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文献詳細

雑誌文献

生体の科学63巻3号

2012年06月発行

文献概要

特集 細胞極性の制御

神経上皮細胞の頂底極性制御因子Crb・Moe複合体

著者: 大畑慎也12 岡本仁3

所属機関: 1理化学研究所 脳科学総合研究センター 2カリフォルニア大学 サンフランシスコ校 神経外科 3理化学研究所 脳科学総合研究センター 発生遺伝学制御研究チーム

ページ範囲:P.171 - P.176

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 初期神経発生期における神経幹細胞である神経上皮細胞は,脳の内側(頂端/脳室側)から外側(基底/脳膜側)まで伸びる突起を持つ細長い細胞である(図1)。そして,細胞周期に応じて,その細胞核をエレベーターのように移動させ,核が脳室側に位置するときにだけ細胞分裂を行い,自己増殖あるいは神経細胞などへ分化する。機能的な神経系を構築するためには,神経上皮細胞が特定の位置で秩序を以って増殖することが必要不可欠であると考えられる。このような運動を可能にする神経上皮細胞の頂端(apical)-基底(basal)方向の空間的非対称性は,頂底極性(apicobasal polarity)と呼ばれる。頂底極性の形成・維持には進化的に保存された3種類のタンパク質複合体,1)Crumbs(Crb)・Mosaic eyes(Moe)複合体,2)Par複合体,3)Scribble複合体が必須の役割を果たす1)。しかしながら,どのような分子機構で神経上皮細胞が頂底極性を維持し,脳室側だけで細胞分裂をするのかは不明のままで,神経発生学上の中心的課題として残されていた。本稿では,Crb・Moe複合体による神経上皮細胞の頂底極性維持および細胞分裂位置を規定する分子機構に関する筆者らの最新の研究2)を紹介するとともに,今後の課題・展望を議論する。

参考文献

12:23-38, 2012
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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