文献詳細
特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
2.小胞体
小胞体ストレスおよび小胞体ストレス応答とは何か
著者: 森和俊1
所属機関: 1京都大学大学院 理学研究科 生物物理学教室 ゲノム情報分野
ページ範囲:P.376 - P.379
文献概要
膜結合性リボソームで合成される分泌タンパク質や膜タンパク質(全タンパク質の約1/3に相当する)が最初に遭遇するオルガネラである小胞体内には,分子シャペロンが多種多量に存在するのみならず,ジスルフィド結合形成や糖鎖付加などの修飾を行うフォールディング酵素も存在し(合わせて小胞体シャペロンと略す),これら分泌系タンパク質は折り畳まれていく。一方で,細胞はかなり多量にタンパク質を合成しているため,正しく折り畳まれなかったタンパク質が確率的にも(10%以下とされている)生じてしまう。このような構造異常タンパク質は細胞質へと逆行輸送され,ユビキチン-プロテアソーム系によって分解処分される(この一連の過程は小胞体関連分解と称される)。小胞体内で正しい立体構造を獲得したタンパク質のみがゴルジ装置以降の分泌経路に進み,それぞれの最終目的地(リソソーム,細胞膜,細胞外)へと到達することから,小胞体は折畳み促進と小胞体関連分解という全く反対の方向性を示す二つの機構によって分泌系タンパク質の品質を管理しているオルガネラであると捉えうる1)。
参考文献
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