特性
著者: 溝口広一 , 櫻田忍
ページ範囲:P.448 - P.449
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
endomorphin-2/μオピオイド受容体
Endomorphin-2(Tyr-Pro-Phe-Phe-NH2)は,1997年にZadinaらによってendomorphin-1(Tyr-Pro-Trp-Phe-NH2)と共に発見された内因性オピオイドペプチドである。Endomorphin-2およびendomorphin-1は,従来の古典的内因性オピオイドペプチドとは異なり,N末端にTyr-Gly-Gly-Pheといった共通構造を持たず,またC末端がアミド基で保護されているといった特徴を持つ。古典的内因性オピオイドペプチドが一般に複数のオピオイド受容体に高い親和性を示すのに対し,endomorphin-2およびendomorphin-1はμオピオイド受容体のみに対して極めて高い親和性を示し,δおよびκオピオイド受容体には全く親和性を示さない。また,脊髄や脳組織におけるそのGタンパク活性化作用は,μオピオイド受容体拮抗薬によってのみ抑制されることからも,そのμオピオイド受容体選択性が確認されている。
Endomorphin-2およびendomorphin-1の内活性(Gタンパク活性化作用)は,μオピオイド受容体の完全作動薬であるDAMGO([D-Ala2, N-MePhe4, Gly-ol5]enkephalin)の約6割であることから,両ペプチドはμオピオイド受容体の部分作動薬とされている。Endomorphin-2はendomorphin-1と共に,μオピオイド受容体作動薬に共通の種々の薬理作用を持つことから,内因性のμオピオイドペプチドであると一般に考えられているが,その産生遺伝子(あるいはその前駆体産生遺伝子)が未だ発見されていないことから,内因性オピオイドペプチドと認定するには時期尚早であるとする意見もある。
新しいNTI誘導体
著者: 長瀬博
ページ範囲:P.450 - P.451
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
nor-BNI/κオピオイド受容体
TRK-850,TRK-851/δオピオイド受容体
近年,オピオイド受容体がμ,δ,κの三つのタイプに分類され,われわれはそれぞれのタイプに選択性の高い拮抗薬を設計するため,その当時発見されていた内因性のオピオイドペプチドの構造よりメッセージ-アドレスの概念を見出した(図1)。この概念では,オピオイドは本来活性に関係するメッセージ部分とタイプ選択性に関係するアドレス部分から構成されるというものである。そして,アドレス部分の大きさによりμ,δ,κ受容体への選択性が決定されるというもので,μのアドレスが最も小さく,次がδ,最も大きなアドレスを有するものがκ受容体である。われわれはこの概念に基づきκ拮抗薬,nor-BNIとδ拮抗薬,NTIの設計・合成に成功した(図1)1)。
この二つの選択的拮抗薬は薬理学者のバイブルともいわれている「グッドマン・ギルマンの薬理書」のオピオイド受容体タイプ選択的リガンドの表に掲載され,世界中の研究者によりオピオイドの研究に使用されている2)。
新しいκオピオイド受容体アゴニスト
著者: 長瀬博
ページ範囲:P.452 - P.453
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
TRK-820(ナルフラフィン塩酸塩)/κオピオイド受容体
前項の新しいNTI誘導体の章で述べたように,われわれは三つのオピオイド受容体の中でκとδ受容体に選択性の高い拮抗薬(nor-BNIとNTI)を設計・合成した1)。ちょうどその頃,Portoghese教授などにより,開発されたμ受容体を不可逆的に拮抗するβ-FNAを用いてオピオイド受容体の中で薬物依存性に関与するタイプはμ受容体であるとの研究が報告された。その報告により,κ作動薬を依存性のない鎮痛薬として開発しようとする激烈な競争が開始された。まず,アップジョン社により開発されたU-50488Hが他社に先駆けて報告され,世界中の研究者はこぞってその類似体を研究開発した(図1)。
われわれは東レ医薬研究所において,U-50488Hの構造が真のオピオイド由来ではなく,「真のオピオイドとは内因性オピオイドの有するチロシン-グリシン部分構造を有するものである」との信念に基づき独自のκ作動薬を設計・合成した2)。設計にあたり,すでに開発したκ拮抗薬,nor-BNI(チロシン-グリシン部位を有している)から作動薬の設計をすることを考慮した。一般に,拮抗薬はその構造内にアクセサリー部位と呼ばれる脂溶性の部位を含み,作動薬はそのような部位を有しないことから,nor-BNIからアクセサリー部位を除く試みを行った(図2)。
鎮痛効果を持つピリミジンヌクレオシド誘導体
著者: 木村敏行 , 清水寛美 , 山本郁男
ページ範囲:P.454 - P.455
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ピリミジンヌクレオシドは,ピリミジン塩基の1位のNがリボースあるいはデオキシリボースの1位のCと結合した化合物(表参照)をさすが,核酸成分でもあり,加水分解によってシチジン,ウリジンおよびチミジンを生成する。これらピリミジンヌクレオシド研究は,これまで核酸代謝の制御を目的として制癌活性を有するヌクレオシド類の開発研究が主であったが,プリンヌクレオシドが持つ体温降下,血圧降下,抗アレルギー,鎮痛作用は知られてはいない。一方,ウリジンは断眠ラット脳幹より抽出された睡眠促進物質(SPS:sleep-promoting substance)であり,その脳内微量注入は自然睡眠を増強することが報告されている1)。
われわれはウリジンの塩基部分のウラシルがバルビツール酸骨格に類似していることから,催眠薬の開発を試みた。その過程でピリミジンヌクレオシド誘導体の催眠作用を見出し,これらが特異的に結合するウリジン受容体の存在を報告した2,3)。SPSの中には,Delta sleep-inducing peptide(DSIP)のように鎮痛効果を兼ね備えているペプチドもあるので,ウリジンを主体とする化合物も鎮痛効果を有する可能性がある。そこで,鎮痛検定法を用いて検討した結果,予想どおりピリミジンヌクレオシド誘導体における鎮痛効果を発見した4)。中でも催眠活性の強い
