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文献詳細

雑誌文献

生体の科学63巻4号

2012年08月発行

文献概要

解説

ポリグルタミン蛋白質と神経変性疾患

著者: 伊藤日加瑠1 岡澤均1

所属機関: 1東京医科歯科大学 難治疾患研究所 神経病理学分野

ページ範囲:P.339 - P.344

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 ポリグルタミン病とは,原因遺伝子のエクソン配列内に存在するCAGリピートが異常に伸長することによって引き起こされる神経変性疾患の一つのグループである。このポリグルタン病は遺伝性疾患であり,これまでに原因遺伝子としてAtaxin1,2,3,7,CACNA1A,TBP,Huntingtin,Androgen receptor,Atrophin1が知られている(表)。異常に伸長したCAGリピートが翻訳され,その伸長ポリグルタミン鎖を含む蛋白質の発現が発症の原因であると考えられているが,最近ではRNAレベルでの毒性も示されている1,2)。加えて,non-ATGからの翻訳開始による別のポリアミンによる毒性も示唆されている3)。一般に,家系で世代が下がりCAGリピート数が長くなるほど発症は早まるといった相関関係(anticipation)が知られており,これは病理変化の重篤度とも対応する。障害の起こる脳部位は各疾患で異なり,ハンチントン病では主に線条体の中型有棘神経細胞ならびに大脳皮質の神経細胞が脱落し,不随意運動や認知機能障害を示す。脊髄小脳変性症1型では主に小脳プルキンエ細胞や脊髄の運動神経細胞が脱落し,小脳失調や筋萎縮・筋力低下を示す。いずれの場合においてもその症状は40歳ごろから発症し,その後10-20年といった期間で緩やかな進行を示す場合が多い。

 ポリグルタミン病遺伝子変異によって生じる病態メカニズム解明は,多くの神経変性疾患の病態メカニズムを理解するうえでも非常に重要なことであり,これまで転写障害,プロテアソーム阻害,シャペロン機能異常,ミトコンドリア障害,軸索輸送障害など様々な細胞機能異常が報告されている4,5)

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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