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特集 シナプスをめぐるシグナリング 16.発達因子/調節リガンド
ErbB1-4
著者: 那波宏之1 武井延之1
所属機関: 1新潟大学 脳研究所 分子神経生物学分野
ページ範囲:P.542 - P.544
文献購入ページに移動細胞外領域はリガンド結合部位をもち,ここにリガンドが結合すると受容体の酵素部が活性化するとともに,相互アフィニテイーが上がり,2量体を形成しやすくなる。ErbBのリガンド分子はEGFやニューレグリン1(NRG1)のほかに現在知られているだけでも10種以上存在し,複雑な組み合わせでErbB受容体と結合する(表)。通常,2量体を形成すると相手側のErbB分子の細胞内領域をリン酸化する。細胞表面のErbB分子濃度が非常に高くなるとリガンド非依存的な2量体形成も起こるようになり,受容体の活性化とシグナル伝達も発生する。表にあるようにErbB分子は多くの組み合わせで2量体を形成するが,ホモ2量体でない場合,リガンド結合ErbB分子とシグナル伝達ErbB分子は異なるかもしれないことに注意しなくてはならない。たとえば,チロシンキナーゼ活性のないErbB3でもニューレグリン(NRG)がErbB3に結合すれば,ErbB2とのヘテロ2量体形成によりErbB2のキナーゼによりリン酸化され,シグナルがErbB3より伝わる。ErbBのシグナル伝達経路にはGrb2/Ras/Raf/MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)経路,PI3K(ホスホイノシトール3キナーゼ)/Akt経路,PLCγ(ホスホリパーゼCガンマ)/IP3経路の三つが存在する。このシグナル伝達の結果,神経系の細胞は増殖,分化,生存などの方向にむかう。Grb2/Ras/Raf/MAPK経路は主に細胞分化や増殖に関与し,PI3K/Akt経路は主に細胞成長や抗アポトーシスに関与する。また,PLCγ/IP3経路はCキナーゼや細胞内カルシウムを動員し,細胞運動や細胞増殖に関与する。
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