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生体の科学63巻2号

2012年04月発行

雑誌目次

特集 RNA干渉の実現化に向けて

RNAiの利用による血管内皮細胞機能の制御機構の解析

著者: 岡本貴行

ページ範囲:P.74 - P.82

 血管はその内部を通る血液を介して全身へ酸素,栄養素,ホルモンを運搬している。血液と接する血管内壁は1層の血管内皮細胞が並ぶ薄い層であり,正常な血管内皮細胞は血管弛緩因子のNO,血小板凝集抑制因子のプロスタサイクリン(PGI2),ecto-ATP/ADP分解酵素,抗凝固因子のトロンボモジュリン(TM),プロテインC受容体(EPCR),ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG),線溶因子の組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)など抗血栓性因子を産生し,血栓の形成を阻止している1,2)。しかし,傷害や病原体感染などにより炎症をきたすと,血管傷害部位とその周囲の血管内皮細胞は抗血栓性因子の産生を低下し,血小板凝集惹起因子のvon Willebrand因子(VWF),凝固反応開始因子の組織因子(TF)や第Ⅴ因子,線溶阻害因子のプラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)など向血栓性因子の発現を増加する1,2)。これら一連の分子の発現変動により血液凝固反応の活性化,血小板の凝集,血管収縮を生じ,傷害部位への止血血栓の形成が行われる。

 通常,血管は血液や血中の有形成分が血管外へ漏出しないように血管内皮細胞同士が強固に接着している3)。しかし,炎症亢進を伴う病態下では,血管内皮細胞は上記の血液凝固の亢進に加え,炎症性サイトカイン,ケモカイン,接着分子を発現し,炎症反応の活性化,傷害部位への白血球の遊走・接着を亢進する4,5)。この際,同時に血管内皮細胞間の接着は減弱し,血管透過性の亢進,またはバリア機能の低下を招く。その結果,浸透圧を維持するための水分の間質への移動(浮腫)や傷害を受けた内皮下組織への白血球の浸潤が起こる。このように血管内皮細胞は生体防御反応の一環として,炎症や血管透過性を制御している。

神経細胞遊走のメカニズム解明に向けたsiRNAの利用

著者: 瀧藤尊子 ,   広常真治

ページ範囲:P.83 - P.89

 哺乳類の大脳皮質は異なる形態と機能を持つ神経細胞が6層からなる層構造をとる。それらの細胞ははじめからその場所で生まれるのではなく,側脳室に面した脳室帯(ventricular zone)と呼ばれる増殖層において神経前駆細胞から生成された神経細胞が,自身の細胞体長の何百倍もの距離を遊走(migration)して,遺伝的プログラムによって定められた大脳皮質内の位置に到達し,厳密に制御された6層構造を構築する1-3)。脳室帯から遊走を開始した神経細胞は,発生の初期に生じたものほど大脳皮質板(cortical plate)内で下の層に留まり,遅生まれの細胞ほど皮質板内で上の層へ到達する。これを“inside-outの原則”と呼び,哺乳類の中枢神経系の形成過程でみられる共通した発生メカニズムである。個々の神経細胞の遊走過程は,1)先導突起伸展,2)核・細胞質移動,3)後方突起収縮を繰り返して最終的に目的地に到着し,神経細胞のネットワーク形成を行う。したがって,神経細胞遊走にかかわる分子の変異は神経細胞の遊走障害,さらには中枢神経系の形成不全の原因となる。

 滑脳症(lissencephaly)は神経細胞の遊走障害によって起こる代表的な脳の形成不全であり4,5),脳の表面に脳回がなく平滑であることを特徴とする。病理学的所見としては,当初より正常6層である灰白質が本症患者では4層しかみられず,原因は主としてヒト染色体17番染色体上のLIS1遺伝子に異常を有する場合と6),X染色体にあるDCXの変異によるものがあり7),前者はLIS1遺伝子領域を含む染色体領域が欠失していることが多く,その場合,特有な顔貌を呈するためMiller-Dieker症候群(MDS)といわれる8)。なかでもLIS1の変異によって生じる滑脳症は研究が進んでおり,LIS1は微小管上を走るモータータンパク質である細胞質ダイニンの制御因子であることが明らかとなった9)。われわれは,LIS1が細胞質ダイニンを微小管上に固定しアイドリング状態にすることを明らかにし,細胞質ダイニンが微小管のプラス端に向かう移動に必須であることを証明した10)

