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特集 糖鎖のかかわる病気:発症機構,診断,治療に向けて
糖鎖とCOPD
著者: 高叢笑1 顧建国2 谷口直之1
所属機関: 1大阪大学 産業科学研究所 疾患糖鎖学寄附研究部門 2東北薬科大学 分子生体膜研究所 細胞制御学
ページ範囲:P.128 - P.134
文献購入ページに移動COPDは,肺胞壁の破壊による肺気腫と,粘液の過分泌を伴う中枢気道の慢性的な炎症による慢性気管支炎を基本病態とし,中高年の喫煙者に発症する慢性,持続性の閉塞性換気障害を呈する疾患群である。COPDの主な原因は長期喫煙である。そのほか,受動喫煙や大気汚染,粉塵など外的環境因子や,加齢,栄養失調,タンパク質分解酵素阻害物質の欠損(例えばα1-アンチトリプシン欠損症),細胞外マトリックス分解因子の増加などの内在因子に関係すると考えられる。他の主要疾患に比べてCOPDの患者数が急増しており,全世界におけるCOPD有病者は2.1億人,毎年の死亡者は300万人と見積もられており(世界保健機構,2008年),2020年には世界死因の第3位になると予想されている。COPD患者は感染症によって,容易に重篤な全身症状を引き起こし,非常に高い死亡率(5~14%)に繋がる。昨年,全世界で猛威を振った新型インフルエンザによる感染死者の1割はCOPDの罹患者である(厚生労働省統計,2009年)。一方,COPDにおいては,加齢あるいは慢性喫煙による肺胞中隔結合組織の破壊と修復機構の不均衡が疾患の発症に関与するという説がある。また,COPDは現時点では完治不能な疾患であり,その治療は禁煙・気管支拡張剤の投与を中心とした対症療法である。ターゲットを絞った治療法が確立されていない。本稿では,われわれの知見を中心に解説し,COPDの発症・治療における糖鎖の役割について触れたい。
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