文献詳細
文献概要
特集 伝達物質と受容体 1.アミノ酸 興奮性
AMPA受容体に対するスーパーオキサイドの選択的増強作用
著者: 竹内啓太1 吉井清哲1
所属機関: 1九州工業大学大学院生命体工学研究科脳情報専攻
ページ範囲:P.350 - P.351
文献購入ページに移動スーパーオキサイド/AMPA受容体,KA受容体,NMDA受容体,GABAA受容体,5HT3受容体
スーパーオキサイド(SO)は酸化力の強い,生体膜不透過性の陰イオンである。生体ではNADPHなどが生成し,特異的分解酵素,スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)が分解する。SOは強力な酸化作用をもつ他の活性酸素種とともに,生体防御に利用される。また,細胞内および細胞間情報伝達物質としての利用,発ガンをはじめ多様な疾患や老化への関与が示唆されている。活性酸素種は電位依存性K+チャネル電流を抑制1)することが知られている。しかし,これまでSOの神経伝達物質受容体チャネルに対する作用は知られていなかった。本稿では,グルタミン酸受容体サブタイプ,AMPA受容体チャネル電流に対するSOの修飾作用2)を紹介する。
最初に,AMPA受容体チャネルに対するSOの作用を発見するに至った経過を簡単に説明する。生体膜不透過性の蛍光色素ルシファーイエローCH(LY)は,電気生理学的に測定した細胞を同定するため昔から利用されてきた。われわれもLYを含む電極内液を用い,ホールセルクランプ法で味蕾細胞の電気生理学的性質と形態の関連を調べた。このとき,露光されたLYが電位依存性Na+チャネルの不活性化を不可逆的に阻害することを発見した3)。不活性化の阻害作用はLY濃度,露光強度および露光時間に依存した。ジチオスレイトール(DTT,還元剤)がこの阻害作用を打ち消すこと,単一Na+チャネルの開口時間が増大したことから,何らかのラジカル種がNa+チャネルを修飾すると考えた。その後,SOD存在下では不活性化の阻害が起きないこと,加熱により不活性化したSODには阻害作用がないことなどから,阻害活性がSOであることを明らかにした4)。また,Na+チャネルに加え,SOは遅延整流性K+チャネルおよび内向き整流性K+チャネル電流を多少増大させたが,外向き整流性陰イオンチャネル電流およびHVA-Ca2+チャネル電流を変化させないことも明らかにした。
参考文献
掲載誌情報