ブトルファノールの鎮痛効果とオピオイド受容体
著者: 井手聡一郎 , 南雅文 , 池田和隆
ページ範囲:P.456 - P.457
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
酒石酸ブトルファノール/オピオイド受容体
痛みは生体防御警告系として重要な役割を果たしているが,過剰な痛みや慢性的疼痛は患者の生活の質(QOL:Quality of life)を著しく低下させるため,現在では治療すべき疾患の一つとして認識されている。モルヒネをはじめとした各種オピオイド鎮痛薬は,1986年に世界保健機構(WHO)が,がん性疼痛を緩和することを目的として公表したWHO方式がん疼痛治療法で示されるWHO方式3段階除痛ラダーにおいて,第2段階から第3段階の疼痛治療に用いられている。また,オピオイド鎮痛薬はがん性疼痛のみならず他の激しい痛みを伴う疾患や術後の疼痛管理においても用いられている。
オピオイド系は,内因性オピオイドペプチドファミリーとμ,δ,κと名付けられた三種の受容体サブタイプとから成り立ち,鎮痛をはじめとして広範な生理機能の調節に関わっている。オピオイド鎮痛薬に関する研究においては,モルヒネやフェンタニルなどのμオピオイド受容体完全作動薬に関する研究が多くなされている一方で,本邦で臨床使用されている他のオピオイド鎮痛薬の多く,特にμオピオイド受容体部分作動薬であるオピオイド拮抗性鎮痛薬に関しては研究が少なく,未だにその作用機序や作用特性に不明瞭な点が多く残されたまま使用されている。
嗅球除去動物の行動異常とδオピオイド受容体
著者: 朝戸めぐみ , 大澤匡弘 , 亀井淳三
ページ範囲:P.458 - P.459
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
デシプラミン,SNC80/δオピオイド受容体
感情障害や不安障害といった機能性精神障害の病態は未だ明確には理解されていない。その原因として,脳の高次機能であるヒトの情動性を動物モデルに正しく反映させることが困難であることが挙げられる。一方で,嗅球摘出(olfactory bulbectomy:OB)動物では,新奇物質に対する攻撃性の増加やオープンフィールド上での活動性の亢進など衝動性を示唆する行動が認められる。したがって,嗅球摘出動物の示す種々の行動薬理学的解析およびその薬物応答性から,その異常行動が不安を伴った衝動性を反映している可能性も推測される。嗅球摘出ラットのうつ病モデルとしての妥当性については,嗅球摘出術によりモデルを作製するというその理論的必然性および攻撃性の亢進といったうつ病との症状の類似性の欠如から疑問視する意見もある。
しかしながら,OBラットに認められる神経化学的変化(脳内ノルアドレナリンやセロトニン含量の低下),神経内分泌学的変化(活動期のコルチコステロンの分泌過剰),神経免疫学的変化(マクロファージの活性化など)や性活動および食欲の低下などがうつ病患者の臨床症状と高い類似性を示すことが知られている1)。最近では核磁気共鳴画像(MRI)の検討により,OBラットの皮質,海馬,尾状核および扁桃体においてうつ病患者の組織学変化と同様な萎縮および脳室の拡大が認められることが報告されている2)。また,OBラットに認められる異常行動ならびに神経化学的変化は抗うつ薬の数週間の慢性投与によって改善されること,さらに重症うつ病患者の治療に有効とされている電気ショック負荷がOBラットの異常行動を改善することが明らかにされている。これらのことから,現在OBラットはうつ病の病因解明の研究手段として有力な動物モデルの一つと考えられる。
脊髄の虚血損傷とδオピオイド受容体アゴニストの髄腔内投与
著者: 堀内俊孝 , 川口昌彦 , 古家仁
ページ範囲:P.460 - P.461
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
SNC80/δオピオイド受容体
胸部および胸腹部大動脈手術後の対麻痺は,患者のQOLを著しく低下させるのみならず,術後の死亡率を増加させることが明らかになっている。術後対麻痺の主な原因は脊髄虚血とされており,脊髄の虚血耐性を高める薬剤についても多くの検討がなされてきた。δオピオイド受容体は動物の冬眠誘発に関連した受容体である1)。冬眠中の動物はエネルギー気質が非常に欠乏した状態でも生存できるということから,δオピオイド受容体が臓器保護に関与しているかもしれない。過去の報告では,δオピオイド受容体アゴニストが摘出臓器に対する保護効果を有する2)ことや,心臓の虚血耐性獲得効果を有する3)ことなどが示されている。中枢神経においても,ラット前脳虚血モデルでδオピオイド受容体が脳保護効果に関与する可能性について報告されている4)が,脊髄虚血に対する保護効果については報告されていなかった。われわれはラット脊髄虚血モデルにおいて,δオピオイド受容体アゴニストを虚血前に髄腔内投与することで,虚血後の下肢運動機能障害ならびに脊髄神経障害を軽減することを報告した5-6)ので,以下にその概要を記す。
μオピオイド受容体とモルヒネ抵抗性
著者: 徳山尚吾
ページ範囲:P.462 - P.463
●μオピオイド受容体を介した鎮痛作用の発現とその脱感作機構
オピオイド受容体は薬理学的な分類によってμ,δおよびκ受容体に大別される。いずれの受容体も7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。一般的に,モルヒネの作用部位であるμオピオイド受容体はアゴニスト刺激により受容体が活性化されると,百日咳毒素感受性のGタンパク質であるGi/Goを介して,アデニル酸シクラーゼの抑制,Ca2+チャネルの開口抑制およびK+チャネルの開口促進による抑制性の神経伝達を誘導することで鎮痛作用を発現する(図)。
