icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学61巻5号

2010年10月発行

文献概要

特集 シナプスをめぐるシグナリング 1.受容体

1型インシュリン様成長因子受容体

著者: 柿澤昌1

所属機関: 1京都大学大学院 薬学研究科 生体分子認識学分野

ページ範囲:P.386 - P.387

文献購入ページに移動
 1型インシュリン様成長因子受容体(IGF-1R)およびそのアゴニストである1型インシュリン様成長因子(IGF-1)は,神経細胞の発達,分化,生存などに広く関与する。IGF-1Rの発現は神経幹細胞を含む脳の殆どの神経細胞で見られる。一方,IGF-1の発現も脳全体に広く見られるが,そのレベルや分布は発達段階により大きく変化する。IGF-1Rは,細胞外に位置しIGF-Ⅰと結合するαサブユニットと,膜貫通領域および細胞質内のチロシンキナーゼドメインを有するβサブユニットより成るヘテロ4量体である。IGF-1がIGF-1Rのαサブユニットに結合すると,βサブユニットのチロシンキナーゼ領域内のTyrがトランス型の自己リン酸化反応によりリン酸化される。βサブユニットの自己リン酸化に引き続き,インシュリン受容体基質1(IRS-1)のTyrがリン酸化され,PIP3産生の促進やMAPキナーゼの活性化が起こる。IGF-1Rは2型インシュリン様成長因子(IGF-2)およびインシュリンにも,IGF-1の1/5~1/2,および1/1000~1/100程度の結合性を示す。

 上述のように,IGF-Ⅰ発現のレベル・部位が発生段階に伴い大きく変化することから,IGF-1Rは基本的には自己分泌(autocrine)または傍分泌(paracrine)されたアゴニストと結合すると考えられる。しかし,IGF-Ⅰは血液脳関門を通過するとされており,IGF-1レベルが血中よりも脳内の方が低い時には,循環性のIGF-1が脳に影響を与える可能性も示唆されている。IGF-1/IGF-1Rシグナルの「神経細胞」の発達・分化・生存などへの作用について多数の報告がある一方で,「シナプス」に対する影響に関しては比較的報告は少ない。そこで,本稿ではIGF-1/IGF-1Rシグナルのシナプスに対する作用について触れたい。

参考文献

464:382-391, 2003(synaptogenesis)
20:8435-8443, 2000(synaptogenesis)
17:545-554, 2003(development)
25:635-647, 2000(endocytosis)
55:286-292, 1999(decline in synapse)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら