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文献詳細

雑誌文献

生体の科学60巻5号

2009年10月発行

文献概要

特集 伝達物質と受容体 4.ペプチド オピオイド

嗅球除去動物の行動異常とδオピオイド受容体

著者: 朝戸めぐみ1 大澤匡弘1 亀井淳三1

所属機関: 1星薬科大学薬物治療学教室

ページ範囲:P.458 - P.459

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 [用いられた物質/研究対象となった受容体]

 デシプラミン,SNC80/δオピオイド受容体


 感情障害や不安障害といった機能性精神障害の病態は未だ明確には理解されていない。その原因として,脳の高次機能であるヒトの情動性を動物モデルに正しく反映させることが困難であることが挙げられる。一方で,嗅球摘出(olfactory bulbectomy:OB)動物では,新奇物質に対する攻撃性の増加やオープンフィールド上での活動性の亢進など衝動性を示唆する行動が認められる。したがって,嗅球摘出動物の示す種々の行動薬理学的解析およびその薬物応答性から,その異常行動が不安を伴った衝動性を反映している可能性も推測される。嗅球摘出ラットのうつ病モデルとしての妥当性については,嗅球摘出術によりモデルを作製するというその理論的必然性および攻撃性の亢進といったうつ病との症状の類似性の欠如から疑問視する意見もある。

 しかしながら,OBラットに認められる神経化学的変化(脳内ノルアドレナリンやセロトニン含量の低下),神経内分泌学的変化(活動期のコルチコステロンの分泌過剰),神経免疫学的変化(マクロファージの活性化など)や性活動および食欲の低下などがうつ病患者の臨床症状と高い類似性を示すことが知られている1)。最近では核磁気共鳴画像(MRI)の検討により,OBラットの皮質,海馬,尾状核および扁桃体においてうつ病患者の組織学変化と同様な萎縮および脳室の拡大が認められることが報告されている2)。また,OBラットに認められる異常行動ならびに神経化学的変化は抗うつ薬の数週間の慢性投与によって改善されること,さらに重症うつ病患者の治療に有効とされている電気ショック負荷がOBラットの異常行動を改善することが明らかにされている。これらのことから,現在OBラットはうつ病の病因解明の研究手段として有力な動物モデルの一つと考えられる。

参考文献

74:299-315, 1997
879:193-199, 2000
3)五味田裕他:日薬理誌 82:267-292,1983
1208:160-169, 2008
587:181-185, 1992

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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