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特集 細胞核―構造と機能 5.染色体
ヘテロクロマチンタンパク質HP1
著者: 中山潤一1
所属機関: 1理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター クロマチン動態研究チーム
ページ範囲:P.466 - P.467
文献購入ページに移動 ヘテロクロマチンとは細胞周期を通じて凝縮したままのクロマチン画分を指す。この領域は概して遺伝子密度が低く,反復配列やトランスポゾンが高密度に存在している。ヘテロクロマチンタンパク質HP1は,ショウジョウバエのヘテロクロマチンに局在する非ヒストンタンパク質として,1986年にElginらによって同定された1)。またショウジョウバエでは,セントロメアなどのヘテロクロマチンの近傍に置かれた遺伝子の発現が多様な発現パターンを示す現象(PEV;position effect variegation)が古くから知られている。このPEVを抑圧する変異体の一つとして単離されたSu (var )2 -5 が,実はHP1をコードする遺伝子上の変異であることが明らかにされ,HP1がヘテロクロマチンの主要なタンパク質であるばかりでなく,遺伝子発現を制御する因子であることが示された。HP1は進化的に非常によく保存されたタンパク質であり,分裂酵母からヒトに至るまで広く見出される。また,多くの生物種では複数のHP1サブタイプが見出され,それぞれ独自の機能を持っていると考えられている。
参考文献
6:3862-3872, 1986
62:2711-2726, 2005
292:110-113, 2001
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