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文献詳細

雑誌文献

生体の科学60巻5号

2009年10月発行

文献概要

特集 伝達物質と受容体 2.アセチルコリン

アセチルコリン受容体のイオン作動性・代謝作動性の働き

著者: 赤池昭紀1

所属機関: 1京都大学大学院薬学研究科薬品作用解析学分野

ページ範囲:P.400 - P.401

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 アセチルコリン(ACh)は生体内の多くの器官で重要な生理機能を担っており,その受容体はアゴニスト作動性陽イオンチャネルであるニコチン受容体と,代謝型受容体であるムスカリン受容体に大別される。ニコチン受容体は4回膜貫通型(4TM)サブユニットが5量体を形成し,AChを含むアゴニストが結合するαサブユニット(α1~α10)により受容体サブタイプの分類がなされている。骨格筋に発現する受容体サブタイプはα1,自律神経節に発現する主要なサブタイプはα3,中枢神経系に高発現するのはα4およびα7受容体サブタイプである。ニコチン受容体イオンチャネル複合体の多くはNaとKに対して比較的高い透過性を示すが,α7受容体はCa2+に対して高い透過性を示す。一方,ムスカリン受容体は典型的な7回膜貫通型(7TM)受容体であり,M1~M5の五つのサブタイプに分類される。M1,M3,M5はG蛋白のうちGq/11と連関しており,M2,M4はGi/oと連関する。M1,M4,M5は主として神経系に発現し,M2は心臓,M3は心臓以外の副交感神経効果器に発現する。AChが血管内皮細胞のM3受容体を介して一酸化窒素合成酵素を活性化し,内皮で産生されたNOが血管平滑筋弛緩作用を発現するというメカニズムは,ガス状生理活性物質としてのNOの発見の端緒となったことで知られる。

 ニコチン受容体はAChの神経興奮作用,神経伝達物質遊離作用に関わっており,イオンチャネル型受容体という性質上,AChの比較的短時間の作用を伝えると考えられてきた。しかし,長期間のニコチン受容体刺激が神経保護作用を発現するなどの単純な脱分極作用だけでは説明できない現象が発見され,種々の細胞内シグナル伝達系を駆動することを示唆する知見が集積されてきた。さらに,アミロイドβ蛋白がα7受容体に結合することなどアルツハイマー病への関与も示唆されている。

参考文献

644:181-187, 1994
276:13541-13546, 2001
51:474-486, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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