文献詳細
文献概要
特集 脳科学のモデル実験動物
高次脳機能の解明と精神・神経疾患の克服のためのサルモデル
著者: 高田昌彦1 井上謙一1
所属機関: 1京都大学 霊長類研究所 分子生理研究部門 統合脳システム分野
ページ範囲:P.53 - P.58
文献購入ページに移動他方,サル類は侵襲的な実験に使用される動物の中で進化的に最もヒトに近縁であり,身体の構造や機能もヒトに類似しているため,医学・生命科学の研究にきわめて重要な役割を果たしている。例えば,エイズウイルスや肝炎ウイルスなど,サル類でのみ感染が成立するような感染症の病因を解明し,治療法や予防法を開発する上でサル類を用いた実験研究は欠くことができない。また,サル類,特にマカク属は高度な認知課題を学習・遂行する能力に優れている。事実,マカク属に分類されるニホンザルやアカゲザル(以下,サルと総称する)では感覚機能や運動機能だけでなく,学習・記憶や認知などのさまざまな高次脳機能や,それらを支える神経回路に関する解剖学的,生理学的知見がかなり集積されている。したがって,高次脳機能の解明とその障害を引き起こす精神・神経疾患の病態解明,さらに画期的な治療法の確立にもサルの実験的利用は欠かせない。
参考文献
掲載誌情報