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特集 シナプスをめぐるシグナリング 7.キナーゼ/ホスファターゼ
シナプスにおけるERKシグナリングの役割
著者: 佐藤泰司1 遠藤昌吾2
所属機関: 1防衛医科大学校 麻酔科 2東京都健康長寿医療センター研究所 老化制御研究チーム
ページ範囲:P.460 - P.461
文献購入ページに移動ERK(Extracellular signal-regulated kinase)は細胞外からの刺激を細胞膜を隔てた細胞質や核に伝達するMAPキナーゼサブファミリーの一つであり,古典的MAPキナーゼとも呼ばれる。様々な組織において,ERK経路は細胞増殖や細胞分化誘導に中心的な役割を果たしている。活性化ERKは核に移行し,転写因子などを制御して遺伝子の発現パターンを変化させる。たとえば細胞増殖因子の細胞膜受容体への結合は細胞内ERK経路の活性化を誘導し,活性化ERKにより細胞増殖に必要なG1サイクリンなどの遺伝子転写が開始される。また,活性化ERKは細胞質において様々なタンパク質のリン酸化を介して,多彩な機能を果たしている。ERKの完全な活性化には,アミノ酸1個を隔てたスレオニン(Thr)とチロシン(Tyr)両方のアミノ酸残基がリン酸化されることが必要で,哺乳類では,MEKと呼ばれるMAPキナーゼキナーゼがこれら両アミノ酸のリン酸化を担う(MEKの項462ページ参照)。MEKはRaf(Raf-1,B-Rafなど)と呼ばれるMAPキナーゼキナーゼキナーゼによるリン酸化で活性化される(図)。
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