μオピオイド受容体を介した中枢性鎮痛作用は,一次神経終末において,μオピオイド受容体の刺激によるサブスタンスPやカルシトニン遺伝子関連ペプチドおよびグルタミン酸などの痛覚伝達物質の遊離を抑制,あるいは脊髄後角神経において,直接の後シナプス抑制による上位中枢への痛覚伝達の遮断によって発現する。中脳水道周囲灰白質では,抑制性の神経であるγアミノ酪酸(GABA)神経系に存在するμオピオイド受容体に作用し,GABA神経系を抑制することで,これらの領域から脊髄に投射する下行性のセロトニンやノルアドレナリン神経系を間接的に活性化し,脊髄後角の痛覚伝達を遮断する。さらに,視床中継核,視床下部,大脳知覚領に存在するμオピオイド受容体を介して直接痛覚伝達を遮断し,鎮痛作用を発現する機構が知られている。
PETによる脳内σ1受容体の定量
著者: 坂田宗之 , 石渡喜一
ページ範囲:P.464 - P.465
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
11C-SA4503/σ1受容体
●σ1受容体とPET
σ受容体はオピオイド受容体のサブタイプとして存在すると考えられていたが,その後は多くの神経受容体とは異なった新規のタンパク質であることが明らかになった。少なくとも2種のサブタイプが存在し,中枢から末梢組織まで広く存在していている。近年の研究によれば,σ1受容体は主として小胞体上に存在する223アミノ酸からなる25kDaの膜2回通貫型のタンパク質であり,中枢神経系では神経細胞のほか,アストロサイト,オリゴデンドロサイト細胞にも発現する。
その機能としては,急性的にはイオンチャネルの活性を調整することで神経細胞の興奮性を調整し,慢性的には受容体発現の増加でシナプス,ミエリン形成の活性化を誘導することが明らかになってきた1)。Positron emission tomography(PET)は,生体内に投与した超短半減期のポジトロン核種で標識した放射性薬剤の動態を体外からPETカメラで計測し,薬剤の動態モデルに基づいた解析により,生体内の生化学的,生理学的情報を計測する。われわれはσ1受容体の選択的アゴニストのSA4503(1-〔3,4-dimethoxyphenethyl〕-4-〔3-phenylpropyl〕piperazine)の4-methoxy基を11C(半減期20.4分)で標識したリガンドにより,初めてPETによるヒト脳のσ1受容体の計測に成功した2)。
σ1受容体と海馬スライスの過分極誘発カチオン電流
著者: 田辺光男
ページ範囲:P.466 - P.467
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
フェンシクリジン(PCP),SKF10047,NE-100,リムカゾール/σ1受容体
過分極誘発カチオンチャネル(hyperpolarization-activated cation channels:以下HCNチャネル)は,心臓の洞房結節で最初にその存在が示されたが,現在では末梢組織から中枢神経系まで幅広く分布することが明らかとなっている。細胞が過分極すると活性化されて内向き電流を生じ,膜電位を脱分極方向に戻そうとする働きを担う。また,HCNチャネルは静止膜電位付近でも一部は開口しているため,細胞が脱分極すると閉じることによって外向き電流を生じ,膜電位を過分極方向へ戻そうと働く。中枢神経系では,HCNチャネルは静止膜電位の決定に寄与して細胞の興奮性に大きな影響を与えるだけではなく,樹状突起や神経終末にも存在して神経伝達の調節に対しても調節機能を有することが報告されている。そのため,HCNチャネル活性のわずかな変化が神経ネットワークに大きな影響を与える可能性があり,細胞の興奮性や神経伝達効率の変化を背景とするような中枢神経疾患とHCNチャネルとの関係も示唆されている。その例として,HCNチャネルはてんかん発作閾値や神経細胞の虚血に対する抵抗性に影響を与えることが報告されている。
本稿で取り上げるphencyclidine(PCP)には,精神神経症状を引き起こす他に,てんかん発作抑制作用や神経保護作用がある。PCPの薬理作用の多くは興奮性アミノ酸受容体NMDA受容体のPCP結合部位を介するNMDA受容体阻害作用に由来すると考えられているが,PCPはそれ以外にもK+チャネルやCa2+チャネル阻害作用などを有する。しかし,HCNチャネルに対する作用は詳細に検討されてはいなかった。また,PCPはσ受容体にも親和性があり,σ受容体リガンドのいくつかのものはPCPが阻害するK+チャネルに対しても阻害作用を示すことが報告されていることから,PCPの他にもσリガンドのSKF10047のHCNチャネルに対する作用も併せて検討した。
AT2受容体アゴニストの抗オピオイド効果とPGE2-EP3受容体
著者: 山田優子 , 大日向耕作 , 吉川正明
ページ範囲:P.468 - P.469
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ノボキニン,アンジオテンシンⅡ,PD123319/アンジオテンシン(AT2)受容体
レニンアンジオテンシン(RA)系は,血圧や体液量の調節機構として中心的な役割を担うことが古くから知られてきたが,近年,それ以外にも多様な作用を有することが明らかにされつつある。RA系の主要な生理活性物質であるアンジオテンシンⅡ(AngⅡ)には2種類の受容体サブタイプ(AT1およびAT2)が存在し,AT1受容体は血圧上昇,飲水促進,食塩摂取促進,下垂体ホルモン分泌などに関与し,AT2受容体は血圧降下および脳保護作用などを示すことが報告されている。また,RA系の全ての構成要素は末梢のみならず中枢神経系にも存在することが証明されている。
以前,内因性の抗オピオイド物質としてウシの脳から[Val5]-AngⅠと[Val5]-AngⅡが抽出されている。また,AngⅡの脳室内投与によりモルヒネの鎮痛作用が抑制されることがtail-pinch法を用いた検討により見出されており,AngⅡの抗オピオイド作用が示唆されている。しかし,AngⅡの抗オピオイド作用がAT1およびAT2のいずれの受容体を介しているかはこれまで不明であった。
カプサイシン受容体
著者: 富永真琴
ページ範囲:P.470 - P.471
痛みを惹起する侵害刺激は,温度刺激(熱刺激と冷刺激),化学刺激,機械刺激に大きく分けられ,侵害刺激を受容する陽イオンチャネルが報告されている。侵害刺激によって陽イオンが細胞内に流入し,神経細胞を脱分極させて電位作動性Na+チャネルの活性化から活動電位の発生をもたらすのである。
