文献詳細
特集 RNA干渉の実現化に向けて
文献概要
肝癌研究とmiR-122
今日,肝疾患との関連が強く認められているmiR-122の前駆体RNAは,肝癌研究の歴史のなかで偶然発見された。B型肝炎ウイルス(HBV)とウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)は類似のゲノム構造を持ち,宿主肝に持続性感染を起こして肝細胞癌を発生させる。しかし,両ウイルスゲノムの宿主染色体への組み込みパターンは異なっている。ヒト肝癌におけるHBV DNAの組み込み部位は(少数の報告例を除き)ランダムで,宿主遺伝子の再構成にも一定の傾向を示さない。しかし,ウッドチャック肝癌においてWHVは高率にN-mycやc-myc遺伝子内あるいは近傍に組み込まれ,myc遺伝子の再構成を起こしている1)。1989年,パスツール研究所のグループはウッドチャック肝癌の1例から,c-myc遺伝子と融合しc-mycの発現レベルを50倍以上高める新規の細胞遺伝子hcrを単離・同定した2)。しかし彼らを困惑させたことに,hcrの転写産物は4.7kbと比較的長いにもかかわらず蛋白質をコードするフレームを含んでいなかった。そのため,当時はその転写産物の機能は理解されなかった。2002年,Tuschlらは肝臓で発現している新規miRNAとしてmiR-122を報告し3),それにより既報のhcr転写産物がmiR-122の一次前駆体であったことが明らかとなった。miR-122は肝臓に特異的かつ多量に発現しており4),後述するように,肝疾患と関連するmiRNAとして最も注目されているものの一つである。
今日,肝疾患との関連が強く認められているmiR-122の前駆体RNAは,肝癌研究の歴史のなかで偶然発見された。B型肝炎ウイルス(HBV)とウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)は類似のゲノム構造を持ち,宿主肝に持続性感染を起こして肝細胞癌を発生させる。しかし,両ウイルスゲノムの宿主染色体への組み込みパターンは異なっている。ヒト肝癌におけるHBV DNAの組み込み部位は(少数の報告例を除き)ランダムで,宿主遺伝子の再構成にも一定の傾向を示さない。しかし,ウッドチャック肝癌においてWHVは高率にN-mycやc-myc遺伝子内あるいは近傍に組み込まれ,myc遺伝子の再構成を起こしている1)。1989年,パスツール研究所のグループはウッドチャック肝癌の1例から,c-myc遺伝子と融合しc-mycの発現レベルを50倍以上高める新規の細胞遺伝子hcrを単離・同定した2)。しかし彼らを困惑させたことに,hcrの転写産物は4.7kbと比較的長いにもかかわらず蛋白質をコードするフレームを含んでいなかった。そのため,当時はその転写産物の機能は理解されなかった。2002年,Tuschlらは肝臓で発現している新規miRNAとしてmiR-122を報告し3),それにより既報のhcr転写産物がmiR-122の一次前駆体であったことが明らかとなった。miR-122は肝臓に特異的かつ多量に発現しており4),後述するように,肝疾患と関連するmiRNAとして最も注目されているものの一つである。
参考文献
4:627-635, 1998
4:51-57, 1989
12:735-739, 2002
1:106-113, 2004
309:1577-1580, 2005
327:198-201, 2010
84:666-670, 2010
, 2012 Jan 3. doi:10.1073/pnas.1112263109[Epub ahead of print]
25:4511-4521, 2011
50:453-460, 2009
449:919-922, 2007
19:705-711, 2007
49:1571-1582, 2009
375:315-320, 2008
, 2012 Jan 26. doi:10.1111/j.1478-3231.2011.02750.x.[Epub ahead of print]
147:1233-1247, 2011
28:172-176, 2010
50:1322-1323, 2009
掲載誌情報