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特集 糖鎖のかかわる病気:発症機構,診断,治療に向けて
膵臓β細胞の糖鎖と2型糖尿病発症機構
著者: 大坪和明1
所属機関: 1大阪大学 産業科学研究所 疾患糖鎖学寄附研究部門
ページ範囲:P.142 - P.147
文献購入ページに移動 糖尿病はインスリンの相対的・絶対的不足により引き起こされる糖質・脂質代謝疾患であり,その発症メカニズムにより分類される。糖尿病の約5%を占める1型糖尿病は自己免疫反応により膵臓β細胞が死滅することにより引き起こされ,その他95%を占める2型糖尿病は膵臓β細胞からのインスリン分泌障害と末梢組織におけるインスリン感受性低下により引き起こされる。2型糖尿病は一部の遺伝的素因を除けば生活習慣により引き起こされると考えられており,とりわけ食文化の欧米化が近年の糖尿病患者の急増を招いていると考えられている。現在,わが国の糖尿病患者数は237万1000人(2008年患者調査概況,厚生労働省)であり,その患者数は年々急速に増加していることからその予防と早期治療が重要な課題となっている。
これまで2型糖尿病の発症に関連する遺伝子群の同定のため,患者およびその家族の遺伝子連鎖解析による2型糖尿病感受性遺伝子領域の解析が試みられてきた。その結果,ヒト染色体2q11.5の遺伝子領域が感受性遺伝子領域として同定された1,2)。この遺伝子領域にはMgat4a (mannosyl(α-1,3-)-glycoprotein β-1,4-N -acetylglucosaminyl-transferase, isoenzyme A)遺伝子が存在している。このMgat4a 遺伝子によってコードされる糖転移酵素GnT-Ⅳaはタンパク質のアスパラギン残基に付加される糖鎖(N 型糖鎖)の分岐構造を形成する酵素であり3,4)(図1),消化管および膵臓β細胞で高い発現が認められる5)。興味深いことに,マイクロアレイによる2型糖尿病患者の膵臓β細胞の遺伝子発現プロファイルの解析から,このMgat4a 遺伝子の発現が非常に有意に低下していることが明らかになっている6)。このように,2型糖尿病の発症過程において糖転移酵素GnT-Ⅳaが何らかの機能を果たしていることが推測された。本論では,GnT-Ⅳa欠損マウスの解析結果5)を中心に紹介し,2型糖尿病発症メカニズムにおける膵臓β細胞の糖鎖の役割について解説する。
これまで2型糖尿病の発症に関連する遺伝子群の同定のため,患者およびその家族の遺伝子連鎖解析による2型糖尿病感受性遺伝子領域の解析が試みられてきた。その結果,ヒト染色体2q11.5の遺伝子領域が感受性遺伝子領域として同定された1,2)。この遺伝子領域には
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掲載誌情報