icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学63巻3号

2012年06月発行

特集 細胞極性の制御

ピロリ菌CagAの発癌活性と細胞極性破壊

著者: 畠山昌則1

所属機関: 1東京大学大学院 医学系研究科 微生物学分野

ページ範囲:P.229 - P.235

文献概要

 胃癌は部位別癌発生の第4位,部位別癌死亡の第2位を占め,毎年全世界で約70万人が胃癌で命を落としている。なかでも,日本・韓国・中国などの東アジア諸国は世界的にも胃癌発症が際立って高く,わが国では毎年10万人が新たに胃癌と診断され,約5万人が胃癌で死亡する状況が続いている。ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)はMarshallとWarrenによりヒト胃粘膜から単離された微好気性らせん状グラム陰性桿菌である1)。ピロリ菌は全世界人口の約半数の胃に持続感染していると考えられており,わが国におけるピロリ菌感染者は約6,000万人と推定されている。その発見を契機に,ピロリ菌は慢性胃炎ならびに消化性潰瘍の主たる原因として脚光を浴びてきたが,その後の大規模疫学調査およびスナネズミを用いたピロリ菌感染実験などを通して,胃癌発症におけるピロリ菌感染の役割に多くの注目が集まることとなった。こうしたなか,上部消化管の粘膜病変発症にかかわると考えられるピロリ菌病原因子の機能解析が精力的に進められてきた。これら一連の研究をもとに,現在では大多数のヒト胃癌はピロリ菌の持続感染を基盤に発症すると考えられるようになってきた。とりわけ,CagAタンパク質を産生するピロリ菌はCagA非産生ピロリ菌に比較してはるかに強い胃粘膜病変を惹起し,臨床疫学的に胃癌と最も密接に関連することが明らかとなってきた。本稿では,ピロリ菌CagAの病原生物活性を担う分子機構を概説するとともに,最近明らかにされたCagAによる上皮細胞極性破壊機構と上皮発癌におけるその意義について述べる。

参考文献

1:1311-1315, 1984
90:5791-5795, 1993
61:1799-1809, 1993
93:14648-14653, 1996
28:37-53, 1998
96:14559-14564, 1999
287:1497-1500, 2000
191:593-602, 2000
2:155-164, 2000
7:399-411, 2010
295:683-686, 2002
277:6775-6778, 2002
43:971-980, 2002
26:3462-3472, 2007
132:1309-1319, 2007
99:14428-14433, 2002
280:23130-23137, 2005
130:1181-1190, 2006
4:688-694, 2004
28:284-293, 2003
29:465-468, 2001
17:23-30, 2007
119:979-987, 2006
447:330-333, 2007
284:22166-22172, 2009
105:1003-1008, 2008
125:2497-2504, 2009
207:2157-2174, 2010
1775:5-20, 2007
286:44576-44584, 2011
18:210-219, 2008
8:777-786, 2005
18:1909-1925, 2004
43:45-56, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら