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文献詳細

雑誌文献

生体の科学62巻6号

2011年12月発行

解説

タンパク質の核移行阻害剤―ポリグルタミン病の分子標的治療

著者: 辻省次1 伊達英俊1

所属機関: 1東京大学 医学部附属病院 神経内科

ページ範囲:P.581 - P.586

文献概要

 病因遺伝子の翻訳領域に存在するポリグルタミン鎖をコードするCAGリピートの異常伸長が遺伝性神経変性疾患の発症原因となっていることが初めて見出されたのは,1991年の球脊髄性筋萎縮症(spinal and bulbar muscular atrophy;SBMA)の病因遺伝子(アンドロゲン受容体)の発見であった1)。次いで,ハンチントン病においても同様の機序が発見されたのが1993年であった2)。これらの発表を契機に,ポリグルタミン鎖をコードするCAGリピートの伸長が数多くの神経変性疾患の発症原因として発見され,これまでに9疾患でCAGリピートの異常伸長が見出され,ポリグルタミン病と総称されるようになった(図1)3-15)

 伸長ポリグルタミン鎖によってもたらされる神経変性の分子機構については,in vitroの研究,細胞を用いた研究,モデル動物を用いた研究などにより,その解明が急速に進んできている。最近の研究では,ポリグルタミン鎖を含む変異タンパクが凝集体を形成する過程で,強い細胞障害を示すことが示されている。トランスジェニックマウスの解析で,神経症状を示すにもかかわらず細胞死が観察されないことから,「神経細胞死」というよりは「神経細胞の機能障害」という考え方が有力になってきている16,17)。さらに,同様にトランスジェニックマウスを用いた研究で,変異huntingtin遺伝子の発現を遮断すると凝集体が消失し,表現型まで改善することが示されたこと18)が注目される。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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