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特集 伝達物質と受容体 4.ペプチド オピオイド
オピオイド受容体の多様性と役割分担
著者: 中川貴之1 佐藤公道2
所属機関: 1京都大学大学院薬学研究科生体機能解析学分野 2安田女子大学薬学部
ページ範囲:P.446 - P.447
文献購入ページに移動オピオイド受容体は主にμ,δおよびκの3タイプに分類され,1990年代前半にはそれぞれをコードする遺伝子がクローニングされた。1996年に,国際薬理学会受容体命名委員会(NC-IUPHAR)により,同定順にそれぞれOP3(μ),OP1(δ),OP2(κ)と改名されたが,多くの研究者に受け入れられず,現在では従来からのμ(あるいはMOP),δ(DOP),κ(KOP)が通常使用されている。また,オピオイド受容体との相同性から,既知のオピオイドには親和性を示さないノシセプチン/オルファニンFQ受容体(NOP)も同定されている。これらのオピオイド受容体はいずれもG蛋白質と共役する7回膜貫通型受容体(GPCR)で,基本的にはGi/o蛋白質と連関して,主にアデニル酸シクラーゼ活性の抑制,K+チャネルの開口促進,Ca2+チャネルの開口抑制といった細胞内応答を引き起こす。これらの作用により細胞膜は過分極し,神経伝達物質の遊離や神経の興奮性が低下し,多くの薬理作用が生じる。
近年,μオピオイド受容体の活性化がβγサブユニットを介したイノシトールリン脂質代謝回転の活性化を引き起こし,神経を直接活性化させることも報告されている。なお,当初,薬理学的にオピオイド受容体と推測されていたσ受容体は,オピオイド受容体拮抗薬で反応が抑制されず,さらにGPCRではなかったことから,現在ではオピオイド受容体ファミリーとは認められていない。また,β-エンドルフィン感受性のε受容体は未だ同定されておらず,[Met5]-エンケファリンに高親和性を持つζ受容体もGPCRではなく,他のオピオイド受容体との相同性は極めて低い。
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