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特集 脳科学のモデル実験動物
トランスジェニックマウスを使った記憶学習の精緻な理解に向けて
著者: 中沢一俊1
所属機関: 1National Institute of Mental Health(NIMH)
ページ範囲:P.11 - P.16
文献購入ページに移動 ヒトを含めた動物が学習し,その結果を記憶することは脳のどこでどのように起きているのだろうか。この根源的な問いに答えるためには,記憶にその持続時間と記憶内容に応じて様々な種類があることに留意して研究する必要がある。
まず,記憶は短期記憶と長期記憶の二つに分けられる。その長期記憶の研究は,側頭葉内側部の両側切除術を受けた患者H. M. の症例(1957年)から,意識上にのぼる日常生活の長期記憶(宣言的記憶または陳述記憶と呼ばれる)は側頭葉内側部で形成され,しばらく貯蔵されることが示された。これは記憶のエングラム(痕跡)が局在することを示す有力な証拠となった。またこの症例では,短期記憶や手続き記憶は障害されないことから,記憶はその内容によって脳の異なる場所に貯蔵されることが示された。それ以来,脳の特定の部位に障害のある患者を用いたり,脳の特定の部位を薬理学的に破壊した動物で行動実験を行ったりして,どのような長期記憶が脳のどこの部位で形成貯蔵されるかが盛んに研究された。
まず,記憶は短期記憶と長期記憶の二つに分けられる。その長期記憶の研究は,側頭葉内側部の両側切除術を受けた患者H. M. の症例(1957年)から,意識上にのぼる日常生活の長期記憶(宣言的記憶または陳述記憶と呼ばれる)は側頭葉内側部で形成され,しばらく貯蔵されることが示された。これは記憶のエングラム(痕跡)が局在することを示す有力な証拠となった。またこの症例では,短期記憶や手続き記憶は障害されないことから,記憶はその内容によって脳の異なる場所に貯蔵されることが示された。それ以来,脳の特定の部位に障害のある患者を用いたり,脳の特定の部位を薬理学的に破壊した動物で行動実験を行ったりして,どのような長期記憶が脳のどこの部位で形成貯蔵されるかが盛んに研究された。
参考文献
1)櫻井芳雄:海馬と記憶.記憶と脳―過去・現在・未来をつなぐ脳のメカニズム,サイエンス社,東京,2002
2)中沢一俊:記憶.認識と行動の脳科学,東京大学出版会,東京,2008
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(in press)
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