icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学60巻6号

2009年12月発行

文献概要

特集 ユビキチン化による生体機能の調節

造血幹細胞の維持へのユビキチン-プロテオソーム系の関与

著者: 瀧原義宏1

所属機関: 1広島大学原爆放射線医科学研究所幹細胞機能学研究分野

ページ範囲:P.563 - P.569

文献購入ページに移動
 トロント大学オンタリオ癌研究所におけるMcCullochらによるCFU-Sの発見を基に,機能的側面から造血幹細胞の概念が確立されてきた1)。造血幹細胞は,自己複製能とともに十数種の成熟血球細胞を生み出すことのできる多分化能を合わせ持った細胞と定義され,移植することによって造血組織を再構築し,長期に亘って全ての成熟血球成分を生み出すことができる。そして,多分に概念的かつ仮想的な造血幹細胞の存在を基にヒトに対して造血幹細胞移植が実施され始め,早くも50年以上が経過したが,輝かしい臨床成果を挙げている。

 近年,細胞ソーティング技術の発展に伴って,一つの造血幹細胞からも造血の再構築が可能であることが示され,その存在が機能的側面のみならず,実体を伴った細胞として同定可能となってきた。造血幹細胞は幹細胞研究の中でもっとも古い歴史を有する幹細胞の一つであり,再生医療のプロトタイプともいえる造血幹細胞移植療法は医療としてすでに確立している現状である。相次ぐ各種造血サイトカインの同定とそのシグナル伝達機構の解明によって,造血を支持する分子基盤の理解に関しては画期的な進歩が成し遂げられてきた。しかし,造血幹細胞の同定方法が最近までretrospectiveなアッセイ系に依存せざるを得なかったことや,造血細胞中における造血幹細胞の頻度が低くex vivoで安定に増幅することができないこと等々の理由によって,造血幹細胞の活性がどのような分子基盤によって支持されているのかについては限られた知見しか得られていなかった。

参考文献

16:822-832, 1962
84:212-218, 1993
223:226-228, 1996
95:2577-2585, 2000
86:1168-1172, 1989
93:1595-1597, 2008
110:1022-1024, 2007
110:1004-1012, 2007
460:904-908, 2009
21:7-17, 2004
277:8033-8040, 2002
105:226-232, 2005
143:3590-3603, 2002
22:992-997, 2008
22:960-963, 2008
12:3872-3881, 1998
202:169-179, 2005
99:479-487, 2002
99:95-101, 2002
1:685-697, 2007
18:2747-2763, 2004
448:445-451, 2007
22:986-991, 2008
205:1395-1408, 2008
22:1107-1109, 2008
443:590-593, 2006
6:1003-1009, 2004
22:2496-2506, 2008
107:4291-4299, 2006
64:8152-8155, 2004
303:1371-1374, 2004
22:6057-6067, 2003
22:383-394, 2006
22:4997-5005, 2002
110:2704-2707, 2007
112:320-329, 2008
287:1804-1808, 2000
195:759-770, 2002
39)瀧原義宏:細胞工学 23:74-80,2004
87:25-34, 2008
41)瀧原義宏:細胞工学 28:29-33,2009
138:885-897, 2009
423:302-305, 2003
21:525-530, 2007
105:10396-10401, 2008
29:5775-5788, 2009
19:1723-1734, 2005
427:749-753, 2004
427:745-749, 2004
103:13074-13079, 2006
461:114-119, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?