RNA干渉を利用したウシプリオン遺伝子のノックダウン

著者: 須藤鎮世

ページ範囲:P.90 - P.97

 ペチュニアの花の色を濃くしようと関連遺伝子を導入したところ,かえって色が薄くなったという“共抑制”のような不可解な現象が,高等動物を除く種々の生物で観察されていた。1998年にFireとMelloは,センチュウを用いてこれらの現象が短鎖の二本鎖RNAによるmRNAの破壊に起因することを見出し,RNA干渉(RNAi)と名づけた。しかし,高等動物にはRNAi系は存在しないと考えられていたので,RNAiは広範な注目を浴びることがなかった。ところが,2001年にTuschlら1)が,短鎖の二本鎖RNA(siRNA)を用いればインターフェロン応答も起こさず,動物細胞でもRNAiが有効と報告するに及んで,RNAiの研究と利用は爆発的に発展した。RNAiには大別して,siRNAによる配列特異的なmRNAの破壊と,類似の配列をもつマイクロRNA(miRNA)によるmRNAの翻訳阻害とがある。

 一方,ヒツジを中心にスクレーピーという脳の萎縮を伴う奇病が古くから知られていた。1986年にウシ海綿状脳症(BSE,狂牛病は俗称)が見出された。スクレーピーやBSEは伝達性海綿状脳症(TSE)の一種である。BSEは家畜などの骨や内臓をレンダリング処理して,肉骨粉を飼料として与えたことが原因と考えられた。病原体としてウイルスでも細菌でもない“プリオン”が提唱された(Proteinaceous infectious particleの略Proinより語感のよいPrion)。プリオンタンパク質説2)によると,正常プリオンタンパク質(PrPC)に異常プリオンタンパク質(PrPSc)が触媒的に作用して,PrPCをPrPScに変換する。PrPScは熱やタンパク質分解酵素に安定で,レンダリングしても失活しない。英国は1988年に肉骨粉を反芻動物の飼料とすることを禁止した。

RNAi法を利用した抗体の評価

著者: 柴田昌宏 ,   内山安男

ページ範囲:P.98 - P.103

 細胞内には数多くの小さなRNA分子が存在し,遺伝子発現や遺伝子産物の発現を抑制している。さらに外来RNA分子に対しても遺伝子発現抑制機構が働き,この機構を利用してRNAウイルスの感染を抑制する。これらの現象は90年代初頭から報告されていたが1,2),1998年に線虫(C. elegans)を用いたFireらの研究によってその機構が明らかとなり,RNA interference(RNA干渉,RNAi)と呼ばれるようになった3)。このようにもともと細胞内に備わった機構を利用して特定の遺伝子発現を抑制し,その機能を解析する手法が確立された。現在では様々な基礎研究に用いられるだけでなく臨床応用研究へと展開しており,近年の生命科学では非常に重要な実験手法となっている。本稿では,生命科学研究では欠かすことのできない実験材料である抗体の評価にRNAiを利用することを提案し,さらにわれわれが作製した抗体を使って得られた成果について紹介する4)

 近年の目覚ましい技術革新により,研究の世界で実験手技における専門性が薄らぎ,幅広い実験法を用いた解析が求められている。そんな中,ある特定のタンパク質の機能を解析するうえで,抗体は必要不可欠な実験材料となっている。抗体を使うことによって,研究対象とするタンパク質を精製することなく解析することが可能となっている。しかし,抗体を使った解析で最も重要な点は抗体の特異性である。たとえば,生化学的な解析ではウェスタンブロット法を用いることが多いが,この場合,分子量という尺度をもって客観的に判断できる。しかし,相同性の高い他のタンパク質や未知のタンパク質を認識している可能性は否めない。

