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文献概要
特集 伝達物質と受容体 1.アミノ酸 興奮性
NR2Bサブユニット含有NMDA受容体のアンタゴニストによるL-LTPの誘発
著者: 大西新1 佐治真理1 鈴木信之1
所属機関: 1北里大学医療系大学院脳機能科学
ページ範囲:P.362 - P.363
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●背 景
海馬におけるシナプス可塑性は記憶・学習の神経基盤と考えられている。特にシナプス伝達効率の長期増強(Long-term potentiation:LTP)はげっ歯類の実験によって空間記憶の成立に深く関与していることが示されている。LTPは二つのフェーズがあり,シナプス伝達効率の増強が1時間前後継続維持する初期LTP(early phase LTP:E-LTP)と3時間以上継続維持する後期LTP(late phase LTP:L-LTP)に分けられる。L-LTPは蛋白合成阻害剤によってブロックされることから,L-LTPの成立の際に転写因子であるサイクリックAMP応答因子結合蛋白質(cAMP-responsive element binding protein:CREB)のリン酸化を伴う蛋白質の合成が起こっていると考えられる。ラット海馬CA1領域において高頻度電気刺激によって誘発されるLTPの成立には,グルタミン酸受容体サブタイプであるNMDA受容体の活性化が必須であることが明かになっている。
しかし,海馬スライス標本でNMDA(NMDA受容体のフルアゴニスト)によってNMDA受容体を刺激してもLTPは成立しないことが報告されている。NMDA受容体はヘテロ4量体で二つのNR1サブユニットと二つのNR2サブユニットにより構成され,成熟ラット海馬ではNR1とNR2A,NR2Bサブユニットから主に構成される。近年,海馬においてグルタミン酸によってグルタミン酸受容体を刺激するとCREBのリン酸化が阻害されるが,NR2Bサブユニット含有NMDA受容体を遮断することによってその阻害が起こらないことが報告された。このことから,われわれは,NR2Bサブユニット含有NMDA受容体を遮断した状態でNMDA受容体を刺激すればL-LTPが誘導できるのではないか,と仮説を立て実証実験を行った。
参考文献
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