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文献詳細

雑誌文献

生体の科学62巻5号

2011年10月発行

特集 細胞核―構造と機能

5.染色体

BRCA2とヌクレオホスミン

著者: 三木義男1

所属機関: 1東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子遺伝分野

ページ範囲:P.474 - P.475

文献概要

 BRCA1BRCA2は遺伝性乳癌・卵巣癌症候群の原因遺伝子である。それらの蛋白は相同組換えによる二本鎖DNA損傷修復において重要な役割を持ち,BRCA2はまた転写制御,細胞質分裂,細胞増殖においても重要な役割を果たしている。BRCA2は中心体移行シグナルを持ち,核だけでなく中心体にも局在し,その機能不全が細胞分裂の異常を起こす1)。中心体の複製はG1/Sに始まってS期に完成され,同時に核内ではDNAが複製される。この中心体複製の異常は結果的に癌形成の開始事象の一つである核の異数体を生み出す2)。中心体制御にかかわるBRCA2の正確な役割を理解するため,中心体においてBRCA2と結合する新たな蛋白としてNPM(ヌクレオホスミン:nucleophosmin)とROCK2を同定した3)

 NPMは核と細胞質を往復する多機能の核小体リン酸化蛋白である4)。それはリボゾーム会合,前r-RNA処理,mRNA処理,DNA複製,核-細胞質蛋白の輸送,分子シャペロンなど多機能に関与している。NPMの大部分はS期にCdk2/cyclin Eによりリン酸化され中心体から解離するが,中心体に残ったものはROCK2と結合し,中心体複製の開始を誘導する5)。ROCK2は低分子量GTPase Rhoにより制御されるSer/Thrキナーゼで,NPMと物理的に相互作用し中心体複製を促進する中心体蛋白である。

参考文献

355:34-40, 2007
2:815-825, 2002
71:68-77, 2011
143:441-448, 2008
26:9016-9034, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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