文献詳細
特集 細胞核―構造と機能
2.核膜孔複合体
文献概要
インポーティンβは核膜孔複合体(NPC)を介した核内輸送因子として最もよく知られるタンパク質の一つである。Karyopherinファミリーに属し,HEATリピートと呼ばれるαヘリクスに富む構造を持つ(図)1)。現在までに20種類近くのファミリータンパク質が同定されている(表)。それぞれに輸送するタンパク質が異なると考えられており,大部分のものはすでに同定されている(表)。核局在化シグナル(NLS)の輸送で知られるインポーティンαに結合するサブタイプはインポーティンβ1である。各サブタイプは細胞種や組織特異的な発現パターンを示すことが知られている。同じKaryopherinファミリーに属するタンパク質にエクスポーティンがある。インポーティンと同じHEATリピートに富む構造を持つが,輸送する基質および輸送方向はインポーティンと大きく異なる。基本的にインポーティンは細胞質から核内へ,エクスポーティンは核内から細胞質への物質輸送を助けるが,インポーティン13のように,インポートとエクスポートの両方を行うものも知られている。
運搬するタンパク質や他のタンパク質に対するアフィニティーは各インポーティンのサブタイプ間で大きく異なり,輸送の特異性を決定している(表)。一方で,RanGTPはほぼすべてのKaryopherinファミリータンパク質と高いアフィニティーで結合する。インポーティンβがRanGTPに結合すると,輸送タンパク質へのアフィニティーが低下することが知られており,逆にエクスポーティンはRanGTPに結合すると輸送タンパク質へのアフィニティーが高くなる。この違いにより,輸送方向が決定されていると考えられている。RanGTPの結合がKaryopherin自体の方向性にどのような影響を与えるかは,まだ明確な結論が得られていない。Karyopherinファミリータンパク質はフェニルセファロースのような疎水性カラムに強く結合する2)ことからも,強い疎水性タンパク質であると考えられる。このため,pull-downや免疫沈降などの実験を行うと,実に多くのタンパク質が結合する。しかし,これらの相互作用が実際に細胞内で起こるのか,また生理学的な重要性を伴うかどうかに関しては慎重な検討が必要である。
運搬するタンパク質や他のタンパク質に対するアフィニティーは各インポーティンのサブタイプ間で大きく異なり,輸送の特異性を決定している(表)。一方で,RanGTPはほぼすべてのKaryopherinファミリータンパク質と高いアフィニティーで結合する。インポーティンβがRanGTPに結合すると,輸送タンパク質へのアフィニティーが低下することが知られており,逆にエクスポーティンはRanGTPに結合すると輸送タンパク質へのアフィニティーが高くなる。この違いにより,輸送方向が決定されていると考えられている。RanGTPの結合がKaryopherin自体の方向性にどのような影響を与えるかは,まだ明確な結論が得られていない。Karyopherinファミリータンパク質はフェニルセファロースのような疎水性カラムに強く結合する2)ことからも,強い疎水性タンパク質であると考えられる。このため,pull-downや免疫沈降などの実験を行うと,実に多くのタンパク質が結合する。しかし,これらの相互作用が実際に細胞内で起こるのか,また生理学的な重要性を伴うかどうかに関しては慎重な検討が必要である。
参考文献
349:515-525, 2005
21:2664-2671, 2002
105:16101-16106, 2008
4)吉村成弘・他:実験医学 27:2787-2795,2009
16:319-330, 2004
掲載誌情報