シクロデキストリン/デンドリマー結合体によるsiRNAデリバリー

著者: 本山敬一 ,   東大志 ,   有馬英俊

ページ範囲:P.104 - P.112

 近年,標的遺伝子のmRNAに相補的な配列を有する21-27 merの二本鎖RNA(siRNA)の導入により誘導される,標的mRNAを配列特異的に分解するRNA干渉(RNAi)法が遺伝子解析やオリゴヌクレオチド療法において注目を集めている。しかし,siRNAは低い細胞膜透過性やヌクレアーゼによる分解が問題となっており,標的とする臓器や細胞へsiRNAを効率よく送達するベクター技術の確立が重要である。また,siRNAは標的細胞の核内で転写のプロセスを必要とするプラスミドDNA(pDNA)とは異なり,細胞質に存在するRISC(RNA-induced silencing complex)と呼ばれるタンパク質と複合体を形成後,RNAi効果を発揮することから,細胞内動態も制御な可能なベクター技術が求められている。本総説では,当研究室で構築した核酸医薬キャリア技術を概説する。

多機能性エンベロープ型ナノ構造体によるsiRNAデリバリー

著者: 櫻井遊 ,   畠山浩人 ,   秋田英万 ,   原島秀吉

ページ範囲:P.113 - P.119

 RNAi(RNA interference,RNA干渉)とは,二本鎖RNAの片一方のRNA鎖が細胞質に存在するRNA inducing silencing complex(RISC)と呼ばれるタンパク質複合体に取り込まれた後に,相補的な配列を持つmRNAと結合し翻訳を抑制することで,その遺伝子の発現を抑制する現象のことである。1998年にFireらにより線虫においてRNAiが発見され1),その後,3'末端に2塩基のオーバーハング構造を持つ21塩基の化学合成RNA(short interfering RNA:siRNA)を用いることで,哺乳類細胞においても重篤な副作用を惹起することなくRNAiを誘導可能であることがTuschlらにより報告された2)。配列さえ明らかになれば理論的にはゲノム上のどの遺伝子でも発現抑制可能であるというその性質から,現在ではsiRNAをウイルス感染やがんなどの難治性疾患に対する治療薬へと応用する試みがなされている3)。しかしながら,siRNAを治療用分子として応用するためには克服すべき課題も多い。

 siRNAは水溶性の高分子であるため,そのままではその機能する場である細胞質へと細胞膜を透過して集積することはない。また,全身投与による治療を考えると,siRNAは体液中に豊富に存在するRNA分解酵素に非常に感受性が高いこと,加えて腎臓において糸球体濾過を受けることから,そのままの形では速やかに血中から消失してしまうことが問題となる。これらのsiRNAの欠点を補うために,siRNA自体に分解を防ぐための化学修飾を施す試み4),siRNAに直接コレステロールなどの機能素子を結合させることでsiRNAのバイオアベイラビリティを上げる手法5),さらにはsiRNAと複合体を形成するカチオン性ポリマーやリポソームを利用することで細胞内の取り込みを上昇させる試みなど数多くの研究が行われてきた6)。このように多数の試みがなされたにもかかわらず,いまだsiRNA医薬が上市に至った例はない。その理由として,siRNAが血中に投与されてから機能を発揮するまでには,上記に挙げたような体内動態・細胞内動態にかかわる幾重ものバリアのそれぞれを段階的に克服しなければならないという複雑性が挙げられる。しかしながら,これまでの多くのsiRNAキャリアはカチオン性のポリマーやリポソームなどとの単純な混合によって調製されたものであり,それぞれの機能素子が必要なタイミングに機能するように配置することが困難であった。

RNA干渉を利用した疾患治療システム

著者: 高橋有己 ,   西川元也 ,   高倉喜信

ページ範囲:P.120 - P.128

 RNA干渉(RNAi)は,二本鎖RNA(dsRNA)やマイクロRNA(miRNA)に代表される機能性RNAが,RNA分解酵素であるAgoファミリーらとRNA-induced silencing complex(RISC)と呼ばれるRNA-タンパク質複合体を形成し,相同的な配列を有するmRNAを認識し,そのmRNAを分解あるいはそのmRNAからの翻訳を阻害することによる,転写後遺伝子発現制御機構である。RNA干渉は1990年代に植物で報告されていたが,FireとMelloが1998年に線虫でも誘導可能であることを発見した1)。彼らはこの発見により2006年にノーベル医学生理学賞を受賞した。発見からノーベル賞受賞までが短期間であったことからもわかるように,RNA干渉の発見が生命科学に及ぼした影響は非常に大きい。

