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文献詳細

雑誌文献

生体の科学63巻2号

2012年04月発行

文献概要

特集 RNA干渉の実現化に向けて

RNA干渉を利用したウシプリオン遺伝子のノックダウン

著者: 須藤鎮世1

所属機関: 1就実大学 薬学部

ページ範囲:P.90 - P.97

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 ペチュニアの花の色を濃くしようと関連遺伝子を導入したところ,かえって色が薄くなったという“共抑制”のような不可解な現象が,高等動物を除く種々の生物で観察されていた。1998年にFireとMelloは,センチュウを用いてこれらの現象が短鎖の二本鎖RNAによるmRNAの破壊に起因することを見出し,RNA干渉(RNAi)と名づけた。しかし,高等動物にはRNAi系は存在しないと考えられていたので,RNAiは広範な注目を浴びることがなかった。ところが,2001年にTuschlら1)が,短鎖の二本鎖RNA(siRNA)を用いればインターフェロン応答も起こさず,動物細胞でもRNAiが有効と報告するに及んで,RNAiの研究と利用は爆発的に発展した。RNAiには大別して,siRNAによる配列特異的なmRNAの破壊と,類似の配列をもつマイクロRNA(miRNA)によるmRNAの翻訳阻害とがある。

 一方,ヒツジを中心にスクレーピーという脳の萎縮を伴う奇病が古くから知られていた。1986年にウシ海綿状脳症(BSE,狂牛病は俗称)が見出された。スクレーピーやBSEは伝達性海綿状脳症(TSE)の一種である。BSEは家畜などの骨や内臓をレンダリング処理して,肉骨粉を飼料として与えたことが原因と考えられた。病原体としてウイルスでも細菌でもない“プリオン”が提唱された(Proteinaceous infectious particleの略Proinより語感のよいPrion)。プリオンタンパク質説2)によると,正常プリオンタンパク質(PrPC)に異常プリオンタンパク質(PrPSc)が触媒的に作用して,PrPCをPrPScに変換する。PrPScは熱やタンパク質分解酵素に安定で,レンダリングしても失活しない。英国は1988年に肉骨粉を反芻動物の飼料とすることを禁止した。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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