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文献詳細

雑誌文献

生体の科学61巻5号

2010年10月発行

文献概要

特集 シナプスをめぐるシグナリング 1.受容体

代謝型グルタミン酸受容体

著者: 橋本浩一1

所属機関: 1広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 神経生理学

ページ範囲:P.388 - P.389

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 グルタミン酸は,中枢神経系において神経細胞間の興奮性信号伝達を仲介する神経伝達物質である。グルタミン酸受容体には大きく分けて,イオンチャネルと共役して細胞の膜電位の変化などを引き起こすイオンチャネル型の受容体と,3量体G蛋白質に共役して細胞内の様々なシグナル伝達系を活性化する代謝型の受容体が存在する。

 代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)は7回膜貫通型の構造を持ち,共役する3量体G蛋白質の種類やアミノ酸配列の相同性により,Group Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ型に分類される。Group Ⅰ型にはmGluR1とmGluR5が属し,Gq/11と共役しホスホリパーゼCβの活性化を介して,イノシトール三リン酸とジアシルグリセロールの産生を促進する。主にシナプス後細胞のシナプス周辺領域に存在し(図),可塑性や神経細胞の興奮制御などに関与する。Group Ⅱ型にはmGluR2とmGluR3が含まれる。Group Ⅱ型はGi/oと共役し,アデニル酸シクラーゼの活性を抑制して細胞内cAMP濃度の低下を引き起こす。主にシナプス前終末に存在するが,一部の細胞ではシナプス後部にも存在する(図)。Group Ⅲ型にはmGluR4,mGluR6,mGluR7,mGluR8が含まれ,Gi/oと共役し,シナプス前終末に存在して伝達物質の放出を制御する働きを持つ(図)。Group Ⅱ型とGroup Ⅲ型は,シナプス前終末での分布が若干異なっており,Group Ⅲ型はシナプス間隙のアクティブゾーンに主に分布するのに対し,Group Ⅱ型はシナプスの周辺領域に多く分布する(図)。本稿では,これらmGluRの神経回路レベルでの機能について概説する。

参考文献

326:483-504, 2006(mGluR distribution)
65:2913-2923, 2008(mGluR LTD)
29:83-120, 1999(presynaptic depression, slow postsynaptic potential)
65:320-327, 2010(signaling cascade from mGluR1 to CB1)
195:79-90, 2009(mGluR1-TRPC3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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