アルコール中毒症における内因性オピオイド作用系とドパミン作用系の相互作用
著者: 加藤英明
ページ範囲:P.472 - P.473
適度のアルコール摂取は心身ともにリラックスさせる効果があるが,一方で,アルコールは急性期のものから慢性的な摂取に伴う中毒症に至るまで多くの問題を有している。慢性的な摂取が起因する問題の根底には,多くの場合においてアルコール依存症が存在している。アルコール中毒症ともいえる依存症の発症機序の解明および治療法の確立は重要な課題であるため,アルコール依存症における内因性オピオイド作用系およびドパミン作用系の相互作用について概説する。
オレキシン
視床下部による自律機能の調節におけるオレキシンの役割
著者: 桑木共之
ページ範囲:P.474 - P.475
循環や呼吸などの自律機能のホメオスタシスは下部脳幹(橋・延髄)の神経機構で維持されている。実験動物の下部脳幹前端で脳を離断しても血圧や呼吸はほぼ正常に保たれ,動脈圧受容器反射や呼吸化学反射という基本的な反射にもほとんど影響しない。視床下部の役割は,心臓や肺など個々の臓器を支配するのではなく,複数臓器の調和した調節,体温・血糖・細胞外液量などの全身的変量の調節,ならびに外部環境への適応である。
オレキシン含有神経細胞の細胞体は視床下部のみに局在し,その軸索を中枢神経系内に広く投射させている(図)。この解剖学的特徴は,上述の視床下部による自律機能調節の役割をオレキシンが担っていることを予想させる。これを検証するために筆者らが最近行った実験結果を以下に紹介する。
タキキニン
ニューロキニン受容体
著者: 志水泰武
ページ範囲:P.476 - P.477
タキキニン類は,C末端側に共通のアミノ酸配列Phe-X-Gly-Leu-MetNH2(Xは疎水性アミノ酸)を持つペプチドである。10-11個のアミノ酸で構成されるsubstance P(SP),neurokinin A(NKA)およびneutokinin B(NKB)が,代表的なタキキニン類であるが,NKAのN末端側が延長した構造を持つneuropeptide Kやneuropeptide γ,主に非神経細胞で発現しているhemokinin-1とその延長型であるendokinin A-Dも,このファミリーに属している1-3)。SPやNKAがカプサイシン感受性感覚神経に存在していることは比較的よく知られているが,これらのペプチドは一部のカプサイシン非感受性神経や消化管内在神経系にも存在している。神経終末から放出されるタキキニン類は,三つの異なるニューロキニン受容体(NK1,NK2,NK3受容体)に作用し,多様な作用を引き起こす。
エンドキニンA,B,C,Dの構造と由来
著者: 西森利數
ページ範囲:P.478 - P.479
●タキキニンペプチドとその受容体
タキキニンペプチドとはサブスタンスP(SP)を代表とするペプチドの総称である。SPは11個のアミノ酸からなるタキキニンペプチドで,そのアミノ酸配列はArg-Pro-Lys-Pro-Gln-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-NH2であることが1971年に報告された。このタキキニンペプチドの構造的特徴は,C末端領域にPhe-X-Gly-Leu-Metのアミノ酸配列を有し,C末端がアミド化されNH2となっていることである。哺乳類におけるタキキニンペプチドとしては,1983年に新たにニューロキニンA(NKA)およびニューロキニンB(NKB)が報告され,合計3種類のタキキニンペプチドが知られようになった。NKAとNKBは10個のアミノ酸からなり,両者のC末端領域のXの位置にはPheの代わりにValが存在することが特徴である。従って,NKAとNKBの機能的差異はN末端領域に存在する5個のアミノ酸に由来といえる。近年,これら三つのペプチドを産生する遺伝子が同定され,SPとNKAはTAC1(PPTA)遺伝子にコードされ,NKBはTAC3(PPTB)遺伝子にコードされていることが明らかとなった。また,これら三つのペプチドは3種類の膜7回貫通代謝型受容体に結合し,SPはニューロキニン1受容体(NK1R),NKAはニューロキニン2受容体(NK2R),NKBはニューロキニン3受容体(NK3R)に対して高い親和性を示す。従って,哺乳動物においては3種類のタキキニンペプチドが存在し,それぞれのペプチドに対応する異なる受容体が存在し,ペプチドと受容体が1対1の関係にあることを示している。
セクレチン
セクレチン受容体
著者: 山形崇倫
ページ範囲:P.480 - P.481
セクレチンは27アミノ酸からなるペプチドで,中心的な機能は膵外分泌促進作用である。セクレチンは胃液や脂肪酸の刺激により十二指腸から血中に分泌され,膵の受容体に結合し,主に膵管上皮細胞からの重炭酸,水分,電解質などを含む膵液の分泌を促進し,胃酸を中和させる。また,膵の成長にも関与している。セクレチン受容体は膵臓に多く発現しているが,膵以外にも,胃,腎臓,脳など広範囲に発現していることが確認されており,膵液分泌以外にも多様な作用を有すると考えられる。
セクレチン受容体は7回膜貫通型受容体で,type Ⅱ G-protein-coupled receptor familyに属している。このファミリーには,VIP(vasoactive intestinal peptide)受容体(VPAC1とVPAC2),PACAP(pituitary adenylyl cyclase-activating peptides)受容体(PAC1),グルカゴン受容体およびglucagon-like peptide受容体(GLP1RとGLP2R)などが属している。セクレチンはこれらの受容体にも低親和性であるが結合して作用し,また,他の受容体のリガンド/ホルモンはセクレチン受容体にも結合する。セクレチン受容体遺伝子は染色体上2q14.1に局在し,全長84,110bp,13エクソンからなり,cDNAは1,323bp,転写産物は440aa,50-kDaである。主要な作用経路は,Gs heteromeric G-proteinとadenylate cyclaseを活性化し,cyclic AMPを上昇させ,リン酸化により蛋白活性を調節している。他にも,この受容体ファミリーは,ホスホリパーゼC活性化,細胞内Caイオン分泌,mitogen-activated protein(MAP)kinase活性化などの作用も示す。
腸ペプチド
腸ペプチドと神経管発達
著者: 蔡明倫 , 浅川明弘 , 乾明夫
ページ範囲:P.482 - P.483
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ペプチドYY(PYY),膵ポリペプチド(PP),神経ペプチド(NPY13-36)/Y1,Y2,Y4受容体
先天異常の頻度は約3-5%とされ,中でも中枢神経系の異常は頻度が高い。神経管欠損(NTD)として総称される無脳症,二分脊椎症などの原因は極めて多様であるため,その病態は未だ詳細には解明されていない。
消化管ペプチドPYYは,1980年にTatemotoらによってブタの小腸より単離された食欲抑制ペプチドである。グレリンは1999年,Kangawaらによって成長ホルモン分泌促進因子受容体の内因性リガンドとして胃より見出された食欲促進ペプチドである。われわれはこれまでに消化管ペプチドとその受容体が神経管の発達に影響を及ぼすことをマウスの実験において報告している。本稿では神経管の形成について概説した上で,消化管ペプチドと神経管発達の関係について述べる。
交感神経を介したニューロペプチドYによる骨吸収(骨溶解)の阻害
著者: 戸苅彰史 , 新井通次
ページ範囲:P.484 - P.485
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ニューロペプチドNPY/NPY(Y1)受容体
骨は常に破骨細胞による骨吸収(骨溶解)と骨芽細胞による骨形成からなる活発な代謝(リモデリング)を営み,その動的平衡のもとに骨塩量を一定に維持している。この破骨細胞と骨芽細胞の活動制御には,副甲状腺ホルモン(PTH),1,25(OH)2D3およびカルシトニンなど全身性のホルモンやサイトカインのようなオートクリン/パラクリン因子が関与している。また,近年,別の制御システムとして骨代謝調節における神経系の役割が注目されている1)。骨組織にはニューロペプチドY(NPY)などの神経ペプチドやノルアドレナリンを含有する神経線維が分布し,骨代謝に関わる細胞活性を制御している可能性が示されている。われわれは,ヒト骨膜由来骨芽細胞(SaM-1)およびヒト破骨細胞がアドレナリン受容体(α1B,α2Bおよびβ2-R)を恒常的に発現していることを認め,さらに,一連の研究により交感神経系の活動が骨吸収を促進している可能性を示している1-3)。
NPYは中枢および末梢神経系に広く分布し,中枢では主に摂食調節に関わり,交感神経系ではノルアドレナリンの共伝達物質として標的細胞の活動に関わっている。骨芽細胞ではNPY受容体(Y1-R)の発現も認められ,NPYが骨代謝制御に関与している可能性が示されている3,4)。ここでは,われわれの知見を踏まえて交感神経系による骨吸収促進とNPYの関わりについて解説する。
ノシセプチン
ノシセプチンとその受容体
著者: 中川貴之 , 佐藤公道
ページ範囲:P.486 - P.487
1990年代前半に,δ,μおよびκオピオイド受容体が相次いでクローニングされた。引き続き,ホモロジー検索からこれらオピオイド受容体と非常に高い相同性を有する未知の受容体がクローニングされ,opioid-receptor-like 1(ORL1)受容体と名付けられたが,既知のオピオイドリガンドにほとんど感受性を示さず,いわゆるorphan受容体として扱われた。1995年に,独立した二つのグループにより,このORL1受容体に対する内在性アゴニストとして17個のアミノ酸からなるペプチドが同定され,他のオピオイドペプチドと異なり痛覚過敏を引き起こすことからノシセプチン,あるいは,本ペプチドのN末端がフェニルアラニン(F),C末端がグルタミン(Q)であることから,オルファニンFQと命名された。今日では両者を統合し,ノシセプチン/オルファニンFQ(N/OFQ)と表記されることが多い(ここではN/OFQを用いる)。また,N/OFQの前駆体であるプレプロノシセプチンには,N/OFQの他,抗N/OFQ作用,抗アロディニア作用を示すノシスタチンなど,いくつかの活性ペプチドが含まれることも明らかにされた。
このように,ORL1受容体はorphan受容体ではなくなり,オピオイド受容体ファミリーの新たなメンバーとして認識されるようになった。ORL1受容体は他にノシセプチン受容体,オルファニンFQ受容体などいくつかの呼び名が混在したが,1996年,国際薬理学会受容体命名委員会(NC-IUPHAR)により,OP4受容体と統一された。しかしながら,この命名法は他のオピオイド受容体と同じく多くの研究者に受け入れられず,現在では,ノシセプチン/オルファニンFQ受容体(NOP)が通常使用されている。
5.脂質 リゾホスファチジン酸
神経障害性疼痛におけるリゾリン脂質のフィードフォワード性産生制御機構と病態生理機構
著者: 植田弘師 , 関野有紀
ページ範囲:P.490 - P.491
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
リゾホスファチジン酸/LPA1受容体
リン脂質(PLs)の2本のアシル基のうち1本が除かれたリン脂質をリゾリン脂質(LPLs)という。このリゾリン脂質は容易に生体膜から離れ,他の膜へと移行し,脂質メディエーターとしての機能を持つことが近年明らかとなってきている。生体内には様々なリゾリン脂質が存在するが,量的に最も多いのはリゾホスファチジルコリン(LPC)であり,哺乳類の血液中には約数100μMという高濃度のLPCが存在する。一方,生体内での存在量は少ないが,必要時に産生され強力な作用を発揮するリゾリン脂質群があり,その一つにリゾホスファチジン酸(LPA)がある。このLPAは細胞増殖性・運動性の亢進,抗アポトーシス作用,神経突起の退縮など多彩な作用が報告されている。また,LPA受容体,産生酵素のノックアウトマウス,遺伝病の解析から脳の形態形成,神経障害性疼痛,生殖,育毛,血管形成などに関与することが明らかとなってきており,このリゾリン脂質が個体レベルで重要な役割を担う生理活性脂質として注目されている。
CGRPを介したPGI2産生による炎症性応答の軽減
著者: 水谷明男 , 野口隆之
ページ範囲:P.492 - P.493
●CGRPとは?
