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文献詳細

雑誌文献

生体の科学60巻5号

2009年10月発行

文献概要

特集 伝達物質と受容体 5.脂質 リゾホスファチジン酸

CGRPを介したPGI2産生による炎症性応答の軽減

著者: 水谷明男1 野口隆之1

所属機関: 1大分大学医学部麻酔学教室

ページ範囲:P.492 - P.493

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 ●CGRPとは?

 生体に感染,外傷,手術やショックなどの侵襲が加わると,単球からtumor necrosis factor(TNF)-αなどの炎症性サイトカインが産生され,生体防御反応が作動するが,これらのサイトカイン産生が過剰になると,好中球が活性化される。この活性化好中球は後毛細血管細静脈において血管内皮細胞に接着し,血管内皮細胞が活性化され,血管内皮細胞障害を引き起こす。その結果,血管透過性が亢進し,微小循環障害が招来され,種々の臓器障害が生じる。

 神経ペプチドは生体の恒常性を維持する上で,神経系,内分泌系および免疫系間の協調を介するという重要な役割を担っている。その一つであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP)は中枢神経および末梢神経に存在し,中枢神経系,消化器系,呼吸器系および内分泌系に関連した生物活性を有する,主にカプサイシン感受性知覚神経などの侵害受容性知覚神経に存在するアミノ酸37個からなる神経ペプチドである。CGRPは強力な血管拡張作用を有し,エンドトキシン投与ラットや敗血症患者での血漿中のCGRP濃度の上昇が見られたことから,当初は敗血症性ショックに関与し,炎症反応を惹起すると考えられていた。しかし,知覚神経の化学的アブレーションにより炎症反応が増強することが報告され,さらにin vitroで,CGRPにはマクロファージのnuclear factor-kappa B(NF-κB)活性化抑制によりTNF-α産生抑制作用も有することが報告された。これらより,CGRPには局所の炎症反応を制御する可能性があることが見出された。さらに,CGRPを含有する神経は細動脈を支配し,そこでは神経終末が血管平滑筋層に及んでいることより,CGRPは微小循環を制御する可能性がある。

参考文献

42(3):147-153, 1994
13(19):2241-2251, 2006
110(2):361-369, 2009
93(1):48-56, 2005
101(8):3029-3036, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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