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特集 筋ジストロフィーの分子病態から治療へ
人工核酸による遺伝子制御
著者: 関根光雄1
所属機関: 1東京工業大学大学院 生命理工学研究科 バイオ情報制御学
ページ範囲:P.121 - P.124
文献購入ページに移動 DNAやRNAの核酸には塩基対形成能と塩基識別能という核酸だけがもちえる特異な性質があり,いい換えればこの二つの能力によってDNA-DNA,RNA-RNA,DNA-RNAのような同一核酸同士や異種核酸間で二重らせんが形成できる。この特異的な性質を利用して,人工的に合成された核酸を用いて,ある特定の遺伝子と選択的に結合させることによってその遺伝子の機能を制御したり不活化することで,その遺伝子の機能を調べたり,遺伝子疾患による疾病を治療することができる。とくに,特定の遺伝子をin vivo でノックアウトするために,最近ではRNA干渉を用いた鎖長21量体程度の短い2本鎖RNA(siRNA)を用いる研究が盛んに行われている1,2)。これは細胞質に存在するmRNAを標的とする遺伝子制御法である。
人工核酸による遺伝子制御法は,もともと1本鎖からなる人工核酸が使われてきた。同じ細胞質内のmRNAを標的として,標的のmRNAと人工核酸が結合し,強く結合することによって物理的にリボゾームによるタンパク合成を阻止したり,さらに細胞内のRNAaseH活性により二重鎖形成後標的のmRNAを非可逆的に切断することによって遺伝子の機能を阻止する3,4)。この方法をアンチセンス法という。一方,細胞内のDNAを直接標的とする三重鎖形成能をもつアンチジーン核酸を用いる遺伝子制御法をアンチジーン法と呼ぶ5)。
人工核酸による遺伝子制御法は,もともと1本鎖からなる人工核酸が使われてきた。同じ細胞質内のmRNAを標的として,標的のmRNAと人工核酸が結合し,強く結合することによって物理的にリボゾームによるタンパク合成を阻止したり,さらに細胞内のRNAaseH活性により二重鎖形成後標的のmRNAを非可逆的に切断することによって遺伝子の機能を阻止する3,4)。この方法をアンチセンス法という。一方,細胞内のDNAを直接標的とする三重鎖形成能をもつアンチジーン核酸を用いる遺伝子制御法をアンチジーン法と呼ぶ5)。
参考文献
1)関根光雄(編):RNAi法とアンチセンス法,講談社サイエンティフィック,講談社,東京,2005
2)関根光雄:新規siRNA分子の創製.医療・診断をめざす先端バイオテクノロジー,pp22-29,工学図書,東京,2009
18:305-319, 2008
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5)上野義仁,松田彰:アンチジーン法人工核酸によるアンチジーン法への展開―三重らせん形成による遺伝子治療,関根光雄・斎藤烈(編),ゲノムケミストリー,pp49-62,講談社サイエンティフィック,講談社,東京,2003
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7)三宅隆,森下竜一:日薬理誌 129:158-162,2007
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70:10453-10460, 2005
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(in press)
65:667-676, 2009
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