生体に感染,外傷,手術やショックなどの侵襲が加わると,単球からtumor necrosis factor(TNF)-αなどの炎症性サイトカインが産生され,生体防御反応が作動するが,これらのサイトカイン産生が過剰になると,好中球が活性化される。この活性化好中球は後毛細血管細静脈において血管内皮細胞に接着し,血管内皮細胞が活性化され,血管内皮細胞障害を引き起こす。その結果,血管透過性が亢進し,微小循環障害が招来され,種々の臓器障害が生じる。
神経ペプチドは生体の恒常性を維持する上で,神経系,内分泌系および免疫系間の協調を介するという重要な役割を担っている。その一つであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)は中枢神経および末梢神経に存在し,中枢神経系,消化器系,呼吸器系および内分泌系に関連した生物活性を有する,主にカプサイシン感受性知覚神経などの侵害受容性知覚神経に存在するアミノ酸37個からなる神経ペプチドである。CGRPは強力な血管拡張作用を有し,エンドトキシン投与ラットや敗血症患者での血漿中のCGRP濃度の上昇が見られたことから,当初は敗血症性ショックに関与し,炎症反応を惹起すると考えられていた。しかし,知覚神経の化学的アブレーションにより炎症反応が増強することが報告され,さらに
プラスタグランジン
プロスタグランジンD2の新しい中枢作用―摂食促進作用および抗不安作用
著者: 大日向耕作 , 吉川正明
ページ範囲:P.494 - P.495
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
PGD2/プロスタノイドDP1受容体
プロスタグランジン(PG)D2は中枢神経系に最も多くに存在するPGで,これまでに睡眠誘発作用や体温低下作用を示すことが知られている1)。最近われわれは,PGD2が摂食促進作用および精神的ストレス緩和作用(抗不安作用)を示すことを見出した2,3)。本稿では,これらの新しい中枢作用を仲介するPGD2受容体サブタイプ,およびその下流で活性化される神経経路についての最新の知見を紹介する。
カンナビノイド
内因性カンナビノイドによるシナプス伝達の制御
著者: 谷村あさみ , 橋本谷祐輝 , 狩野方伸
ページ範囲:P.496 - P.497
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
内因性カンナビノイド/CB1受容体
大麻草由来の麻薬であるマリファナの摂取は,幻覚,鎮痛,食欲亢進,運動障害といった様々な中枢作用を引き起こす。これらの作用は,マリファナに含まれるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)が脳内にあるカンナビノイド受容体を活性化するためであると考えられている。Δ9-THCをリガンドとする受容体が脳内にあるということは,Δ9-THC類似体が生体内で産生されていることを示唆しており,1990年代に生体内で産生されカンナビノイド受容体を活性化する物質として内因性カンナビノイドが同定された。
2001年に,内因性カンナビノイドがシナプスにおいて逆行性に神経伝達効率を調節することが明らかとなって以来1,2),内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達機構の解明は飛躍的に進んできた。本稿では,最近の知見をはじめとした内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達とその役割について紹介する。
6.プリン
P2プリン受容体の種類と機能
著者: 井上和秀
ページ範囲:P.500 - P.501
P2プリン受容体はATP受容体とも呼ばれ,イオンチャネル型受容体(P2X)ファミリーとG蛋白質共役型受容体(P2Y)ファミリーに大別される。現在までに報告されているサブタイプは,それぞれ7種類(P2X1-P2X7)および8種類(P2Y1,P2Y2,P2Y4,P2Y6,P2Y11-P2Y14)である(図)。P2プリン受容体ファミリーは多様であるが,受容体を活性化するヌクレオチドの種類や濃度,またそれらの発現部位などがサブタイプ間で異なり,それぞれ独自の生体機能を担うと予想される。本編では,これらがどこに発現してどのような機能を担うのかについてトピックを中心に概説する。
ATP受容体チャネルP2X2の膜上発現密度依存性と膜電位依存性
著者: 藤原祐一郎 , , 中條浩一 , 山本友美 , 久保義弘
ページ範囲:P.502 - P.503
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ATP/ATP受容体(P2X2)
P2X2はチャネル型のATP受容体である。生体内では後根神経節などの感覚神経細胞に発現がみられ,痛みの知覚などに役割を果たし,また,中枢神経系ではアストロサイトなどに発現がみられ,神経細胞グリア細胞相互作用などに寄与していることが知られている。P2X2チャネルは1994年にJuliusの研究グループによってはじめてそのcDNAが単離され,現在までに二つの膜貫通部位を持つサブユニット3個が会合して構成されることが明らかにされている。われわれは,近年,アフリカツメガエル卵母細胞を
P2Y10受容体の進化的位置とリガンド
著者: 藤田典久
ページ範囲:P.504 - P.505
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
スフィンゴシン1リン酸,リゾホスファチジン酸/P2Y10受容体
●受容体の進化系統樹解析とP2Y10受容体
ヒトゲノムには約1000個のGタンパク質共役型受容体(GPCR)がコードされているが,その三分の一近くはいわゆる医薬品の分子標的となるGPCRである。GPCRは7回膜貫通型へリックス構造を基本骨格とするが,369種類のGPCRからそれぞれ七つの膜貫通部位を予測し,PHYLIPを利用した進化系統解析を行った1)。その結果,47種類のメンバーからなるP2Y受容体ファミリーが得られ,その中にはP2Y10受容体をはじめ,13種類のオーファンGPCRが含まれていた(図)。
P2Y10遺伝子はP2Y1受容体の遺伝子断片をプローブとしたホモロジークローニングにより単離されたが,いわゆる核酸受容体(P2Y1,2,4,6,11,12,13受容体)との相同性は低く(平均27%),進化の解析ツールによってはP2Y10受容体がP2Yファミリー外となる結果をもたらすこともある。事実,P2Y10受容体は核酸系リガンドによって活性化されることはない。
脊髄ミクログリアのP2プリン受容体と神経障害性疼痛
著者: 井上和秀 , 津田誠 , 齊藤秀俊
ページ範囲:P.506 - P.508
[用いられた物質/研究対象となった受容体]
ATP,TNP-ATP/プリンP2X4受容体
ARC69931/プリンP2Y12受容体
ATPは,細胞内でリン酸化基質として細胞機能を維持する一方,細胞外ではUTP,UDPなどの他のヌクレオチドとともに各種P2プリン受容体を介して細胞間情報伝達物質として機能する。モルヒネも効きがたい難治性疼痛の代表格,神経障害性疼痛は人類史上最悪の痛みといわれているが,その発症メカニズムとして,脊髄後角の活性化型ミクログリアに発現するP2プリン受容体の役割が注目されている。本編では,特にP2X4受容体とP2Y12受容体について概説する。
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50巻5号(1999年10月発行)
特集 病気の分子細胞生物学
50巻4号(1999年8月発行)
特集 トランスポーターの構造と機能協関
