文献詳細
特集 RNA干渉の実現化に向けて
神経細胞遊走のメカニズム解明に向けたsiRNAの利用
著者: 瀧藤尊子1 広常真治1
所属機関: 1大阪市立大学大学院 医学研究科 細胞機能制御学
ページ範囲:P.83 - P.89
文献概要
滑脳症(lissencephaly)は神経細胞の遊走障害によって起こる代表的な脳の形成不全であり4,5),脳の表面に脳回がなく平滑であることを特徴とする。病理学的所見としては,当初より正常6層である灰白質が本症患者では4層しかみられず,原因は主としてヒト染色体17番染色体上のLIS1遺伝子に異常を有する場合と6),X染色体にあるDCXの変異によるものがあり7),前者はLIS1遺伝子領域を含む染色体領域が欠失していることが多く,その場合,特有な顔貌を呈するためMiller-Dieker症候群(MDS)といわれる8)。なかでもLIS1の変異によって生じる滑脳症は研究が進んでおり,LIS1は微小管上を走るモータータンパク質である細胞質ダイニンの制御因子であることが明らかとなった9)。われわれは,LIS1が細胞質ダイニンを微小管上に固定しアイドリング状態にすることを明らかにし,細胞質ダイニンが微小管のプラス端に向かう移動に必須であることを証明した10)。
参考文献
掲載誌情報