 線虫で発見されたRNA干渉の哺乳類への適用は,RNA感染に対する防御機構である長い二本鎖RNAに応じたインターフェロン(IFN)応答によって妨げられていたが,2001年には19塩基対の短い二本鎖RNA(siRNA)を用いることでIFN応答を誘導することなくRNA干渉を誘導可能であることが報告された2)。siRNAによる遺伝子発現抑制は容易に誘導可能であり,その遺伝子発現抑制効果は配列特異的かつ強力であることから,瞬く間に実験ツールとして定着した。RNA干渉の発見によって,従来見過ごされてきたnon coding RNA(ncRNA)の役割にも注目が集まった。その結果,ncRNAの一部がmiRNAとして働く,あるいはその他の機構に基づき多数の遺伝子の発現を制御していることが明らかにされた。これらの結果から,miRNAについては診断マーカーとしての探索や,病態への関与に関する研究が先行しているが,それだけでなく疾患原因となるmiRNAの機能阻害,あるいは疾患時に低下するmiRNAの補充による疾患治療も試みられ,その一部についてはすでに臨床治験が開始されている。また,siRNAについてはその特性から病因遺伝子の発現を抑制することによる医薬品としての開発が望まれている。

RNA干渉と肝疾患の治療

著者: 梶野一徳 ,   樋野興夫

ページ範囲:P.129 - P.132

肝癌研究とmiR-122

 今日,肝疾患との関連が強く認められているmiR-122の前駆体RNAは,肝癌研究の歴史のなかで偶然発見された。B型肝炎ウイルス(HBV)とウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)は類似のゲノム構造を持ち,宿主肝に持続性感染を起こして肝細胞癌を発生させる。しかし,両ウイルスゲノムの宿主染色体への組み込みパターンは異なっている。ヒト肝癌におけるHBV DNAの組み込み部位は(少数の報告例を除き)ランダムで,宿主遺伝子の再構成にも一定の傾向を示さない。しかし,ウッドチャック肝癌においてWHVは高率にN-mycやc-myc遺伝子内あるいは近傍に組み込まれ,myc遺伝子の再構成を起こしている1)。1989年,パスツール研究所のグループはウッドチャック肝癌の1例から,c-myc遺伝子と融合しc-mycの発現レベルを50倍以上高める新規の細胞遺伝子hcrを単離・同定した2)。しかし彼らを困惑させたことに,hcrの転写産物は4.7kbと比較的長いにもかかわらず蛋白質をコードするフレームを含んでいなかった。そのため,当時はその転写産物の機能は理解されなかった。2002年,Tuschlらは肝臓で発現している新規miRNAとしてmiR-122を報告し3),それにより既報のhcr転写産物がmiR-122の一次前駆体であったことが明らかとなった。miR-122は肝臓に特異的かつ多量に発現しており4),後述するように,肝疾患と関連するmiRNAとして最も注目されているものの一つである。

アレルギー疾患へのRNAiの利用

著者: 稲垣直樹

ページ範囲:P.133 - P.139

 アレルギー疾患の発症に遺伝因子がかかわることは,古くから患者の家系調査の成績などによって示されてきたが,近年の科学技術の進歩に伴い,アレルギー疾患にかかわる遺伝子あるいはその多型が次々と明らかにされてきた1,2)。ほとんどすべての染色体に関連遺伝子がコードされているが,アトピー遺伝子として解析された染色体の例としては11q13,5q31.1などが挙げられる3,4)。11q13には高親和性IgE受容体FcεRIのβ鎖がコードされており,この領域における塩基の変異が英国人の一部のアトピー患者の発症にかかわる可能性が示唆されている5)。また,5q31.1にはIgE産生を促進するインターロイキン(interleukin:IL)-4遺伝子がIL-3,IL-5,IL-9,IL-13や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子遺伝子とともにクラスターを形成している4)

