特集 細胞核―構造と機能
3.核骨格
核膜の裏打ちタンパク質Lamin-B1
著者:
佐藤聡1
金惠淑1
綿矢有佑1
所属機関:
1岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 分子医薬品情報学分野
ページ範囲:P.406 - P.407
文献購入ページに移動
核膜はDNAを囲み,核を形成している。核膜は同心円状の二重の膜で,その膜を貫通して核膜孔複合体がある。核の内膜と外膜は連続しているが,この2種類の膜内のタンパク質の構成は異なっている。核の内膜には,クロマチンや膜構造を支持体とする網目状タンパク質の核ラミナと結合するタンパク質が存在している。内膜の外側を囲んでいる核の外膜は小胞体膜と連続している。この核膜構造の中でラミン(lamin)は内膜を裏打ちする核ラミナの重要な構成タンパク質であり,細胞骨格の一つである中間径フィラメントを構成するタンパク質である。
ラミンは単細胞生物と植物では見つかっていないが,ヒドラからヒトまでよく調べられており全ての動物に存在している。ヒト,マウス,カエル,ショウジョウバエ,線虫などいくつかのモデル生物において詳細な特徴が明らかになっており,種を超えてその性質は保存されている。ラミンはその配列相同性,発現パターン,生化学的な特徴からA型とB型のラミンに分類される。Lamin-Aとlamin-Cは脊椎動物の二つの主要なA型ラミンのアイソフォームであり,オルタナティブスプライシングによって一つの遺伝子LMNAから産生される。また,lamin-B1とlamin-B2は多くの脊椎動物の主要なB型ラミンであり,それぞれLMNB1とLMNB2遺伝子によってコードされている。ラミンとその関連タンパク質はDNA複製,遺伝子発現,クロマチン構造の制御などの細胞内プロセスにおいて重要な役割を担っていることが知られており,ラミンやそれら関連タンパク質における変異は疾患の原因となっている。ここでは,核内中間径フィラメントの構成タンパク質であるB型ラミン,特にlamin-B1の生物学的な役割と細胞死に関する知見に焦点を絞って紹介する。