特集 ユビキチン化による生体機能の調節
Hedgehogシグナル伝達経路活性化によるユビキチン化を介したp53の分解亢進の意義
著者:
阿部芳憲1
田中信之1
所属機関:
1日本医科大学老人病研究所免疫部門
ページ範囲:P.541 - P.545
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Hedgehog(Hh)シグナル伝達経路は個体発生時の器官形成と,成体内にわずかに存在する幹細胞の維持に関わっている。その一方で,Hhシグナル伝達分子の遺伝子変異や発現量の変化によるHh経路の恒常的活性化が皮膚の基底細胞癌,肺癌,胃癌など,様々な癌の発症に関与していることが明らかになっていることから,新規抗癌剤開発の標的としても注目されている。
われわれは,正常な細胞が癌化へと向かう分子メカニズムを解明する過程で,Hhシグナル伝達経路が活性化すると細胞増殖能が亢進すると同時に癌抑制因子p53のユビキチン化を介した分解が促進することを見出した1)。さらにわれわれの研究成果から,Hh経路異常による細胞の癌化機構だけでなく,p53遺伝子が正常な段階で細胞が癌化に向かう時,p53による排除機構をどのようにすり抜けるかにという問いに対し,新しい知見を提唱できたものと考えている。本稿では,われわれが見出したHh経路活性化によるp53抑制機構を紹介し,この機構のHh経路の恒常的活性化と細胞の癌化および個体発生における意義,および今後の展望について述べる。