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文献詳細

雑誌文献

生体の科学63巻2号

2012年04月発行

連載講座 老化を考える・10

加齢,うつ病,そして睡眠と生体リズムの関係について

著者: 三島和夫1

所属機関: 1国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神生理研究部

ページ範囲:P.140 - P.148

文献概要

 うつ病の有病率は非常に高く,12ヵ月有病率で3-5%1,2),生涯有病率で3-20%3)にも達し,臨床的にも社会経済的にも甚大な影響をもたらす深刻な疾患である。表にDSM-Ⅳ-TR(米国精神医学会・精神疾患の診断・統計マニュアル)による大うつ病の診断基準を示した。うつ病では抑うつ気分や興味(喜び)の喪失といった中核症状に加えて,不眠をはじめとして食欲不振や倦怠感などさまざまな精神身体徴候が認められる。WHOによるDisability-adjusted life-year(DALY)指標では,2020年にはうつ病は虚血性心疾患に次いで生活者に健康面での多大な負担を強いる第2位の疾患になると推定されている。うつ病患者の生活機能や福祉は著しく障害され,心肺疾患,関節炎,高血圧,糖尿病のような慢性的身体疾患を抱える患者と同等かそれ以上の社会機能の低下が認められる4,5)

 65歳超の一般人口のおおよそ10-15%が抑うつ状態にあり,1-3%が大うつ病(いわゆる臨床的なうつ病)に罹患していると考えられている6,7)。これら抑うつ状態にある高齢者の臨床転帰は不良である。抑うつ状態にあった高齢者の24ヵ月後の臨床転帰に関する研究のメタ解析では,33%の高齢者のみ健康状態にあり,33%は抑うつ状態のままであり,21%は死亡していた8)

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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