特集 伝達物質と受容体
4.ペプチド ノシセプチン
ノシセプチンとその受容体
著者:
中川貴之1
佐藤公道2
所属機関:
1京都大学大学院薬学研究科生体機能解析学分野
2安田女子大学薬学部
ページ範囲:P.486 - P.487
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1990年代前半に,δ,μおよびκオピオイド受容体が相次いでクローニングされた。引き続き,ホモロジー検索からこれらオピオイド受容体と非常に高い相同性を有する未知の受容体がクローニングされ,opioid-receptor-like 1(ORL1)受容体と名付けられたが,既知のオピオイドリガンドにほとんど感受性を示さず,いわゆるorphan受容体として扱われた。1995年に,独立した二つのグループにより,このORL1受容体に対する内在性アゴニストとして17個のアミノ酸からなるペプチドが同定され,他のオピオイドペプチドと異なり痛覚過敏を引き起こすことからノシセプチン,あるいは,本ペプチドのN末端がフェニルアラニン(F),C末端がグルタミン(Q)であることから,オルファニンFQと命名された。今日では両者を統合し,ノシセプチン/オルファニンFQ(N/OFQ)と表記されることが多い(ここではN/OFQを用いる)。また,N/OFQの前駆体であるプレプロノシセプチンには,N/OFQの他,抗N/OFQ作用,抗アロディニア作用を示すノシスタチンなど,いくつかの活性ペプチドが含まれることも明らかにされた。
このように,ORL1受容体はorphan受容体ではなくなり,オピオイド受容体ファミリーの新たなメンバーとして認識されるようになった。ORL1受容体は他にノシセプチン受容体,オルファニンFQ受容体などいくつかの呼び名が混在したが,1996年,国際薬理学会受容体命名委員会(NC-IUPHAR)により,OP4受容体と統一された。しかしながら,この命名法は他のオピオイド受容体と同じく多くの研究者に受け入れられず,現在では,ノシセプチン/オルファニンFQ受容体(NOP)が通常使用されている。