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文献詳細

雑誌文献

生体の科学62巻2号

2011年04月発行

文献概要

特集 筋ジストロフィーの分子病態から治療へ

遠位型ミオパチーの治療法開発

著者: 野口悟1 西野一三1

所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第一部

ページ範囲:P.142 - P.145

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 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(distal myopathy with rimmed vacuoles;DMRV)は,15~35歳で発症する常染色体劣性の筋疾患である1)。臨床的には,遠位筋である前脛骨筋が好んで侵され,強度な筋萎縮と筋力低下を特徴とする2)。近位筋である大腿四頭筋は発症初期には侵されない3)。比較的ゆっくりと進行し,平均で発症から12年間で歩行不能となる。罹患筋の病理所見の特徴は,縁取り空胞と萎縮した小角化線維の存在と筋線維内にアミロイド様タンパク質が蓄積していることである。電子顕微鏡観察では縁取り空胞はタンパク質の蓄積とそれを取り巻く自己貪食空胞の集合である。日本には約150-400人の患者数と推定されている。

 2001年に連鎖解析により,欧米で遺伝性封入体ミオパチー(hereditary inclusion body myopathy;hIBM)と呼ばれている,DMRVとよく似た臨床・病理症状を示す遺伝性筋疾患が,ウリジン二リン酸(UDP)-N-アセチルグルコサミン2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼをコードするGNE遺伝子の変異によって引き起こされることが報告された4)。その後,日本人のDMRV患者でもGNE遺伝子に変異が見出され,両者は同じ疾患であることが明らかとなった5)。原因遺伝子はシアル酸合成に関わる酵素をコードするので,この発見は非常に意外なものであった。本当にシアル酸合成不全が筋疾患を引き起こすのか,この遺伝子には他の機能があるのか,議論の的であった。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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