文献詳細
特集 筋ジストロフィーの分子病態から治療へ
マイオスタチンの発現抑制による治療
著者: 川上恵実1 田中栄二1 砂田芳秀2 土田邦博3 野地澄晴4
所属機関: 1徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 口腔顎顔面矯正学分野 2川崎医科大学 神経内科 3藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 難病治療学部門 4徳島大学大学院 ソシオテクノサイエンス研究部 ライフシステム部門
ページ範囲:P.146 - P.150
文献概要
Mstは2回の蛋白質分解による切断過程で活性化される。最初にシグナル配列(N末端側の先頭の約20残基のアミノ酸残基)が除去され,次に4ヵ所の塩基性切断部位(RSRR)で切断される。Zhuら6)は,Mstの切断部位RSRRをGLDGに改変したドミナントネガティブ型のMstを発現したトランジェニックマウスを作製し,筋肉の過形成hyperplasiaは生じないが,肥大hypertrophyが生じることを報告した。これらの結果は,骨格筋増殖抑制因子のMstを抑制すれば骨格筋形成が促進することを示唆しており,Mstをターゲットとした抑制による筋ジストロフィー症の治療の可能性があることが示唆された。さらに,ヒトMst遺伝子異常症例が発見され7),症例では筋容積や筋力の増加が認められたことから,Mst抑制による筋ジストロフィー治療応用が期待されてきた。これまで,Mstをターゲットとした基礎研究が行われ,さらに治療法に関する研究が行われ,様々な方法が開発されてきたので,それらについて紹介し,この治療法について議論する。
参考文献
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