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文献詳細

雑誌文献

生体の科学62巻6号

2011年12月発行

文献概要

特集 コピー数変異

特発性正常圧水頭症のリスク遺伝子の探索―SFMBT1遺伝子のsegmental copy number loss

著者: 伊関千書1 和田学1 加藤丈夫1

所属機関: 1山形大学 医学部 第三内科

ページ範囲:P.570 - P.573

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 特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus;iNPH)は脳脊髄液の循環動態の異常により歩行障害,認知機能低下や排尿障害などをきたす高齢者の疾患である1)。クモ膜下出血や髄膜炎などの先行疾患がある二次性正常圧水頭症と異なり,iNPHは“特発性(idiopathic)”という語が示すように,現在でもその病因・病態は不明である。神経病理学的検索でもiNPHの病理像は症例ごとに多様であり,iNPHに共通する神経病理学的所見は得られていない1)。したがって,基礎となる病因・病態は多様である可能性があり,最終的に脳脊髄液の循環障害をきたして脳室拡大や神経症状を惹起するという“multietiological clinical entity”仮説が提唱されている。一方,われわれはiNPHと全く区別のつかない臨床像と脳MRI所見を呈するNPHの大家系(家族性NPH)を報告した2)。この家系では3世代にわたり8人の発症者がおり,常染色体優性遺伝形式で病気は伝播していることが示唆された。このことはiNPHと区別のつかない臨床像を惹起するのに一つの遺伝子(あるいは一つのゲノム領域)の突然変異で十分である可能性を示唆している。iNPHは孤発性疾患であるが,上記のように“家族性NPH”が存在する事実は,iNPHの病因・病態にも遺伝的要因が関与している可能性が考えられる。しかし現在まで,iNPHの発症リスクとなる遺伝子多型は明らかにされていない。

 遺伝子多型にはそのサイズにより微小なものから粗大のものまで種々の多型がある。最も微小な遺伝子多型は一塩基多型(single nucleotide polymorphism;SNP)であり,これは個々人により一塩基のみ異なる多型である。最も粗大な遺伝子多型は染色体再構成であり,染色体の一部が欠失・重複・転座したりするもので,光学顕微鏡でも観察可能である。SNPと染色体再構成の中間のサイズがコピー数多型(copy number variation;CNV)であり,最近,多くの孤発性疾患とCNVとの関連が注目されている3-6)。われわれはiNPHとCNVとの関連についてゲノムワイドに解析を行い興味深い結果を得たので,以下に記載する7)

参考文献

1)日本正常圧水頭症学会・特発性正常圧水頭症診療ガイドライン作成委員会(編):特発性正常圧水頭症診療ガイドライン(第2版),メディカルビュー社,東京,2011
308:149-151, 2011
40:23-25, 2008
79:439-448, 2006
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277:54-57, 2009
402:438-442, 2010
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22:7787-7795, 2001
248:127-135, 2000
581:3289-3296, 2007
27:145-165, 2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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