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特集 細胞死か腫瘍化かの選択
細胞運命決定に関わるNotchシグナルとその調節機構
著者: 伊藤素行1
所属機関: 1名古屋大学 高等研究院 神経形成シグナル学
ページ範囲:P.624 - P.629
文献購入ページに移動Notchシグナル伝達経路は,線虫からヒトに至るまで進化上よく保存された細胞間のシグナル情報伝達経路である1)。また,脊椎動物で多くの組織の発生過程において重要な役割を果たしていることが知られている(表)。
Notchシグナル情報伝達経路は,隣接する細胞に発現する膜タンパク質リガンド(Delta, Jagged)と受容体(Notch)の結合により開始され,Notch発現細胞へ情報伝達が行われるが,その際,Notchの細胞内領域は切り離され核内へ移行する(図1)。その情報伝達経路は,受容体の膜内タンパク質切断(regulated intramembrane proteolysis:RIP)を介する点で特徴的である。その後,切断された受容体の細胞内ドメイン(NICD)は核内に移行し,DNA結合タンパク質CSL(CBF1/Su(H)/Lag2),活性化補助因子MAM(Mastermind)と複合体を形成,標的遺伝子の転写を活性化することが知られている(図1)。図に示した情報伝達経路は,多くの生物や組織で共通に機能することが知られている。しかしながら,高等生物では,複数リガンド・受容体が存在すること,それらの発現場所・時期・活性が複雑な調節を受けていること,下流標的遺伝子が組織ごとに異なることなどから,Notchシグナルの生理機能は多岐にわたり組織依存性が高いのが特徴である。
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