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文献詳細

雑誌文献

生体の科学60巻5号

2009年10月発行

文献概要

特集 伝達物質と受容体 4.ペプチド オピオイド

新しいκオピオイド受容体アゴニスト

著者: 長瀬博1

所属機関: 1北里大学薬学部生命薬化学教室

ページ範囲:P.452 - P.453

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 [用いられた物質/研究対象となった受容体]

 TRK-820(ナルフラフィン塩酸塩)/κオピオイド受容体


 前項の新しいNTI誘導体の章で述べたように,われわれは三つのオピオイド受容体の中でκとδ受容体に選択性の高い拮抗薬(nor-BNIとNTI)を設計・合成した1)。ちょうどその頃,Portoghese教授などにより,開発されたμ受容体を不可逆的に拮抗するβ-FNAを用いてオピオイド受容体の中で薬物依存性に関与するタイプはμ受容体であるとの研究が報告された。その報告により,κ作動薬を依存性のない鎮痛薬として開発しようとする激烈な競争が開始された。まず,アップジョン社により開発されたU-50488Hが他社に先駆けて報告され,世界中の研究者はこぞってその類似体を研究開発した(図1)。

 われわれは東レ医薬研究所において,U-50488Hの構造が真のオピオイド由来ではなく,「真のオピオイドとは内因性オピオイドの有するチロシン-グリシン部分構造を有するものである」との信念に基づき独自のκ作動薬を設計・合成した2)。設計にあたり,すでに開発したκ拮抗薬,nor-BNI(チロシン-グリシン部位を有している)から作動薬の設計をすることを考慮した。一般に,拮抗薬はその構造内にアクセサリー部位と呼ばれる脂溶性の部位を含み,作動薬はそのような部位を有しないことから,nor-BNIからアクセサリー部位を除く試みを行った(図2)。

参考文献

1)長瀬博:生体の科学 60:450-451,2009
2)長瀬博,山本尚:創薬―薬物分子設計のコツ,pp 241-280,エルゼビアサイエンス・ミクス,東京,2001
46:366-369, 1998
16:9188-9201, 2008
453:259-264, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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