特集 SNARE複合体-膜融合の機構
STXBP1遺伝子(MUNC18-1)のハプロ不全が難治性のてんかんを引き起こす
著者:
才津浩智1
松本直通1
所属機関:
1横浜市立大学大学院 医学研究科 遺伝学講座
ページ範囲:P.257 - P.262
文献購入ページに移動
てんかんは,大脳神経細胞の過剰な放電によって引き起こされる反復性の発作(てんかん発作)を主な徴候とする疾患である。脳奇形などの明らかな原因が認められる場合(症候性)と明らかな原因が認められない場合(特発性または潜因性)があり,後者において報告されている原因遺伝子の多くがイオンチャネルをコードしている。われわれは,脳奇形のない,新生児から乳児期早期に発症する難治性のてんかん患者に,STXBP1遺伝子の新生突然変異を同定した。STXBP1遺伝子はSNARE複合体の機能を調節することが知られているMUNC18-1タンパク質をコードしている。変異を有するMUNC18-1は構造的に不安定で,シンタキシン-1Aとの結合能が著しく低下していた1)。これらの所見は,シナプス小胞の開口放出障害という新しいてんかんの発症機構を強く示唆するものである。本稿では,STXBP1遺伝子変異の同定に至るゲノム解析,変異MUNC18-1の機能解析について概説する。