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文献詳細

雑誌文献

生体の科学61巻1号

2010年02月発行

文献概要

特集 脳科学のモデル実験動物

発達障害ヒト型モデルマウス

著者: 内匠透1

所属機関: 1広島大学 大学院医歯薬学総合研究科 探索医科学講座 統合バイオ研究室

ページ範囲:P.65 - P.70

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 自閉症(autism)は,1)社会的相互作用の障害,2)社会的コミュニケーションの障害,および3)限定的,反復的,常同的な行動,興味,活動に代表される広汎性発達障害(pervasive developmental disorders:PDD)である1)。小児の代表的精神行動異常疾患で,半年から1年までには症状がみられ遅くとも3歳までには診断がつくが,その症状は生涯にわたる。現在はアスペルガー症候群(Asperger syndrome)やレット症候群(Rett syndrome)なども含む自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorders:ASD)として広く社会に知られるようになった。米国の児童精神科医であるLeo Kannerが1943年に初めて報告して以来,これまでは1000人あたり数人の発症頻度といわれてきたが,昨今では上述の疾患概念の広範化,医師を含めた社会の認識度の上昇もあり,統計によっては,1%に近いものも現れてきた。原因としては,他の精神疾患や複合疾患同様,環境要因も示唆されているが,勿論遺伝的要素も重要になってきている。例えば,一卵性双生児の研究では,発症の一致率が60~90%(ASDの場合)以上と,統合失調症や躁鬱病といった他の精神疾患に比べて高い割合が報告され,疾患の原因として遺伝的関与が強く示唆されている。現在では,自閉症は脳の発達障害であると考えられている2,3)

 言語の障害に代表される上記の精神行動異常を生物学的に解析することは困難と考えられ,特に動物モデルは難しいものと予想されていた。さらに,自閉症の研究はこれまで生物学的研究というよりもむしろ障害児教育の問題として教育心理学的に問題とされることがほとんどであった。しかしながら,最近の神経科学の進歩とともに,とりわけ,米国においては,自閉症の(生物学的)研究が非常に盛んになってきた。過去数年間のNIHの研究費停滞の状況下においても自閉症研究費は増加し続けてきた。専門誌のみならず主要雑誌にも最近頻繁に自閉症に関するさまざまな論文が掲載され,様々な動物モデルも報告されているが3-6),決定的な動物モデルは存在していなかったといわざるを得ない状況である。今回われわれは,最新の染色体工学的手法を用いることにより,臨床例に基づく自閉症ヒト型モデルマウスの作製に成功した7,8)

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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