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特集 質感脳情報学への展望
文献概要
外界認知,すなわち物体の形状,色,動きや場所など,「何がどこにあるか」を知ることが視覚の目的の一つである。これまでに心理物理学や神経科学によって明らかにされてきた視覚メカニズムの一部は,例えばロボットビジョンや画像計測など視覚情報処理技術として応用されており,こうした技術によって自動車などの組立てラインはかなりの部分が自動化されている。一方,これとは対照的に工業製品や工芸品の検査工程は,いまだその多くが人手(目視)により行われているのが現状である。目視工程の自動化は産業界の最大の要望の一つだが,特に素材感の再現,光沢感や透明感の定量など質感にかかわる検査に関しては熟練者が重要な役割を担っている場合が多い。しかしながら,熟練者が何をどのように判断しているかについては不明な点が多い。このことは,検査工程の自動化という産業応用上の課題としてのみならず,質感知覚の学習効果や環境依存性など,質感脳情報学の観点からも非常に重要な問題である。本稿では,熟練者の質感認知を手がかりとして,質感の学習依存性を明らかにするために,現在筆者が進めている真珠質感に関する研究を概説する。
参考文献
1)日本色彩学会編:新編色彩科学ハンドブック(第2版),pp 1246-1251,東京大学出版会,1998
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掲載誌情報