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文献詳細

雑誌文献

生体の科学62巻5号

2011年10月発行

文献概要

特集 細胞核―構造と機能 5.染色体

ヘテロクロマチンとユークロマチン

著者: 広瀬進1

所属機関: 1国立遺伝学研究所

ページ範囲:P.428 - P.431

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定 義

 分裂間期の細胞を塩基性色素で染色すると,クロマチンが凝縮していて濃く染色される領域と,クロマチンが弛緩していて淡く染色される領域が存在する。前者をヘテロクロマチン(heterochromatin),後者をユークロマチン(euchromatin)という。ある生物種のどの細胞でも凝縮している領域は構成的ヘテロクロマチン(constitutive heterochromatin)と呼ばれ,全ゲノムの10-20%を占め,主にセントロメア周辺にみられる。特に断らない限り,ヘテロクロマチンというと構成的ヘテロクロマチンを指す。これに対して一部の細胞種だけで凝縮している領域は条件的ヘテロクロマチン(facultative heterochromatin)と呼ばれ,胚細胞にはほとんど存在しないが,発生,分化の過程で細胞種ごとに特定の領域が凝縮してヘテロクロマチンとなる。例えば哺乳類の不活性X染色体があげられる。一部の例外を除いて,ヘテロクロマチンでは転写や組換えが不活性化されており,細胞周期のS期後期に複製される。逆に,ユークロマチンでは転写や組換えが活性か,活性化されうる状態にある。

参考文献

1)John B:Molecular and Structural Aspects. Heterochromatin, pp1-147, Cambridge Univ. Press, 1988
141:615-619, 2007
297:1833-1837, 2002
473:43-49, 2011
473:293-294, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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