生体の科学63巻1号

2012年02月発行

連載講座 老化を考える・9

高齢者頭部外傷の特徴と転帰

著者： 宮城知也¹ 服部剛典¹ 森岡基浩¹

所属機関： ¹久留米大学 医学部 脳神経外科

ページ範囲：P.56 - P.61

　高齢者の頭部外傷は，その解剖生理学的特徴から青壮年とは異なった特異的な病態を示す^1）。加齢とともに呼吸循環器系の生理的臓器予備力は低下し，それに加えて種々の全身合併症や既往症が増加する。頭蓋内環境においては，（1）脳のコンプライアンスが低下し，少ない外力の圧迫でも容易に挫傷や出血が生じる，（2）脳の萎縮により軽度の外力でも脳が移動し，損傷が生じやすい，（3）脳血管は硬くて弾力性に乏しく，しかも脆弱である，などの特徴を有している^2）。そのため，高齢者の頭部外傷の予後は概して不良であり^3-5），高齢化社会を迎えた昨今，大きな社会的問題ともいえる。そこで本稿では，高齢者の頭部外傷の特徴や転帰不良の原因を中心に解説する。

参考文献

19：1017-1019，2001

19：980-982，2001

3）亀山元信，小沼武英，本橋蔵：神経外傷 25：153-158，2002

4）小野純一，山浦晶，磯部勝見：神経外傷 22：85-89，1999

5）中村弘，宮田昭宏，八巻智洋・他：神経外傷 30：120-126，2007

16：77-81，2003

75：37-49, 1991

25：1407-1414, 2008

9）徳富孝志：神経外傷 25：140-147，2002

10）徳富孝志，宮城知也，小川武希・他：神経外傷 31：85-90，2008

51：481-489, 2001

32：87-92, 2005

24：435-445, 2007

14）徳富孝志，小川武希，小野純一・他：神経外傷 28：1-5，2005

74：407-414, 1991

14：425-431，2005

17）川又達郎，片山容一：神経外傷 25：205-209，2009

18）小野純一，山浦晶，磯部勝見：神経外傷 22：85-89，1999

68：409-416, 1988

99：663-673, 2003

97：326-336, 2002

19（1）：37-43, 2004

34：216-222, 1993

24）奥野憲司，木奥野憲司，木下浩作・他：神経外傷 22：80-84，1999

25）奥野憲司・他：救急・集中治療 13：131-132，2000