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あとがき
著者: 伊藤正男
所属機関:
ページ範囲:P.72 - P.72
文献購入ページに移動 本号では「小脳研究の課題(2)」と題して7編の総説による特集を組むことができました。15名の執筆者に厚く御礼申し上げます。もし,さらに機会があれば『小脳研究の未来展望』とでも題して,これから先どのような発展が期待できるのかを論じたいのですが,今回は,永雄・山崎両氏がまだ解かれていない小脳の課題という形で基礎的な問題を論じて下さいました。
その一つは,小脳が運動だけでなく認知機能にも関与しているという可能性で,最近かなり認められるようになりましたが,一方では,運動情報と認知情報がどのようにして同じ小脳の神経回路で処理されるのかという問題につながり,これは考えてみれば不思議です。小脳は元々運動情報の処理のために発達したのが,進化の過程で身体についた知識(embodied cognition)の処理に拡張され,さらに言語のような知識情報の処理にも拡張されたのではないかと疑われているのが現状です。しかし,物理世界で働く運動情報と心的世界で働く知識情報の間にはまだ超えることのできない大きな溝があり,これを超えるにはアインシュタインが質量とエネルギーを等式で結んだような革命的なことが必要なのでしょう。
その一つは,小脳が運動だけでなく認知機能にも関与しているという可能性で,最近かなり認められるようになりましたが,一方では,運動情報と認知情報がどのようにして同じ小脳の神経回路で処理されるのかという問題につながり,これは考えてみれば不思議です。小脳は元々運動情報の処理のために発達したのが,進化の過程で身体についた知識(embodied cognition)の処理に拡張され,さらに言語のような知識情報の処理にも拡張されたのではないかと疑われているのが現状です。しかし,物理世界で働く運動情報と心的世界で働く知識情報の間にはまだ超えることのできない大きな溝があり,これを超えるにはアインシュタインが質量とエネルギーを等式で結んだような革命的なことが必要なのでしょう。
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