50巻3号(1999年6月発行)
特集 時間生物学の新たな展開
50巻2号(1999年4月発行)
特集 リソソーム:最近の研究
50巻1号(1999年2月発行)
連続座談会 脳を守る
49巻6号(1998年12月発行)
特集 発生・分化とホメオボックス遺伝子
49巻5号(1998年10月発行)
特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
49巻4号(1998年8月発行)
特集 プロテインキナーゼCの多様な機能
49巻3号(1998年6月発行)
特集 幹細胞研究の新展開
49巻2号(1998年4月発行)
特集 血管―新しい観点から
49巻1号(1998年2月発行)
特集 言語の脳科学
48巻6号(1997年12月発行)
特集 軸索誘導
48巻5号(1997年10月発行)
特集 受容体1997
48巻4号(1997年8月発行)
特集 マトリックス生物学の最前線
48巻3号(1997年6月発行)
特集 開口分泌のメカニズムにおける新しい展開
48巻2号(1997年4月発行)
特集 最近のMAPキナーゼ系
48巻1号(1997年2月発行)
特集 21世紀の脳科学
47巻6号(1996年12月発行)
特集 老化
47巻5号(1996年10月発行)
特集 器官―その新しい視点
47巻4号(1996年8月発行)
特集 エンドサイトーシス
47巻3号(1996年6月発行)
特集 細胞分化
47巻2号(1996年4月発行)
特集 カルシウム動態と細胞機能
47巻1号(1996年2月発行)
特集 神経科学の最前線
46巻6号(1995年12月発行)
特集 病態を変えたよく効く医薬
46巻5号(1995年10月発行)
特集 遺伝子・タンパク質のファミリー・スーパーファミリー
46巻4号(1995年8月発行)
特集 ストレス蛋白質
46巻3号(1995年6月発行)
特集 ライソゾーム
46巻2号(1995年4月発行)
特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩
46巻1号(1995年2月発行)
特集 神経科学の謎
45巻6号(1994年12月発行)
特集 ミトコンドリア
45巻5号(1994年10月発行)
特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
45巻4号(1994年8月発行)
特集 造血の機構
45巻3号(1994年6月発行)
特集 染色体
45巻2号(1994年4月発行)
特集 脳と分子生物学
45巻1号(1994年2月発行)
特集 グルコーストランスポーター
44巻6号(1993年12月発行)
特集 滑面小胞体をめぐる諸問題
44巻5号(1993年10月発行)
特集 現代医学・生物学の仮説・学説
44巻4号(1993年8月発行)
特集 細胞接着
44巻3号(1993年6月発行)
特集 カルシウムイオンを介した調節機構の新しい問題点
44巻2号(1993年4月発行)
特集 蛋白質の細胞内転送とその異常
44巻1号(1993年2月発行)
座談会 脳と遺伝子
43巻6号(1992年12月発行)
特集 成長因子受容体/最近の進歩
43巻5号(1992年10月発行)
特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
43巻4号(1992年8月発行)
特集 細胞機能とリン酸化
43巻3号(1992年6月発行)
特集 血管新生
43巻2号(1992年4月発行)
特集 大脳皮質発達の化学的側面
43巻1号(1992年2月発行)
特集 意識と脳
42巻6号(1991年12月発行)
特集 細胞活動の日周リズム
42巻5号(1991年10月発行)
特集 神経系に作用する薬物マニュアル
42巻4号(1991年8月発行)
特集 開口分泌の細胞内過程
42巻3号(1991年6月発行)
特集 ペルオキシソーム/最近の進歩
42巻2号(1991年4月発行)
特集 脳の移植と再生
42巻1号(1991年2月発行)
特集 脳と免疫
41巻6号(1990年12月発行)
特集 注目の実験モデル動物
41巻5号(1990年10月発行)
特集 LTPとLTD:その分子機構
41巻4号(1990年8月発行)
特集 New proteins
41巻3号(1990年6月発行)
特集 シナプスの形成と動態
41巻2号(1990年4月発行)
特集 細胞接着
41巻1号(1990年2月発行)
特集 発がんのメカニズム/最近の知見
40巻6号(1989年12月発行)
特集 ギャップ結合
40巻5号(1989年10月発行)
特集 核内蛋白質
40巻4号(1989年8月発行)
特集 研究室で役に立つ新しい試薬
40巻3号(1989年6月発行)
特集 細胞骨格異常
40巻2号(1989年4月発行)
特集 大脳/神経科学からのアプローチ
40巻1号(1989年2月発行)
特集 分子進化
39巻6号(1988年12月発行)
特集 細胞内における蛋白質局在化機構
39巻5号(1988年10月発行)
特集 細胞測定法マニュアル
39巻4号(1988年8月発行)
特集 細胞外マトリックス
39巻3号(1988年6月発行)
特集 肺の微細構造と機能
39巻2号(1988年4月発行)
特集 生体運動の分子機構/研究の発展
39巻1号(1988年2月発行)
特集 遺伝子疾患解析の発展
38巻6号(1987年12月発行)
-チャンネルの最近の動向
38巻5号(1987年10月発行)
特集 細胞生物学における免疫実験マニュアル
38巻4号(1987年8月発行)
特集 視覚初期過程の分子機構
38巻3号(1987年6月発行)
特集 人間の脳
38巻2号(1987年4月発行)
特集 体液カルシウムのホメオスタシス
38巻1号(1987年2月発行)
特集 医学におけるブレイクスルー/基礎研究からの挑戦
37巻6号(1986年12月発行)
特集 神経活性物質受容体と情報伝達
37巻5号(1986年10月発行)
特集 中間径フィラメント
37巻4号(1986年8月発行)
特集 細胞生物学実験マニュアル
37巻3号(1986年6月発行)
特集 脳の化学的トポグラフィー
37巻2号(1986年4月発行)
特集 血小板凝集
37巻1号(1986年2月発行)
特集 脳のモデル
36巻6号(1985年12月発行)
特集 脂肪組織
36巻5号(1985年10月発行)
特集 細胞分裂をめぐって
36巻4号(1985年8月発行)
特集 神経科学実験マニュアル
36巻3号(1985年6月発行)
特集 血管内皮細胞と微小循環
36巻2号(1985年4月発行)
特集 肝細胞と胆汁酸分泌
36巻1号(1985年2月発行)
特集 Transmembrane Control
35巻6号(1984年12月発行)
特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識
35巻5号(1984年10月発行)
特集 中枢神経系の再構築
35巻4号(1984年8月発行)
特集 ゲノムの構造
35巻3号(1984年6月発行)
特集 神経科学の仮説
35巻2号(1984年4月発行)
特集 哺乳類の初期発生
35巻1号(1984年2月発行)
特集 細胞生物学の現状と展望
34巻6号(1983年12月発行)
特集 蛋白質の代謝回転
34巻5号(1983年10月発行)
特集 受容・応答の膜分子論
34巻4号(1983年8月発行)
特集 コンピュータによる生物現象の再構成
34巻3号(1983年6月発行)
特集 細胞の極性
34巻2号(1983年4月発行)
特集 モノアミン系
34巻1号(1983年2月発行)
特集 腸管の吸収機構
33巻6号(1982年12月発行)
特集 低栄養と生体機能
