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文献詳細

雑誌文献

生体の科学61巻2号

2010年04月発行

文献概要

実験講座

量子ドット1分子イメージングによる生体膜分子動態の解析

著者: 坂内博子1 御子柴克彦1

所属機関: 1独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター 発生神経生物研究チーム

ページ範囲:P.194 - P.200

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 生体膜分子の動態は細胞内シグナル伝達,免疫応答,神経伝達など様々な生命現象を制御する重要な要素である。1分子イメージングは生体分子の動態を詳細に研究するための強力な手段である。本稿では,細胞膜上に存在する分子を半導体ナノ結晶「量子ドット」で標識し,その動態を蛍光顕微鏡で可視化する「量子ドット1分子イメージング」を紹介する。

 近年の顕微鏡,検出機,蛍光プローブなどのイメージング技術の目覚ましい進歩により,生きた細胞内で生体分子の1個1個の動きを高い時間・空間解像度で追跡することが可能になった。分子の1個の動きを生きた細胞の上で追跡することの最大の利点は,多分子の平均的な現象をとらえる従来の方法では決して得られない情報を得ることができることである。分子間相互作用やシグナル伝達のように確率論的に起こる事象は,多分子の集合体の中ではその瞬間を検出することができない。しかし,1分子に注目してその動きを追跡することにより,これらの現象が「いつ」「どこで」「どのように」起こるのかを,分子レベルで詳細に調べることができる。この利点を生かして,現在1分子イメージングは細胞内シグナル伝達,細胞内輸送,細胞膜の構造,免疫反応,シナプス伝達などの分子機構を解明するための強力なツールとして用いられている。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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