文献詳細
文献概要
特集 シナプスをめぐるシグナリング 14.転写因子
Fosファミリー
著者: 宝田剛志1 米田幸雄1
所属機関: 1金沢大学大学院 自然科学研究科 健康薬学講座
ページ範囲:P.524 - P.526
文献購入ページに移動 Fosファミリーはc-Fos,Fra1,Fra2およびFosBなどのタンパク質群から構成されるが,Junファミリータンパク質(c-Jun,JunB,JunDなど)とヘテロダイマーを形成することにより,ロイシンジッパー型モチーフを有する転写制御因子activator protein-1(AP-1)として機能する分子群である。AP-1は各種標的遺伝子プロモーター領域上のTPA-responsive element(TRE)配列(TGACTCA)を認識して,細胞核内において同コンセンサス配列を有する遺伝子の転写を調節することで,細胞の増殖・分化・生存,あるいは細胞死に深く関与する。Fosファミリーの中でもc-Fosは,FBJ肉腫ウイルスのv-Fos類似タンパク質として同定された原癌遺伝子(proto-oncogene)であり,様々なサイトカインやストレス性刺激あるいはウイルス感染により,発現誘導を受けるimmediate early gene(IEG)の一種として知られている。c-Fosプロモーター領域にはSRE(serum responsive element)サイトが機能的に存在するため,SRF/Elk-1によりc-Fosの発現は転写レベルで調節されている。つまり,各種MAPKキナーゼであるERK,p38,JNKなどが各種刺激により活性化されると,SRF/Elk-1複合体中のElk-1がリン酸化されて,SRE依存的なc-Fos発現誘導が引き起こされると理解される1)。したがって,IEGであるc-Fosは細胞外シグナルが即時的に変換された細胞内シグナル分子と捉えることが可能であり,ストレス応答や増殖あるいは細胞死などの細胞の普遍的現象だけではなく,中枢神経系でのシナプスを介するシグナル伝達機構における生理学的および病態生理学的役割についても注目されている。
参考文献
68:145-165, 2002
23:9116-9122, 2003
23:1269-1282, 2006
掲載誌情報