33巻5号(1982年10月発行)
特集 成長因子
33巻4号(1982年8月発行)
特集 リン酸化
33巻3号(1982年6月発行)
特集 神経発生の基礎
33巻2号(1982年4月発行)
特集 細胞の寿命と老化
33巻1号(1982年2月発行)
特集 細胞核
32巻6号(1981年12月発行)
特集 筋小胞体研究の進歩
32巻5号(1981年10月発行)
特集 ペプチド作働性シナプス
32巻4号(1981年8月発行)
特集 膜の転送
32巻3号(1981年6月発行)
特集 リポプロテイン
32巻2号(1981年4月発行)
特集 チャネルの概念と実体
32巻1号(1981年2月発行)
特集 細胞骨格
31巻6号(1980年12月発行)
特集 大脳の機能局在
31巻5号(1980年10月発行)
特集 カルシウムイオン受容タンパク
31巻4号(1980年8月発行)
特集 化学浸透共役仮説
31巻3号(1980年6月発行)
特集 赤血球膜の分子構築
31巻2号(1980年4月発行)
特集 免疫系の情報識別
31巻1号(1980年2月発行)
特集 ゴルジ装置
30巻6号(1979年12月発行)
特集 細胞間コミニケーション
30巻5号(1979年10月発行)
特集 In vitro運動系
30巻4号(1979年8月発行)
輸送系の調節
30巻3号(1979年6月発行)
特集 網膜の構造と機能
30巻2号(1979年4月発行)
特集 神経伝達物質の同定
30巻1号(1979年2月発行)
特集 生物物理学の進歩—第6回国際生物物理学会議より
29巻6号(1978年12月発行)
特集 最近の神経科学から
29巻5号(1978年10月発行)
特集 下垂体:前葉
29巻4号(1978年8月発行)
特集 中枢のペプチド
29巻3号(1978年6月発行)
特集 心臓のリズム発生
29巻2号(1978年4月発行)
特集 腎機能
29巻1号(1978年2月発行)
特集 膜脂質の再検討
28巻6号(1977年12月発行)
特集 青斑核
28巻5号(1977年10月発行)
特集 小胞体
28巻4号(1977年8月発行)
特集 微小管の構造と機能
28巻3号(1977年6月発行)
特集 神経回路網と脳機能
28巻2号(1977年4月発行)
特集 生体の修復
28巻1号(1977年2月発行)
特集 生体の科学の現状と動向
27巻6号(1976年12月発行)
特集 松果体
27巻5号(1976年10月発行)
特集 遺伝マウス・ラット
27巻4号(1976年8月発行)
特集 形質発現における制御
27巻3号(1976年6月発行)
特集 生体と化学的環境
27巻2号(1976年4月発行)
特集 分泌腺
27巻1号(1976年2月発行)
特集 光受容
26巻6号(1975年12月発行)
特集 自律神経と平滑筋の再検討
26巻5号(1975年10月発行)
特集 脳のプログラミング
26巻4号(1975年8月発行)
特集 受精機構をめぐつて
26巻3号(1975年6月発行)
特集 細胞表面と免疫
26巻2号(1975年4月発行)
特集 感覚有毛細胞
26巻1号(1975年2月発行)
特集 体内のセンサー
25巻5号(1974年12月発行)
特集 生体膜—その基本的課題
25巻4号(1974年8月発行)
特集 伝達物質と受容物質
25巻3号(1974年6月発行)
特集 脳の高次機能へのアプローチ
25巻2号(1974年4月発行)
特集 筋細胞の分化
25巻1号(1974年2月発行)
特集 生体の科学 展望と夢
24巻6号(1973年12月発行)
24巻5号(1973年10月発行)
24巻4号(1973年8月発行)
24巻3号(1973年6月発行)
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24巻1号(1973年2月発行)
23巻6号(1972年12月発行)
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23巻4号(1972年8月発行)
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23巻2号(1972年4月発行)
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22巻6号(1971年12月発行)
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21巻7号(1970年12月発行)
21巻6号(1970年10月発行)
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特集 代謝と機能
21巻5号(1970年8月発行)
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20巻6号(1969年12月発行)
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19巻6号(1968年12月発行)
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17巻6号(1966年12月発行)
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16巻6号(1965年12月発行)
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15巻6号(1964年12月発行)
特集 生体膜その3
15巻5号(1964年10月発行)
特集 生体膜その2
15巻4号(1964年8月発行)
特集 生体膜その1
15巻3号(1964年6月発行)
特集 第13回日本生理科学連合シンポジウム
15巻2号(1964年4月発行)
15巻1号(1964年2月発行)
14巻6号(1963年12月発行)
特集 興奮收縮伝関
14巻5号(1963年10月発行)
14巻4号(1963年8月発行)
14巻3号(1963年6月発行)
14巻1号(1963年2月発行)
特集 第9回中枢神経系の生理学シンポジウム
14巻2号(1963年2月発行)
13巻6号(1962年12月発行)
13巻5号(1962年10月発行)
特集 生物々理—生理学生物々理若手グループ第1回ミーティングから
13巻4号(1962年8月発行)
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13巻2号(1962年4月発行)
Symposium on Permeability of Biological Membranes
13巻1号(1962年2月発行)
12巻6号(1961年12月発行)
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11巻6号(1960年12月発行)
Symposium On Active Transport
11巻5号(1960年10月発行)
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10巻6号(1959年12月発行)
10巻5号(1959年10月発行)
10巻4号(1959年8月発行)
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10巻1号(1959年2月発行)
8巻6号(1957年12月発行)
8巻5号(1957年10月発行)
特集 酵素と生物
8巻4号(1957年8月発行)
8巻3号(1957年6月発行)
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8巻1号(1957年2月発行)