 アレルギー疾患患者ではTh1細胞とTh2細胞の機能的バランスがTh2細胞優位な状態に偏倚しており,Th2細胞が産生するサイトカインがIgE産生やアレルギー性炎症に重要な役割を演じると考えられている。アレルギー性炎症に関与するTh2サイトカイン,ケモカイン,それぞれの受容体,細胞応答の発現にかかわる細胞内シグナル伝達分子,核内因子などが明らかにされ,遺伝子多型についても解析が進められている。アレルギー性炎症にかかわる因子には,Th2サイトカインなどのように発現増大を介して関与する因子のみならず,機能低下を介してかかわる因子も存在する。フィラグリンは皮膚バリアの構築に重要な役割を演じるが,アトピー性皮膚炎患者の多くはフィラグリン遺伝子に変異を生じており,皮膚バリアの異常が皮膚炎発症に重要な役割を演じると考えられる6,7)

連載講座 老化を考える・10

加齢,うつ病,そして睡眠と生体リズムの関係について

著者: 三島和夫

ページ範囲:P.140 - P.148

 うつ病の有病率は非常に高く,12ヵ月有病率で3-5%1,2),生涯有病率で3-20%3)にも達し,臨床的にも社会経済的にも甚大な影響をもたらす深刻な疾患である。表にDSM-Ⅳ-TR(米国精神医学会・精神疾患の診断・統計マニュアル)による大うつ病の診断基準を示した。うつ病では抑うつ気分や興味(喜び)の喪失といった中核症状に加えて,不眠をはじめとして食欲不振や倦怠感などさまざまな精神身体徴候が認められる。WHOによるDisability-adjusted life-year(DALY)指標では,2020年にはうつ病は虚血性心疾患に次いで生活者に健康面での多大な負担を強いる第2位の疾患になると推定されている。うつ病患者の生活機能や福祉は著しく障害され,心肺疾患,関節炎,高血圧,糖尿病のような慢性的身体疾患を抱える患者と同等かそれ以上の社会機能の低下が認められる4,5)

 65歳超の一般人口のおおよそ10-15%が抑うつ状態にあり,1-3%が大うつ病(いわゆる臨床的なうつ病)に罹患していると考えられている6,7)。これら抑うつ状態にある高齢者の臨床転帰は不良である。抑うつ状態にあった高齢者の24ヵ月後の臨床転帰に関する研究のメタ解析では,33%の高齢者のみ健康状態にあり,33%は抑うつ状態のままであり,21%は死亡していた8)

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お知らせ

ページ範囲:P.148 - P.148

次号予告/財団だより

ページ範囲:P.149 - P.149

あとがき

著者: 野々村禎昭

ページ範囲:P.150 - P.150

 RNAi(RNA干渉)は1998年FireとMelloらによって線虫で発見され,2006年二人はノーベル医学生理学賞を受賞した。発見から8年であり非常に早いが,それだけ期待度は高かったということであろう。実際には2001年,哺乳類細胞でsiRNA(低分子干渉RNA)が導入されたことによって飛躍的に進歩し,広範囲の応用が期待された。この前提にアンチセンスRNAの発見,利用があった。この辺のところは本特集の何編かで序文に述べられている。正直に言ってRNAiの応用の成功例は細胞レベルでは華々しいが,ヒトの臨床レベルでは最初期待されたほど多いわけではない。しかし本特集では,国内でRNA干渉に取り組んでおられる研究者の方々に,特に臨床方面での応用成果を書いていただいた。また,現実的には標的に核酸物質を送り込むdeliveryの問題も大事である。この観点からも何人かの方に書いていただいた。

 東日本大震災から一年になろうとしている。危惧したように科学研究費関係の予算は厚労省関係では減額が問題になっている。全体としても,あまり基礎的な問題は軽視される傾向が強くなってきている。このような時期では仕方ないかもしれないが,われわれも手をこまねいているのではなく,RNA干渉という最も基本的な問題が実際に役立とうとしているという観点から本特集を編集した。書きにくいところを協力していただいた方々に感謝します。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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